関西大学は1月22日、2021年の東京五輪が無観客で開催されたときに失われる経済効果について経済学者の宮本勝浩名誉教授が推定した結果、その損失額は約2兆4133億円になると発表した。
宮本名誉教授は国際経済学や理論経済学、スポーツ経済学、関西経済学などを専門とし、2006年からは関西大会計研究科教授を務め、2015年に定年退職後は同大学の名誉教授を務める。これまで、米・ハーバード大学や上海同済大学、ロシア極東国立商科大学など、海外大学の客員研究員や客員教授などを歴任してきた、日本の経済学の大家のひとりだ。
これまで同氏は、簡単には試算できない分野などの経済的損失に関する発表を常々行ってきた。2020年は2度にわたってオリンピックに関する発表を行ったほか、12月には年末恒例のベートーベンの交響曲「第九」の演奏会が全国各地で新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったことから、その経済的損失を発表している(その経済的損失は約43億3023万円と試算された)。
今回は、東京五輪に関する試算の第3弾となり、これまでの2回に分けて発表された延期開催、簡素化開催、開催中止の3条件に続いて、無観客開催という新たな条件が加えられた。以下に4条件を発表順に並べる。
- 1年延期をした場合:約6408億円(2020年3月19日発表)
- 中止した場合:約4兆5151億円(2020年3月19日発表)
- 簡素化して開催した場合:約1兆3898億円(2020年11月10日発表)
- 無観客で開催した場合:約2兆4133億円(今回の発表)
1つ目は2021年へと開催を延期する場合の話であり、2022年への再延期はないとされていることから、今後の選択肢としては2つ目~4つ目の3つとなる。最も経済的損失が少ないのは3つ目の簡素化して開催する場合で、次が今回発表された無観客開催。最も損失が大きいのは2つ目の中止した場合となっている。
宮本名誉教授は、「どんな形になったとしても、新型コロナ拡大による経済への打撃は大きい。しかしながら、これまで東京大会の準備のために実施されてきた公共事業などの経済効果はすでに実現しているし、東京大会を目指して開発されてきた映像、通信、自動運転などのITS技術・ロボット産業の拡大、5G通信の進展、水素社会の実現などの技術開発は続けられて、レガシー効果として日本の社会、経済、医療、生活などの発展に貢献していくことであろう」とコメントしている。