映像配信サービスのNetflixは9月7日、日本上陸5周年を迎えた同社のこれまでと、今後のオリジナル制作方針を紹介するオンライン説明会を開催。2020年冬に配信予定の実写版『今際の国のアリス』を手がける佐藤信介監督も登場し、制作の状況や感想について語りました。

  • Netflix日本上陸5周年

    Netflix コンテンツ・アクイジション部門ディレクターの坂本和隆氏

Netflixの国内登録者数、500万人を突破

Netflixのチーフ・オペレーティング・オフィサー(COO)とチーフ・プロダクト・ オフィサー(CPO)を兼任するグレッグ・ピーターズ氏は冒頭のビデオメッセージで、「Netflixにとって日本はアジア初の大きな賭けでした。当時我々のサービスは、アメリカとカナダを除いて約60カ国、ヨーロッパと南米のみでローンチしていました。日本は想像以上にユニークな国だと感じました。クリエイターや配給会社とのパートナーシップ、支払いの仕組み、作品の翻訳が正しいかなど、日本で最適なサービスを提供するため、多くの課題に取り組みました」と振り返りました。

世界190カ国以上の国で、1億9,300万人以上の会員を有するNetflixは、1997年に創業した当初、映画やドラマのDVDを会員の自宅に郵送するDVD配送サービスを提供していました。2007年に現在のような配信サービスをスタートし、2015年9月1日には日本に上陸。コンテンツ制作に注力しつつ会員数も増やしています。

グレッグ・ピーターズ氏はビデオメッセージのなかで、日本での登録者数は約500万人以上であることを明らかにしました。2019年の同時期の国内会員数は「ざっくり300万人」としていましたが、この1年で200万人以上の会員を増やしたかたちです。

ここ数カ月で、蜷川実花氏が監督を務めたNetflixオリジナルドラマ『FLOWERS』や、神山健治氏と荒牧伸志氏によるダブル監督体制で制作されたフル3DCGアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』、スタジオコロリドが手がけた長編アニメ『泣きたい私は猫をかぶる』、湯浅政明監督によるアニメシリーズ『日本沈没2020』などさまざまな作品を配信したことにも触れ、「この1年で日本でさらに成長できたことに心から感謝しています」(グレッグ・ピーターズ氏)。

  • Netflix日本上陸5周年

    Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』。Netflixにて全世界独占配信中
    (C)2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会

2015年の日本上陸以来、「(Netflixの)使命は日本のファンを楽しませること」と語るグレッグ・ピーターズ氏は、そのミッションの実現のためにコンテンツ制作の規模を拡大し、クオリティや技術面でサポート体制を整え、各家庭での視聴体験にもこだわっているとしており、「エンターテインメントがこれまで以上に必要とされている今、会員に喜んでもらえるサービスを提供し続け、期待に応えたい」と話しました。

【動画】Netflix 日本ローンチ5周年|これからも感動をあなたと共に。

なお、Netflixは9月7日に創業以来初のグローバルキャンペーンを世界27カ国と地域で開始しました。キャンペーンメッセージは「We’re only one story away. (ひとりじゃない、世界がある。)」。

「国境や人種の壁を超えて人々の心を繋げるストーリーの力」を改めて伝えることを目的にスタートするもので、上記のメッセージを核に、Netflixのサービス上のUIに表示されるプレイバーをモチーフにしたビジュアル表現を採用しています。このキャンペーンはThe New York Times、朝日新聞、日本経済新聞での広告を皮切りに展開していきます。

  • Netflix日本上陸5周年

    Netflix史上初のグローバルキャンペーン「We’re only one story away. (ひとりじゃない、世界がある。)」

会員数急増の理由は「作品の増加と多様化」

Netflixで自社オリジナル作品のクリエイティブを統括している、Netflix コンテンツ・アクイジション部門ディレクターの坂本和隆氏は、動画配信サービスの国内市場規模がNetflix上陸時の2015年(約1,410億円)と比べて、2019年には約2,770億円と倍増していることを紹介(出典:デジタルコンテンツ協会「動画配信市場調査レポート2020」)。

「動画配信市場は、Netflixのような定額制見放題サービスを中心に大きく拡大しています。サービスが増えていますし、多様化もしています。市場規模の拡大と並行して、ユーザーも定着していることがうかがえます。今後も市場規模は拡大傾向にあるようで、非常に追い風です」(坂本氏)。

Netflixが日本で始まる以前にも、国内にはアクトビラやTSUTAYA TVといった映像配信サービスがありましたが、当時はいずれも「テレビで見る」ことを前提にしたサービス構築がされており、「ネットを介してエンターテインメント(映像配信)を楽しむ」ことは今ほど定着してはいませんでした。

坂本氏は現在の動画配信市場について、「多様な事業者の共存と素晴らしい作品のあくなき開発が少しずつ結果として見えてきている状況」と分析。その上で、「Netflixの強みは、ビジネスをシンプルにし続けたことにあります。配信サービスを良くすることにこだわり、得意なことだけに集中してきたことがNetflixの特異性です」とアピールします。

Netflixのローンチから5周年が経ち、国内会員数が500万人を突破したことについて、坂本氏は「これは1つの通過点に過ぎませんが、改めて身の引き締まる思いです。会員が求めていることを最優先に、今後も作品作りに向き合います」と話しました。

会員数が急増したきっかけやそのタイミングを報道陣から問われ、坂本氏は「タイミングというよりは、複合的な部分だと思います」と回答。「グローバルでNetflixオリジナル作品が増えており、(Netflixで)観られる作品の多様化が急速に進んでいることが大きいのかなと。たとえば『愛の不時着』のような韓国ドラマはたくさん視聴されており、他にも日本の実写やアニメ、ハリウッド作品などもあります。選択肢が増えてきているのが一番大きなところではないかと思います」と分析しました。