2019年からの暖冬をまたいだ2020年の夏は、平年よりも暑くなると言われています。筆者が大学生だったのは今から四半世紀も昔になりますが、当時の夏はまだ気温も湿度も現在ほど厳しくはなかったように思います。2020年は新型コロナウイルスの感染症対策として、オフィス内や外出中でもマスクを着けて過ごすことが求められるので、いつも以上に暑さへの備えが重要です。

そんな中、ソニーがクラウドファンディング「First Flight」を通じて商品化した“着るエアコン”のようなウェアラブルデバイス「REON POCKET(レオンポケット)」、一般販売が7月1日からスタートしました。このスマートガジェットを活用して、健康的に夏を乗り越える方法を探ってみます。

  • ソニー、REON POCKET(レオンポケット)

    一般販売が始まったソニーの“着るエアコン”「REON POCKET」、暑さ対策効果を検証します

量販店やオンラインストアで販売スタート

ソニーの画期的なレオンポケットは、背中の首もとを冷やしたり暖めたりするデバイスです。本体はスリムなワイヤレスマウスのような形で、重さは約85g。レオンポケット本体と、モバイルアプリ「REON POCKET」をインストールしたスマホ(iOS・Android)をペアリングして、本体を操作します。正しく身に着けるために専用のインナーウェアも必要です。

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    インナーウェアは2色・3サイズがそろいます

一般販売がスタートしたレオンポケットと専用インナーウェアは、全国の家電量販店、雑貨店やソニーのオンラインストアで購入できます。本体は13,000円(税別)、インナーウェアは1着1,800円(税別)で、インナーウェアはホワイトとベージュから選べます。サイズがメンズS/M/Lに限られるため、早く女性も使えるようにしてほしいところです。

ちなみに筆者はクラウドファンディングでレオンポケットを購入して、2020年3月末に届いたものを使っています。梅雨どきから本格的に活用する機会が増えたので、インナーウェアが買い足せるようになって助かりました。ただ1着がとても高価なうえ、デザインがいかにもインナーっぽいので、重ね着せずにレオンポケットを身に着けて外出できるような、デザインもイケてるTシャツが早く増えることを期待しています。

オールシーズン使える冷温感対応、アプリの使い心地も快適

レオンポケットは、専用インナーウェアの首もと(後ろ側)あたりに設けられているポケットに装着。レオンポケットの冷たい(暖かい)部分を、直接肌に接触させて使います。シリコンで覆われたパッドの中に、電圧をかけると発熱/吸熱(冷却)して冷温感を生む素子が組み込まれています。

  • ソニー、REON POCKET(レオンポケット)
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    インナーウェアのポケットに本体を装着。首もとを冷やします

ソニーがモバイル機器の設計で蓄積してきた、熱設計技術のノウハウも生きています。レオンポケットは「冷やす」だけでなく、「暖める」こともできるオールシーズン対応のウェアラブルデバイスなのがポイント。内部にこもる熱を逃がすための機構を応用して、ファンから送り出される微風を側面のダクトから放出して「ハンディ扇風機」のようも使えます。

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    背面のシリコンパッド部分が冷えたり暖まったりすること、接触冷温感が得られます

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    排気を利用してハンディ扇風機のようにも使えます

モバイルアプリからは、冷感・温感の強度と風量レベルを調節できます。レオンポケットとスマホの接続はBluetooth Low Energyです。アプリで設定を切り換えると、レオンポケットの動作にすばやく反映される小気味よい使い心地を実現しています。

また、レオンポケットの内蔵加速度センサーでユーザーの歩行・停止状態を判別して、冷温感の強さを自動的に切り換える「オートモード」も搭載しています。

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    ユーザーの動作をセンサーで判定。冷温感のレベルを自動調節してくれる「オートモード」があります

レオンポケットはリチウムイオン充電池を電源としていますが、約2時間のフル充電から、使える時間の目安は冷却・温熱ともに約2時間です。安全のため、オートモードも含めて、連続運転が約30分を超えると自動的に停止します。インナーウェアのポケットから外して、テーブルの上などに置いてしばらく経つと省電力モードに切り替わります。

本体を再び起動するときに、毎度スマホアプリを起動するのは面倒です。アプリから「クイック起動」のメニューを選択すると、本体側面のボタンを約2秒押すだけでLEDが緑色に点灯して、すばやく冷却・温熱モードがスタートします。

首もとひんやり、汗が引いた

夏本番を間近に控えたいま、気になるのはレオンポケットの「冷感」機能がどれくらい使えるのか……に尽きるでしょう。7月上旬の東京は、昼間も30度に到達しないぐらいの天候が続いていますが、外は蒸し暑く、日差しが強い日中は屋外にいるとじっとりと汗ばんできます。

レオンポケットを身に着けていると涼しさを実感します。ソニーが実験したデータによると、室温30度の環境でレオンポケットを5分間、身に着けていると(安静状態)、使用の前後で体表面温度が13度ほど下がったそうです。実際に体験すると、首もとが冷えるだけで身体のほてりが落ち着いて、汗がやや抑えられる手応えがありました。

冷感の強度設定は気温や時間帯にも寄りますが、室内であれば「1~3」、屋外であれば最大値の「4」も選択に入ってきます。最強レベルの「4」は、最大で2分間まで連続して使える「ブーストモード」になっています。

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    首もとを冷やすだけで涼しさが感じられます(ソニーの資料から)

スポーツなどで身体を動かしながら使いたくもなりますが、レオンポケットの本体は防滴・防水仕様ではないため、スポーツシーンでの利用は控えるべきでしょう。また、落下に対する耐久性を高めた設計にはなっていないため、必ずポケット付きの専用インナーウェアと一緒に使ってください。

首もとが膨らまず、見た目もクールに

レオンポケットを身に着けると、インナーウェアのポケット部分が少したわみますが、上からシャツを着れば目立たなくなります。ビジネスシーンの装いに問題はありません。ただ、冷感効果を最大化するためにはダクトからの排気を逃がせるよう、シャツの襟元を空けて着ることがよいとされています。ワイシャツの第1ボタンとネクタイを外すクールビズとマッチするでしょう。

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    シャツを上から着ると、レオンポケットを装着していることもバレないと思います。襟元はなるべくオープンな装いにしましょう

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    約85gの本体は形状もスリム。USB Type-C端子で充電します

ソニーがもし今後、レオンポケットを装着できるカジュアルな袖付きシャツやTシャツ、女性向きの衣類を商品化するとしたら、ポケットの部分はたわんで見えないように少し強化する必要があるかもしれません。とはいえ、やはり“着るエアコン”をここまで小さなサイズで身に着けやすくしたことで、とても快適に使えるウェアラブルデバイスになっています。暑さ対策としてかなり使えるアイテムと言えそうです。

レオンポケットを夏の間、快適に使い続けるためにはインナーウェアのやりくりが課題。毎日汗をかくので、インナーウェアの買い置きは5着前後は欲しいところです。ソニーには、インナーウェアを少しでも安く買えるキャンペーンを考えてほしいところ。

もうひとつ気をつけたいのは「ファンノイズ」。冷感機能をオンにすると、最低でもファンが3段階の「1」で回転します。レベルを「2」以上にすると、静かな室内では少しファンノイズが気になるため、ビジネスシーンで顧客のオフィスへ出かけたときなどは、気を付けて使いましょう。

冬になれば、電子式携帯カイロのように暖めて使えるのもレオンポケットの魅力。また、夏場はオフィスの冷房が効き過ぎていて、身体が冷えることもよくあります。そんなときにもレオンポケットの温感機能が役に立つでしょう。女性も手軽にレオンポケットが使えるように、「ポケット付きストール」のようなシャツ以外のアクセサリーもあると、より多くのユーザーが使えそうです。

家族の生活を支える大型家電だけでなく、パーソナルサイズでなおかつ、レオンポケットのように日本特有の高温多湿な環境で高い効果を発揮する「ご当地スマート家電」の魅力には、説得力があります。レオンポケットも日本を起点にして、夏の猛暑が厳しい世界各国の国々に羽ばたいてほしいものです。

  • ソニー、REON POCKET(レオンポケット)
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    スマホアプリと連携して冷感・温感の両方の用途に使えます。夏の寒すぎるオフィス対策にもぴったり