Dropboxの日本法人であるDropbox Japanは、日本国内のナレッジワーカー(知識労働者)/企業・組織の有職者1,000名を対象とした、テレワークに関す意識・実態調査を実施した。その結果、テレワークを行う雇用者と、それを管理する経営者の間にかなりの温度差があることが明らかになったという。

調査機関は2020年4月24日~2020年5月12日(スクリーニング調査)、および2020年5月11日~ 2020年5月12日(本調査)。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための、緊急事態宣言下での調査となった。対象はナレッジワーカーの有職者としたが、製造業、運輸業の一般職は除いた。

テレワーク、進んでいたのは「関東」の「通信業」

  • あなたは現在、テレワーク・リモートワークを実施していますか。以下より最も近いものをお知らせください。(各単一回答)

    あなたは現在、テレワーク・リモートワークを実施していますか。以下より最も近いものをお知らせください。(各単一回答)

調査期間である2020年5月11日~12日において、テレワークを行っていたのは回答者の約4割(40.2%)だった。導入率には地域や業種の差がみられ、地域別では関東(54.3%)、業種別には通信・情報サービス関連企業(62.3%)が突出している。

また、外資系企業と政府・公共機関ではいずれも半数強がテレワークを導入しているものの、外資系企業では週の半分以上~ほぼ完全にリモートで働いている人が多いのに対して、政府・公共機関などでは週2日以内の部分的な実施にとどまる回答が多数だった。

また、テレワークを実施していない人のうち54%が、テレワークできる業務が全くないと回答した。

リモート業務を阻むのはやはり紙とハンコ

  • テレワーク実施期間中に以下の理由でやむを得ず出社した経験はありますか。(複数回答)

    テレワーク実施期間中に以下の理由でやむを得ず出社した経験はありますか。(複数回答)

テレワーク実施上の困りごとでは、「社外からのアクセスができない(しにくい)ファイルの閲覧」、「紙の資料の確認や押印作業が不便だった」という声があり、それらの処理のために出社を要したという事情が挙げられた。中でも60代と40代の回答者の約4割が「紙の書類の確認」に、20代の回答者の44.8%が「社外からアクセスできないファイルの閲覧」に課題を感じていた。

また、リモートワークを週5回実施できている会社ではあまり課題を感じていないのに対して、週3日~4日程度のリモートワークをしている会社の回答者の場合は、約45%が上述の理由でやむを得ず出社した経験があり、課題感を持っていた。

オンライン会議の普及が進むも、対面主義は根強い

  • オンライン・オフラインでの会議実施比率推移

    オンライン・オフラインでの会議実施比率推移

企業の会議・ミーティングをオンラインで実施している割合について、2019年10月に同条件で実施した調査と比較したところ、社内外に関わらず1~2割の増加傾向となった。

オンライン会議がこの半年で浸透してきている一方で、完全対面のミーティングもいまだ各種3割程度残っている。また、「テレワーク中やむを得ず出社した経験」として「対面での会議」を挙げた部長~経営者クラスの回答者が32.3%にのぼった。

オンライン会議に期待することを尋ねた設問で、「会議終了後に議事録ができていること」、「会議が終わった段階で何をいつまでにするか、To doリストやスケジュールができあがっていること」などの項目に対し、いずれも7割を超える回答があった。項目によっては前回調査よりも10ポイント程度上昇しており、オンライン会議後のフォローアップの効率化にも期待が高まっているようだ。

テレワークに懐疑的な経営者、メリット感じる雇用者

  • 在宅勤務を実施することで、一日平均何時間有効に活用できると感じていますか。(単一回答)

    在宅勤務を実施することで、一日平均何時間有効に活用できると感じていますか。(単一回答)

テレワークの効果について、特に長時間労働の是正(32.8%)やワークライフバランス(31.7%)といった点において期待が寄せられた。しかし、経営者~部長クラスの48.9%は、そうした項目に関して、テレワークのメリットを感じていないということが判明した。

一方で、テレワークを実施する頻度が高いほど、在宅勤務による時間を有効活用できていると感じている。具体的には、1日平均2時間以上を有効に活用できていると回答した人は、リモートワークの頻度が週2日の人で43.5%、週3~4日の人で58.2%、週5以上の人で65.7%と、頻度と効果の実感は正比例した。

テレワーク環境の整備を求める声多数、就職先の選択にも影響

  • 今回の新型コロナウイルス感染症の大流行(パンデミック)が収束した後も、在宅勤務の体制整備や強化をあなたの勤務先に望みますか。(単一回答)

    今回の新型コロナウイルス感染症の大流行(パンデミック)が収束した後も、在宅勤務の体制整備や強化をあなたの勤務先に望みますか。(単一回答)

自分が就業する会社を選択する際、在宅勤務環境の有無が影響するかという問いに対して、20代の回答者の60.7%が「影響する」と答えた。また、通信・情報サービス業界の回答者では59.6%、すでにリモートワークを導入している層では63.2%と、同様に高い傾向がみられた。

また、テレワークを実施している人の約8割が、パンデミック収束後もテレワーク体制の整備・強化を希望していた。具体的な改善点として、PC などのデバイス支給、社内資料への安全かつ便利なアクセス環境の整備、承認プロセスの可視化といった、インフラ整備に係るものが主となり、特に20代や政府・公共機関勤務者が多くの改善点を指摘した。

日本テレワーク協会の村田瑞枝事務局長は、この調査結果に対し、「従来より、テレワーク推進のためには、古い価値観に固執して新しい発想に慎重になっている“粘土層”や、自らの考えに固執して決してそれを曲げない“岩盤層”の意識改革が重要と認識しており、経営者~部長クラスの方に本来の意味でのテレワークを実体験していただき、メリットを認識していただくことが次のステップになると考えています」とコメントした。