政府が推進している大型研究開発プログラム「ムーンショット型研究開発制度」の新たな目標を検討するチームを科学技術振興機構(JST)が公募している。ムーンショットでは既に7つの目標が設定されているが、新型コロナウイルス感染症によって変容する新たな社会像を明確化し、目まぐるしく変化する経済社会情勢に対応するために新たな目標を設けることになった。JSTは未来を担う若手によるチームの応募を期待している。

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    「ムーンショット型研究開発制度」の3種類のロゴマーク(内閣府提供)

JSTによると、「ポストコロナ/アフターコロナ時代」に対応する新たなムーンショットの目標を検討するためには、今後の時代を担う若手人材による柔軟かつ自由なアイデアや、国内外の多様な知見の取り入れが重要で、目標達成のためのアイデアを持ち、そのアイデアを具体化・精緻化するための調査研究を行うことができる若手による目標検討チームを求めているという。

検討チームを束ねるビジョナリーリーダーは、総括をトヨタ自動車前社長の渡辺捷昭氏、副総括を堀場製作所社長の足立正之氏、名古屋大学未来材料・システム研究所教授で2014年のノーベル物理学賞を共同受賞した天野浩氏、米国S&R財団理事長の久能祐子氏が務める予定。

公募は8日から始まっており、締め切りは11月10日正午。その後ビジョナリーリーダーらが目標検討チームを選考する。JSTは20チーム程度の採択を予定している。採択されたチームは来年1月ごろから約半年にわたり、実現したい2050年の社会像、目標達成に向けて取り組むべき課題、達成に至るシナリオなどを調査研究し、報告書にまとめる。その後、ビジョナリーリーダーらがこの報告書などを評価し、数チーム数件の目標に絞る。この結果を受け、政府の総合科学技術・イノベーション会議が1件、あるいは2件を最終的に新たな目標として決定する予定だ。

JSTによると、新たな目標検討チームはチームリーダー、サブリーダー、チームメンバーのいずれも若手で、特にチームリーダーとサブリーダーは20歳代から40歳代までを推奨している。ただ、次世代を担うことができる柔軟な着想を持つ人物であれば年齢は問わないという。

ムーンショット型研究開発制度は「日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を、司令塔となる総合科学技術・イノベーション会議の下、関係省庁が一体となって推進する新たな制度」として、2018年に創設された。

その後、目標の選定や運営方法などが同会議の有識者会議(ビジョナリー会議)の場を中心に検討された。今年1月までに(1)人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現、(2)超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現、(3)AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現、(4)地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現、(5)未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出、(6)経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピューターを実現、の6目標が決まった。いずれも2050年までの達成を目指している。

7月には7番目の目標として「2040年までに、主要な疾患を予防・克服し、100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現」が追加された。

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    「ムーンショット型研究開発制度」の概要(内閣府提供)

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