NECは11月13日、米Amazon Web Servicesと国内初となるコーポレートレベルの戦略的協業契約の締結を発表した。両社はこの提携によって、何を狙っているのか。NEC 執行役員 吉崎敏文氏とアマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員の渡邉宗行氏に話を聞いた。

  • NEC 執行役員 吉崎敏文氏

  • アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 渡邉宗行氏

全社規模のSAPシステムのプラットフォームにAWSを導入

NECは戦略的協業契約の下、「官公庁・金融・医療機関など、業種特有のレギュレーションに対応 したマネージドサービス提供」「自社利用のSAPシステムに対するAWS導入ノウハウの提供」「NECグループのAWS認定資格保有者を倍増」に取り組む。

官公庁向けのビジネスにおいては、日本政府が2020年10月にAWS上で稼働した第二期政府共通プラットフォームの運用管理業務の事業者として、NECが採択されている。吉崎氏は、「第二期政府共通プラットフォームで得た運用のノウハウは文書化して、再利用する」と語った。

また吉崎氏によると、NECは今年6月より、グループ会社のアビームコンサルティングと連携し、国内最大級のSAPシステムのプラットフォームにAWSを導入するプロジェクトを開始したという。アビームは約4000名のSAPコンサルタントを抱えているが、両社はそれぞれの強みを生かし、SAPのモダナイゼーションに取り組んでいく

今年12月には、今年4月に立ち上げたインフラのモダナイゼーションに関する組織の増強を図るという。

  • NECは国内最大規模のSAPシステムのプラットフォームとしてAWSを導入するプロジェクトを進めている

また、AWS認定資格保有者については、今後3年間で1500名増やし、合計3000名の体制に拡張する計画だ。これにより、大規模なクラウドの構築案件にも継続的に対応可能にしていく。AWSの認定資格は複数あるが、まずは下位のAssociateとProfessionalの保有者を目指すとのことだ。

AWSがグローバルで協業契約を締結した理由

渡邉氏は、グローバルでコーポレートレベルの協業契約が締結したAWSの狙いについて説明した。今回の規模の提携を結んでいる企業にアクセンチュアやF5などがあるが、その数は少ないという。

NECは官公庁ビジネスにおいてプレゼンスを確立している一方、AWSは米国でガバメントクラウドを手掛けている。そこで、AWSとしては、グローバルで培ったノウハウをNECに提供することで、同社がガバメントクラウド市場を拡大していく足掛かりにしたいという。「日本でガバメントクラウドを推進するうえで、NECとわれわれは正にベストオブブリードの組み合わせと言える。今回の協業により、われわれは日本のクラウドビジネスを拡大するためのスタートラインに立った」と渡邉氏は語った。

「われわれは、多くの人が利用するサービスを低コストで、かつ、簡単に使える形で提供している。NECは生体認証、画像認識、5Gといった技術に強みを持っているが、われわれの技術を活用してシフトしてほしい」(渡邉氏)

また、渡邉氏は「日本の企業はモダナイゼーションが進んでいない。これを進めるには、われわれが培ってきたグローバルのノウハウが必要」とも話していた。

顧客の代わりにNECが最新技術の目利きをして提供していく

加えて、吉崎氏は今回の提携の狙いについて、「AWSのビジネスの底上げを図るために、グローバルから直接最も新しいテクノロジーに関する支援が欲しかった。これにより、日本のビジネスを熟知したNECの技術者がタイムラグを生じることなく、お客さまにグローバルの進んだテクノロジーを届けることが可能になる」と説明した。

吉崎氏はNECに入社する前、IBMでクラウドビジネスを推進しており、「グローバルと直接やり取りすることの重要さはこれまでの経験上、よく知っている」と話す。

「レガシーなシステムを理解しているわれわれがお客さまの代わりに目利きをして、失敗の確率を最小限に抑えた形で、最新のテクノロジーを提供していく。これは、必ず日本の企業のためになるだろう」(吉崎氏)