数あるゲーミングデバイスの中でも、コントローラやマウスに次いでゲーム体験に大きく関わるのは、サウンド機器ではないでしょうか。

ストーリーを楽しむRPGや臨場感を味わうFPS、声の演技や演出を鑑賞するADVなど、ほぼすべてのゲームジャンルでサウンドは重要な役割を担います。再生環境は人それぞれで異なりますが、作品の世界観や対戦時の戦況把握などにこだわりたいならば、「ヘッドフォン」や「ヘッドセット」が手を出しやすい選択肢といえるでしょう。

最近は、ゲーミングヘッドセットのカテゴリでも安価な製品が多く発売されていますが、筆者としては、ある程度高価で高性能な製品を選ぶことをおすすめします。なぜならヘッドフォン(人によってはマイクも)は長期間使う実用品だからです。

使い勝手のいい内蔵ギミック。装着感も良好

今回紹介するEPOS「GSP 601」は、同ブランドが擁する有線ヘッドセットの中でも上位モデルに位置する製品。右イヤーカップ部分にボリューム調整ホイールを内蔵するほか、マイクを跳ね上げると自動でミュートするなどの機能が目を引きます。直販価格は28,800円(税込)。

  • GSP601

    GSP 601をレビュー

いわゆる密閉型のヘッドフォンを採用しているヘッドセットで、ゲーミングデバイス特有のごついシルエットが特徴的です。イヤーパッドには革風の肌触りが得られるレザーレット(模造革)を採用。周波数特性は10~30,000Hz、インピーダンスは28Ωです。重量は395gと、このクラスのゲーミングヘッドセットとしてはやや重め。なお「GSP 600」シリーズは、今回紹介するホワイトカラーの「GSP 601」のほかに、ブラックの「GSP 600」と、ブルーの「GSP 602」をラインナップしています。

ゲーミングヘッドセットの評価ポイントはいくつかありますが、本記事では「長時間装着し続ける可能性が高い」という特性上重要な「装着感」と「機能性」、実際にゲームを遊んでみての「聞こえかた」に絞って言及します。

装着感については、イヤーパッドに使われている柔らかなレザーレットの感触が心地よく、また一般的なヘッドフォンよりも太めのヘッドバンドで頭をがっちりとホールドしていることで、少し頭を振ったくらいでは大きくズレない安定感があります。

使い心地自体はおおむね快適ですが、全体で395gとそこそこの重量があり、側圧も強め。大きなイヤーパッドでぴったりとした装着感なので、室温や湿度にもよりますが1~2時間程度着けていると少し疲れます。

機能としては先述の通り、マイクを跳ね上げると自動でミュートに切り替わる点と、イヤーカップを回して音量を調整できる機能が便利。結論からいえば、音量周りの操作をヘッドセット単体で完結させられる点が気に入りました。

マイクの跳ね上げミュートは、使ってみると思っていた以上の利便性を感じます。ボイスチャットをしていてマイクをミュートにしたいときというのは、たとえば家に訪問者があったときや、トイレなどで席を立たなければならないとき、スマートフォンに着信したときなど、比較的急を要する場面が多いはず。その際にボイスチャットソフトやOS標準のボリュームコントロールを操作せず、マイクを跳ね上げるという動作だけでひとまずミュートになるのは、実感としてとても助かりました。

イヤーカップのボリューム調整は、音量がバラバラな連続した動画を視聴している際に重宝しました。気になったタイミングでサッと音量ホイールを操作できるので、都度動画の音量バーに触る必要がないのは便利です。

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    左イヤーカップのマイク。跳ね上げると自動でミュートになる

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    マイクを跳ね上げたところ

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    右イヤーカップのボリュームホイール

そのほか密閉型ヘッドセットならではの特徴としては、装着時の遮音性が挙げられます。どれくらいの遮音性かといえば、コンテンツの再生音がない無音の状態で装着していても、屋外の雨音が気にならない程度に聞こえなくなるイメージです。それでもPCやエアコン、換気扇の駆動音くらいであればしっかり遮断してくれるので、作品世界への没入感の向上に一役買ってくれることでしょう。

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    ヘッドバンドはかなり太めで、ホールド力は高い

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    イヤーパッドは厚手のレザーレット

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    ヘッドバンドにはライセンス合意しているゼンハイザーの文字も見える

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    ケーブルは着脱式

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    イヤーカップは側面後方のアームで支持されている

音の出どころがわかりやすい定位のよさ

ここからは、バトルロイヤルゲーム『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)と『Tom Clancy's The Division 2』(以下、Division 2)で実際に使ってみての所感をお伝えします。

『PUBG』や『Fortnite』のような、いわゆる「バトルロイヤル」のジャンルでは、敵よりも早く敵の位置を把握し、少しでも有利な立ち回りをすることが重要です。物音をよく聞くことは、その判断材料の一つ。そこに人がいることで必然的に生じる音、具体的には足音や銃声、ドアの開閉音、窓が割れる音、乗り物の駆動音といった音のことです。

ゲーミングヘッドセットに求められるポイントは、そのような「聞き逃してはいけない音」がきちんと聞こえるよう調整がなされているかです。本機をしばらく使ってみて感じたことは、高音がよく通り、遠くから聞こえる銃声や、近距離で動き回る敵の足音が聞き取りやすい印象でした。

筆者が普段使っているオーディオ用ヘッドフォンとの最も大きな違いは、特に足音が聞こえてくる方向と距離のつかみやすさです。普段遣いのヘッドフォンでも音の聞こえてくる方向はわかるのですが、GSP 601の場合は、音の継ぎ目が細かく、音の移動がスムーズに聞こえてくるので、敵の位置を直感的につかみやすい感覚がありました。

  • GSP601

    徐々に近づいてくる足音で敵のいる方向、いると思われる位置が容易に推測できる

  • GSP601

    1人目が倒された音を聞きつけて近づいてきた別の敵がドアを開けて入ってくるのも予見できた

音響機器メーカーらしい高音質も魅力

『Division 2』は、見た目こそTPSですが、戦闘のドロップや報酬でベストインスロットを目指すゲームの性質はむしろRPG寄り。対人戦を楽しめるモードもあるにはありますが、本筋はソロプレイ、あるいはほかのプレイヤーと協力してストーリーを進めるキャンペーンモードです。

『Division 2』には音がシビアにクエストの可否を決めるような場面はほとんどないので、サウンド環境は比較的自由なのですが、荒廃した都市とそこで展開するストーリーは、一部のイベントカットシーンを除けば基本的に無線連絡の形で進行するため、ある程度は良いサウンド環境で遊びたいところ。ワシントンDCを舞台とした広大なフィールドには自然公園から下水道、オフィスビル、学校、博物館、軍事施設、港などさまざまなロケーションが用意されており、それぞれの場に合った環境音も聞きどころです。そのようなちょっとした要素を楽しむ場合でも、GSP 601は鑑賞に向いた音を出力してくれます。

本作において実用面でGSP 601が活躍するのは、マルチプレイで遊ぶときでしょう。先述のマイク跳ね上げミュートの利便性はもちろんですが、マイク音質はヘッドセット内蔵マイクとしても高いほうなので、特に音周りの設定を気にせず使えるはずです。ただ、マイクは指向性が低く、声だけでなく打鍵音やクリック音を拾いがちなのはやや気になりました。

  • GSP601

    コロンビア特別区(ワシントンDC)のロケーションには、場所に合わせた環境音が設定されている。画像はソメイヨシノで有名なタイダルベイスン(本作は季節設定が夏なので桜を拝むことはできないが)

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    区内のさまざまな場所で戦闘が発生する。写真はタイダルベイスンの入り江に停泊している巨大ホバークラフト上での戦闘

良いものを長く使いたい人におすすめ

ゲーミングヘッドセットを使う動機はさまざまですが、多くは「よりよいゲーム体験を得たいから」ではないでしょうか。ゲームプレイに没頭するとヘッドセットを長時間装着することも多くなるので、ヘッドセットの装着感やヘッドフォン部分の音質は、長時間使用した際の快適さを評価するうえで重要な指標になります。

身も蓋もない話ですが、ヘッドフォンやヘッドセットといった製品カテゴリの品質は、価格によってある程度はっきりとした差がついてしまうもの。GSP 601のように2万円を超える価格帯は、ヘッドセット自体の音質や装着感、長期間使用する場合の耐久性という面でもバランスよくまとまっている製品が多く存在します。

近年、eスポーツの普及によって安価なモデルも多数登場しているゲーミングヘッドセットですが、特にPC環境でゲームを楽しむ人であれば、ゲームプレイ時だけでなく、映像や音楽を楽しむ普段遣いにヘッドセットを使用することもあるでしょう。長く付き合うつもりであれば、ヘッドセットを選択する段階でそれなりの製品を候補に入れるのは意味のあることです。

GSP 601は安定した装着感と便利な音量関連ギミック、音の出どころが掴みやすい定位の良さなど、音響機器メーカーを前身とするEPOSらしい堅実さの感じられるヘッドセットです。「良いものを長く使いたい」と考えるならば、最初の一台として候補に入れていい製品といえるでしょう。