パナソニックは7月14日、ニューノーマル時代のワークプレイス創造のために人起点の価値創出を目指す実証実験を、同社の広島中町ビル(広島県広島市)にて2020年7月より開始すると発表した。

同実証実験では、同社の持つLPS(ローカルポジショニングシステム)を活用し、ヒトの位置・動線などを可視化し、温度・湿度・CO2や、照明・空調・電力などのデータを蓄積する。そのデータを基に、機器の最適コントロールなどを見定めて制御および変更を実施するために設備をクラウド(Azure)接続する。

さらに、オフィス空間の継続的な管理を実現するため、オフィス環境のセンシング、空間見える化、BAS(ビルオートメーションシステム)/設備管理、利用状況の分析結果をクラウドで管理していくという。具体的な実証実験の内容を以下で紹介する。

オフィスでのさまざまなデータを数値化、空間分析

オフィスの温湿度やCO2などの環境要素とともに、ヒトに着目したデータを計測する。

空間における環境およびヒトデータの計測

空間環境センサーで、温度、湿度、CO2等の空間環境データに加えてヒトの動き、ヒトの密度を計測。各設計エリアを環境要因と個々の働き方や部署間の交流を要因分析・見える化することで、データに基づく組織設計やレイアウト変更の提案、設備設計・改修提案に活用する。

また、人起点の空間設計において、LPS・空間環境(画像)センサなど、利用者の目的に合わせて選択可能なヒト計測手段を実証導入し、効果検証を行うという。

  • 空間環境とヒトのデータを活用した実証実験

ヒトの心理データセンシング

ヒトの心理状態を、センサおよびIoTと連携したツールによりセンシングする。各設計エリアにおいて、通常のアンケートに加えてスマートフォンを用いて直感的に入力するマトリクスアンケートによりデータの量と精度を確保するという。

また、同社の構造分析手法により、ヒトの心理状態と環境要素およびカメラを用いたヒトセンシング情報との因果関係を分析する。空間設計の様々な要素を決定する指標として、照明配置設計に加え、植栽などの最適配置の有効性も検証するとのこと。

  • ヒトの心理データを活用した空間の改善を行う

データを活用したオフィス空間制御

照明・音・気流を制御し、目的に合ったオフィス空間を作り出す。

フリーアドレスエリアのゾーニング制御

個人の好みに合わせて選べる執務環境を、設備制御(照明・音・気流)により構築。フリーアドレスエリアでは「リラックス/リフレッシュ/集中」の3つのゾーンから実証を開始する。

また、個々の照明・音・気流デバイスを制御可能なフレキシブルなゾーニング制御方式を導入しており、環境およびヒトデータの分析に基づいてゾーンの空間チューニング、割合チューニングを自由に変更することができる空間制御を可能にしたという。

  • フリーアドレスエリアのゾーニング制御

カラー照明&空調連携による空間価値検証

カラー照明と空調をクラウドで連携制御し、会議室環境の変化による空間価値を検証する。省スペースを目的とした会議室の多目的利用を想定し、さまざまなユースケース仮説をクラウド連携により確認する。

  • カラー照明&空調連携による空間価値検証

アップデート型のインフラを導入

データに基づくオフィス改善の早期実現を、ソフト・ハード両面のアップデートの仕組みで支える。

データに基づくオフィスのデジタルツイン構築

ヒト・環境・設備の情報を収集し、オフィスビルおよび執務空間を統合的に管理する仕組みを構築する。また、建築データに加え各種センシングデータを統合化し、仮想空間と実在する建物のデジタルツイン(※1)も構築しており、リアル環境では試せない仮説のシミュレーション、3Dの見える化による提案に活用するとしている。

  • データに基づくオフィスのデジタルツイン構築

さらに、環境データ分析に基づき、従来のビル空調設備のクラウド制御を実現し、ヒトの密度情報により空気の澱みなどの環境変化を先読みする気流制御の検証を行う。

(※1)データを収集し、サイバー空間上に同様の状況を作り出すこと

ハードのアップデートに対応したシステム天井改修

システム天井の照明器具に配線ダクトをビルトインし、天井面への機器の追加や移動ができる設備インフラを構築。空間用途に応じた機器追加やレイアウト変更時の電源確保を省施工化し、変化するニーズにも長期間・幅広い提案が可能になったという。今後は配線ダクトに対応した機器を拡充し、天井面からの気流活用の有効性検証などにも取り組む方針だ。

  • ハードのアップデートに対応したシステム天井改修

その他の実証実験

従業員が仮眠・集中する時に使用するパーソナルルームや、映像に加え風や香りを届けるエアサイネージ、気流でクローズ空間を作るエアコクーンなどの実証実験も行う。

  • その他さまざまな検証

同社は、これらの実証実験を通して快適なオフィス空間の実現を目指すとのことだ。