特茶のユーザーから得た気付き

ただ、開発段階では紆余曲折もあったようだ。その点について、後藤氏は「継続的な利用を促す、健康への意識を変えるアプリということで開発をスタートしました。当初は、ストイックなアプリにすることで継続してもらおうと思っていましたが、健康意識が高い人以外は誰もやらないだろうとも感じていました」と振り返る。

そのような状況ではあったものの、日ごろの同社のマーケティング活動が気付きを与える。同氏は「消費者の動向を探ると、われわれの認識に齟齬がありました。その契機は、特茶のユーザーインタビューを重ねていった際に普段から飲むお茶を特茶に変えた結果、健康への意識や行動そのものが変わったと回答したユーザーの方がいました。そこで、このアイデアをアプリに落とし込もうと考えました。これは、1つの行動が変わればすべてが変わるきっかけになるという気付きを得たからです」と話す。

一般的なヘルスケアサービスは、有料かつ測定・記録管理型のためストイックになりがちだ。ともすれば“体を動かす”ことは個々人の取り組み方次第のため継続できるか否かは疑問だ。このようなサービスはインセンティブが高額ではあるものの低頻度となっており、利用者は健康意識の高い一部の人に限られている。

また、大半のヘルスケアプリは身長、体重、血圧、健康診断のデータなどを反映させるが、健康意識が低い人たちに継続してもらえるように考え抜いた結果、データを見える化すると億劫になってしまうため、あえて盛り込まなかったという。こういった細かい部分にも、手軽に始めてもらいたいという意図が込められているのだろう。

  • 一般的なヘルスケアサービスとの比較

    一般的なヘルスケアサービスとの比較

コロナの影響を受けるも年内に300社との商談を予定

当初は、7月のローンチに向けて動いていたが、新型コロナウイルスの影響で商談が延期しているものの、年内に大手法人300社との商談を予定し、現在は先行企業数社で実証実験を行っている。

そのうちの1社であるセガサミーは、働き方相談室という組織において“より健康に働く”ために意識を高めつつ、継続した行動につなげることが必要と考えている新型コロナウイルスの感染拡大に伴い在宅勤務がメインになり運動量低下なども踏まえ、手軽にスタートできること、利用が任意かつ無料という参加障壁の低さから実証実験への参加に至ったという。

実際の利用者の声としては「健康知識がなくても簡単にタスクが選定できた」「普段より意識して体を動かす機会が増えた」「簡単であるため思いのほか取り組めた」など、好意的に評価されており、健康意識が高くない従業員でも継続する後押しになっているようだ。

後藤氏は「健康診断の結果で改善が必要な人に利用してもらいたいです。自身の健康に少し気をかければ、いろいろなことを気にするようになり、例えば間食をやめる、一駅分は歩くなど複合的に変化が起きて、その人自身の健康意識が改善されていけばと考えています。まずは、全社ではなく、特定の部署や事業所においてパイロットで実施してもらい、効果があれば広げていく形になります。将来的には企業以外への展開も検討していますし、少なくとも商談の状況としては興味を示してもらっていることが多いですね」という。

今後、同社ではどういう傾向のタスクを実施する人が継続するのか、どのようなタイミングでインセンティブの飲料をもらえると継続できるかなど、ユーザーに使い続けてもらうためのUI/UX向上を踏まえて、データを活かしていくことに注力するという。将来的には健康の関心度により、さらなるマーケティング活動につなげていく考えだ。