PJSからPJCへ、大きな転換期を迎えた国内シーン

――2020年末、国内シーンはPJSが終了するという大きな節目を迎えました。Machaoさんにとって、PJSはどのような大会でしたか?

Machao:選手に与えるものが、とても大きい大会だったと思います。勝ったときの喜びも負けたときの悔しさも、今までに自分が経験してきたなかで格別に大きいものでした。

直近はしばらくオンラインに切り替わっていましたが、オフラインの会場にいると、関係者の方々がいちファンとしてPJSを楽しんでいることが伝わってきて、本当に良い大会を作ろうとしているんだなと、選手目線でもすごく感じていました。

――2021年、国内のシーンはPJCに移行するとともに、「世界で勝てる日本チームの輩出を目指す」という方針が強く打ち出されています。DGWは、今まさに最も国際大会に出ている日本チームの1つですが、このメッセージをどう受け止めていますか?

Machao:それを見たときは、本当に申し訳ない気持ちでした。日本代表として国際大会に挑む環境を用意してもらっているにもかかわらず、ずっと結果を出せませんでしたから。今まで以上に、どうしたら韓国や中国のチームに勝つことができるんだろうと、強く思いました。

常に新しいゲームのシーンが生まれるeスポーツでは、「この人に教わったら絶対に勝ちに近づける」という先駆者がいません。コーチングできるレベルの人は、ほとんど選手をやっているので、自分たちで模索していくしかない。できることはいろいろあるけれど、そのなかでいったい何をやっていくのが正解なのか、本当に難しいなと感じます。

――現在の国内のシーンについて、Machaoさんはどのように感じていますか?

Machao:海外はeスポーツシーンの規模が大きくて、人生を賭けられる環境があります。日本ではまだそういう環境は整っておらず、人生を賭けて『PUBG』をしていると言える人は、僕が知る限り相当少ないと思います。

eスポーツ選手のセカンドキャリアがよく話題になりますが、そもそも後先を考えるなら、日本でゲームのプロはやらないですよね。先のことを考えるのも大切ですが、そこにこだわり過ぎたらゲームはできない。なので、少なくとも僕自身は、今とにかく結果を出すことに集中しようと意識しています。それが結果的に、今後にもつながると思うので。

大きな挫折から、想像もしていなかった今の自分へ

――Machaoさんが選手を始めて、2年以上が経ちます。その間、選手としての変化も大きかったと思いますが、いかがですか?

Machao:Season6は、個人スタッツで断トツ1位だったんですけど、自分がこんな成績を出せるようになるなんて微塵も思っていませんでした。選手を始めたばかりのころは、PJSに出られるだけでもうれしかったのに。そう考えると、自分には手が届かないと思っているところにも、努力次第で届くんだなと思います。

僕はもともと自分に自信がなくて、自分のことを価値ある人間だと思えなかったんです。でも、選手として活動して良い成績を残せるようになってきて、少しづつ自分にも価値があるんだと思えるようになりました。

――さらにさかのぼると、自分がプロゲーマーになっているとは想像もしていなかったのではと思います。改めて振り返ると、どのように感じますか?

Machao:先のことを考えても、人生どうなるかわからないなって。実は、高校1年生までスパルタで有名な進学校に通っていたんですけど、キツすぎて辞めてしまったんです。

当時は本当に人生のどん底で、自分には生きる価値があるのかと考えていたくらい。良い大学を卒業して良い仕事に就いて……というのが人生の正しい道だと思っていました。その道から外れた今となっては、意外と人生どうとでも生きられるなと思います。

――Machaoさんにとって、プロとしてゲームに向き合う原動力はどこにあるのでしょうか?

Machao:自分の好きなことでお金を稼ぐって、なかなかできないことじゃないですか。恵まれた環境と巡り会えて、なおかつ家族も理解して応援してくれていて、その状況で努力を怠るなんてあり得ません。自分が好きで選んだことをがんばれなくなったら、終わりだと僕は思うので。

もともと負けず嫌いな性格もあると思いますが、自分が好きなことをやる道を選んだからには、できることを最大限やって後悔したくない、という気持ちが原動力になっていると思います。

どんなに練習しようと、大会本番の経験に勝るものはない

――今後、日本チームが国際大会で活躍していくために、何が必要だと感じますか?

Machao:大会の試合数ですね。2020年のSeason6以降、たくさんの国際大会に出ていて強く感じるのは、スクリムに100試合出たとしても、大会に1試合出る経験には敵わないということ。なので、PJCで国内大会の試合数が増えることに関しては、良い方向に進んでいると思います。

2020年、アジア大会の「PUBG Continental Series」(PCS)では、4大会で中国が優勝を独占しましたが、特に中国チームは驚くほど多くの大会に出ているんですよ。大会では、どのチームもできることを全部出して、お互いに全力でぶつかります。それにどう対応するかを常に考えるので、試合を重ねるほどシーン全体がレベルアップしていくんですよね。

――DGWは直近、かなりの数の国際大会に出場していますが、手応えはいかがですか?

Machao:手応えがあるとはまだ言えませんが、「こうしたら勝てるんじゃないか」という勝ち筋は、前よりは見えてきました。相手が何をしてくるか、自分たちとのレベル差はどれくらいか、それがわかってきたんです。自分たちに足りていないものを、少しずつ見つけ出している感覚ですね。

足りない部分を埋められれば、今の国際大会のレベルにはいずれ追いつけると思いますが、追いついていく最中に相手もレベルアップしていくので、どこかでペースアップしなければならない。そこが難しいところですが、彼らも同じ人間なので、絶対に勝てない相手ではないと思っています。

――「PUBG WEEKLY SERIES」(PWS)などで韓国チームと戦っていて、差を感じるのはどういった部分ですか?

Machao:韓国チームの動きは、とにかく細かいところまで徹底されています。撃ち合いを単なる撃ち合いで片付けることなく、自分たちが持っている有利を最大限に使って戦う。不利な状況でも、それを覆すようなチャンスの作りかたも持っています。

メタもどんどん変わっていくので、それにも対応していかなければなりません。わかりやすい例が、「Gen.G」ですよね。彼らは安全地帯の際から展開していく戦いかたを強みに、2018年はアジア大会も世界大会も制覇しましたが、その翌年は全然力が発揮できなかった。少し環境が変わるだけで、それだけの変化が起こります。

逆に言えば「Gen.G」の存在が、戦術の幅を広げたと思っていて。彼らのプレイスタイルに対応するために、シーン全体のレベルが上がったんですよね。特に、自分たちより外側から攻めてくるチームをどう対処するかという防衛が、各チームかなり上手くなっていると感じます。

「日本は弱い」というイメージを覆したい

――2021年2月からは、世界大会の「PUBG GLOBAL INTIVATIONAL.S」(以下、PGI.S)がスタートします。PGI.Sに向けて、メンバー全員がゲーミングハウスに集まっていると聞きました。

Machao:せっかくゲーミングハウスに集まれる環境があるので、集まろうという話になりました。メンバーによっては、ゲーミングハウスから参加したほうがPingが多少良くなるのと、やはり顔を合わせたほうがフィードバックしやすいメリットがあります。

しばらくアジア圏のチームとしか戦っていないので、世界大会のPGI.Sでは他リージョンのチームがどう戦ってくるか、楽しみでもあり怖さもあります。大会中に「このムーブは刺さらないな」など、自分たちの足りていない部分に気付くスピードも大事なので、柔軟に対応していきたいです。

――今回のPGI.Sはルールが特殊ですよね。平日のWeekly Survivalでは、ドン勝したチームが週末のWeekly Finalへ進出するというルールです。

Machao:たった1キルであろうとドン勝を取れば予選を抜けられるので、戦いかたはガラッと変わるはずです。ただ、今までになかったルールなので、チャンスでもあるのかなと。戦いかたをいかにつかめるかが、勝負の1つになると思います。

――それでは最後に、今後Machaoさんが叶えたい目標や夢を教えてください。

Machao:海外から見た、日本チームに対するイメージを変えたいです。現状は誰がどう見ても、日本は弱い。それが自分はすごく悔しいので、そのイメージをどうにか覆したいと思っています。そのためには、結果を出すしかありません。これから始まるPGI.Sを含めた国際大会で、日本も強いんだということを、しっかり結果で見せていきたいと思っています。