2020年もいろいろなeスポーツイベントが開催されました。そこで、今回は2020年に起きたeスポーツ関連の出来事を振り返ってみたいと思います。
2020年は、eスポーツがようやく世間に根付きはじめ、飛躍の年になるとみられていました。しかし、新型コロナウイルスにより、各種eスポーツイベントの開催が危ぶまれ、早くも大きな転換期を迎えた印象です。
新型コロナウイルスによる影響が出るまでは、東京都が中心となって開催する初のeスポーツイベント「東京eスポーツフェスタ」や、世界最大規模の対戦格闘ゲームイベントの日本版「EVO Japan 2020」などが開催されました。
東京eスポーツフェスタには小池都知事も来場しました。自治体のeスポーツ産業への期待が現れていたといえるでしょう。EVO Japanは、最終日の決勝トーナメントで観戦チケットを販売。それがほぼ完売状態になったことが印象的でした。観戦料を取れるライブエンターテインメントにeスポーツが仲間入りを果たしたと言えます。
さらに、2020年1月には、NTT東日本グループでeスポーツを取り扱う企業として、NTTe-Sportsが設立されました。個人的にゲームイベントの開催をしていた影澤氏が副社長に就任し、eスポーツの知見を有する人材のいる大企業が、本格的にeスポーツをビジネスとして展開し始めます。
これにより、ゲーム大会を開催するコミュニティ、ゲームメーカー、協賛企業、eスポーツで地方創生を狙う自治体、大会運営会社、配信会社などが、NTTe-Sportsをハブとしてつながりやすくなったのではないでしょうか。
直後に起こったコロナ禍により、その手腕はまだフル活用されていませんが、eスポーツ業界にとって、大きな一歩となりました。
2月に入り、コロナ禍が一気に広がると、eスポーツ業界にも大きな影響が出はじめました。
『モンスターストライク』プロチームの大会である「モンストプロツアー」のファイナルは、無観客での開催を決定しました。先に紹介したEVO Japanと同様に、有料チケットでも来場者が訪れるイベントだっただけに、厳しい決断となったのではないでしょうか。
渋谷にあるよしもと∞ホールで開催していた「リーグ・オブ・レジェンド ジャパンリーグ(LJL)」も、全試合無観客で開催します。
コロナ禍が世界的に広がると、世界ツアーを行っていた『ストリートファイターV CE』のカプコンプロツアー、『鉄拳7』の鉄拳ワールドツアーの延期や中止が発表されます。カプコンプロツアーは、前期、後期の日程で開催予定でしたが、前期を中止し、後期はオンラインで開催することになりました。
7月の東京オリンピック開会式前日に開催予定だった「Intel World Open 2020」も延期を発表。高校生eスポーツ大会である「STAGE:0」は完全オンラインとなりました。
夏から秋にかけて、少しコロナ禍が落ち着きを見せ始めると、eスポーツイベントもオフラインで徐々に開催されるようになりましたが、ほとんどが無観客試合。多くのファンは現地で応援できなくなったままでした。
『クラッシュ・ロワイヤル』の世界大会「クラロワリーグ世界一決定戦」は、上海での開催を予定していましたが、中国チーム以外はすべてオンラインでの参加に。日本最高賞金額でお馴染みの『シャドウバース』の世界大会「シャドウバース ワールド グランプリ 2020」も延期が決定しました。
こうやってみると、やはり新型コロナウイルスによる影響は大きく、ほとんどのイベントが予定通り開催できない状態に陥りました。ただ、ほかのライブエンターテインメントと違い、eスポーツはオンラインの対応が比較的やりやすい側面があったため、むしろオンラインイベントとして大きく進歩した1年とも言えるでしょう。大会に出場できなかったプロ選手やチームが、独自のオンライン大会を開くところもありました。
国体の文化プログラムとして行われていた「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」は、国体や文化プログラム自体が延期となったなかで、オンラインで対応しました。しかも、オンライン開催のため、選手も参加しやすかったのではないでしょうか。
ほかにもeスポーツそのものではありませんが、コロナ禍で大会を開催できないフィジカルスポーツがeスポーツイベントを開催する機会も増えました。
たとえば、プロテニスプレイヤーとインフルエンサーがペアを組み『マリオテニス エース』を使ったチャリティイベント「ステイホーム・スラム」、八村塁選手をはじめとするNBA選手が参加した「NBA 2Kプレイヤートーナメント」、さらにF1レースでは「F1 Eスポーツ・バーチャル・グランプリ」が開催され、現役F1ドライバーが『F1 2019』を使用したレースに参戦しました。
もちろん、フィジカルスポーツがeスポーツに取って代わるわけではありませんが、観客だけでなく、選手もオンライン対応ができるeスポーツのフレキシブルさが顕著に出たと言えるでしょう。
2021年は、年初から緊急事態宣言が発動されそうな状況下にあります。ワクチン開発のニュースも耳にしますが、それがすべての人に行き渡り、日常を取り戻せるにはまだまだ時間がかかるでしょう。
2021年も、eスポーツをとりまく状況は2020年と大きく変わらないかもしれません。ただ、コロナ禍に対するノウハウや対応策なども少しずつ出てきているので、2020年よりは、無観客でないオフラインイベントの開催もできるようになるのではないでしょうか。
もともと、そこまで大規模な観客動員数のイベントは少ないですし、劇場と同程度の人数では可能かと思います。もちろん、第3波と言われる現状が落ち着いてからのことですが。
また、オンラインイベントもさらに強化されていく可能性があります。有料チケットによる視聴やオンラインショップとの連携、勝敗予想による賞品の獲得など、より楽しめる方法が模索されていくはずです。
オンラインが充実することは、国内のeスポーツイベントの強化にもつながります。タイムラグによるプレイが厳しいゲームにとって、オンラインゲームはラグが命取り。したがって、遅延が起きにくい国内大会が重要となることはあきらかです。
日本のeスポーツは世界に比べ、後れを取っている見方をする人もいますが、オンライン強化により国内リーグや国内大会の強化が図れることは、日本のeスポーツにとって追い風になるでしょう。
2020年はTOPANGAリーグ(鉄拳7、ストリートファイターV)やストリートファイターリーグなど、国内リーグが大きく飛躍しました。2021年はNTTドコモによる「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE」の開催が決まっており、2020年以上に国内eスポーツの規模が拡大する可能性があります。
コロナの収束はまだまだ見えない状況ですが、それにいち早く対応し、結果を残してきているeスポーツは、2021年こそ飛躍の年になると信じています。