JHSEF(全国高等学校eスポーツ連盟)と毎日新聞社は、「第3回全国高校eスポーツ選手権」のオンライン説明会を開催しました。

全国高校eスポーツ選手権は、2018年より開催している高校生を対象としたeスポーツ大会。第1回は153チーム、第2回は222チームが参加し、年々注目度が上がっています。2020年11月より開催される第3回全国高校eスポーツ選手権でも、新たに参加を検討する学校が多いことから、今回、参加を考えている学校の教職員や生徒を対象に、説明会を実施しました。

本気でゲームと向き合えば、就活面接でも取り組みとして言える

説明会では、まず全国高等学校eスポーツ連盟の末廣誠氏が登壇し、「高校がeスポーツに取り組む意義」について話をしました。

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    全国高等学校eスポーツ連盟の末廣誠氏

そこで、eスポーツを教育の場に活用する動きは、日本だけではなく、世界的に起きていることに言及。北欧ノルウェーでは、反射神経や体力の強化、我慢強さの向上などを目的として、オンラインゲーム『League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)』を、体育の授業に取り入れているそう。また、ゲームの対戦は、知識やスキル、コミュニケーション、協調性、戦略性があってこそ、結果につながることが多く、それらに対応できているかが評価の対象となっていると話しました。

実際、末廣氏は、新卒で入省した文部科学省の面接で「学生時代に力を入れていたもの」を聞かれた際に、「ゲーム」と回答。もちろん、漠然とゲームをプレイしていたのではなく、ゲームを通じて、どうやれば上達するのか、強くなるのかを考えて、「PDCAサイクル」を繰り返したことを伝えました。

ゲームでも、試合を行い、敗北すればその原因を研究します。上級者のプレイを観て情報を収集し、チームメンバーと共有することも必要でしょう。そこで得た知識を、練習で自分たちのスキルとして取得し、試合で実践。そして試合の結果から見えた課題の解決方法を再び模索していくわけです。この取り組みを面接官に共感してもらえたことで、実際末廣氏の就活はうまくいきました。

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    ノルウェーで実施された公立高校のeスポーツの授業化

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    末廣氏が実践したPDCAサイクル。ゲームに勝つための取り組みは、ゲームだけでなく、仕事にも活かせるとのこと

高校の部活動でeスポーツ、はたまたゲームをすることに対して、以前はかなり否定的な意見がありました。しかし、時事通信社の調査によると、高校の部活動としてeスポーツを認めるべきではないという意見は42.6%から33.4%(2020年8月発表の調査)に減少しており、徐々にではありますが、高校eスポーツ部が認められつつあることがうかがえます。

その流れはスポンサー企業からも見て取れます。最近では、ゲームやデバイスなど関連企業以外の出資が増えているのです。実際に、第1回、第2回の全国高校eスポーツ選手権には、ゲーム関連企業以外からの協力がありました。出資企業としては、eスポーツイベントに支援したことで、将来の就職先として検討される可能性にも期待しているそうです。

実際に高校でeスポーツ部を経験したことで、将来の道へつながった生徒もいます。『League of Legends』部門で活躍したAkabuff選手とFlaw選手は、プロeスポーツチーム、Burning Core(バーニングコア)に練習生として参加。N高校に在学中のShakespeare選手はプロeスポーツチーム、ラスカルジェスターの練習生をしています。

城北つばさ高校出身のラハト選手は、その経験を活かしゲーム開発会社に就職。仕事をしながらeスポーツアンバサダーとして、eスポーツの啓蒙活動も行っているうえに、車椅子生活をしているラハト選手はパラeスポーツ選手としても活躍しています。

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    全国高校eスポーツ選手権で活躍した選手が、プロチームへの参加、ゲーム開発会社への就職など、活躍の場を拡げています

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    第1回、第2回の全国高校eスポーツ選手権に協力した企業の一例

有志参加からeスポーツ部へ

次に全国高校eスポーツ選手権についての説明です。すでに多くの人に認知されはじめた全国高校eスポーツ選手権ですが、まだ多くの教職員にとっては未知の世界。そこで、改めて全国高校eスポーツ選手権についての解説をしました。

現在、世界のeスポーツ人口は1億3000万人以上と言われます。特に既存のスポーツイベントからも注目されており、2022年杭州アジア大会には、公式競技としてeスポーツ大会の開催が決まりました。2024年のパリオリンピックでは、採用に至りませんでしたが、採用すべきかどうかの議論がされています。

日本では高校生向けのeスポーツイベントとして、2018年より全国高校eスポーツ選手権を開催。当時はほとんどの高校でeスポーツ部は存在しておらず、参加したチームは有志メンバーやパソコン部などほかの部活として出場していました。

しかし、現在eスポーツ部は180校以上で発足しており、今後も増えていく見込みです。多くの学校ではeスポーツ部の運用や設立についても未知の世界であるわけですが、そのサポートをJHSEFが担います。設立後もeスポーツ部の顧問同士の交流やチームの練習試合の斡旋など、さまざまな面でサポートしていく予定。ゲーミングPCなど、必要な機材に関しては、サードウェーブが展開する「高校eスポーツ部支援プログラム」で1年間無償の貸し出しを行っています。

さらに、今回開催する第3回全国高校eスポーツ選手権からは文部科学省が後援として参加。まさしく、高校生のイベントとしての地位を確立したと言えるでしょう。

第3回全国高校eスポーツ選手権のエントリー期間は10月16日まで。出場を悩んでいる人は、eスポーツに青春をかける舞台へ、足を踏み出してみては。

  • 第3回全国高校eスポーツ選手権

    エントリー期間は10月16日まで