MEMSや化合物半導体などの非IC分野に強い半導体市場動向調査会社である仏Yole Développementによると、2020年のバイオMEMS(医療検査向けおよびヘルスケア向けMEMS)市場は、2019年の37億ドル規模から12.4%増となる41.6億ドルに達することが見込まれているという。

ただし、バイオMEMS市場の2桁成長は、新型コロナウイルス対策で一部の製品が急成長したためであり、すべてのカテゴリで成長したわけではないともしている。

新型コロナウイルス感染症の陽性患者の増加に伴い、人工呼吸器などの医療機器も大量に必要となり、MEMS圧力センサや流量センサの需要も急増した。また、アジア、特に中国を中心として赤外線を活用する非接触温度計に対する需要も拡大。病院での患者モニタリングや、空港や駅などの公共エリアでの新型コロナウイルス感染症対策に活用されるようになるなど、IRサーモパイルの出荷も急速に増加しており、2020年は前年比90.5%増という大幅な成長が見込まれている。医療機器向けにMEMS超音波トランスジューサやオプティカルMEMSなども売り上げを伸ばしているほか、医療機関での検査のいくつかはマイクロ流体チップに基づいているため、こちらも同8%超の成長が期待できるという。

  • バイオMEMS

    2020年のバイオMEMS業界の製品カテゴリ別成長率ランキング。成長率+90%超の温度センサから-20%の慣性センサまでさまざま (出所:Yole Développement)

バイオMEMSは2025年に63億ドル市場に

バイオMEMS市場は2019年の37億ドル規模から、2025年には63億ドルに成長し、この間の年平均成長率は9.2%とYoleは予測している。中でもポリマーベースのマイクロ流体チップが巨大な市場を形成しており、市場の85%を占める規模であり、これに圧力センサ市場が続く形となっている。

今後5年の間で、高い成長率を示す製品カテゴリは、市場規模はさほど大きくはないものの、医療画像処理と血管内超音波検査(IntraVascular UltraSound:IVUS)向けの「マイクロマシン超音波トランスデューサ(Micromachined Ultrasound Transducer:MUT)」および落下の検出と活動の追跡に関連する「慣性MEMS(Inertial Measurement UnitMUT:IMU)」だとYoleは予測している。それぞれの年平均成長率は32%と29%としている。IMUは2020年はマイナス成長の見込みだが、2021年以降はその反動で急成長が予想されるという。

中長期的には、新型コロナウイルスの流行がヘルスケア分野に影響を与え、コネクテッドウェアラブルやポイントオブケア向け医療機器が、ヘルスケアプロバイダーから注目を集める可能性が高いとしている。

  • バイオMEMS

    2019年および2025年のバイオMEMS業界の製品カテゴリ別市場規模およびこの間の年平均成長率 (出所:Yole Développement)

バイオMEMS業界は、各社得意な1品種で棲み分けへ

バイオMEMSのトップ企業は、スイスに拠点を置くTE Connectivity、2位は米Amphenolであるが、いずれも圧力センサに注力している。トップ5は、圧力センサとマイクロ流体チップを製造しているが、ほとんどすべての企業が得意な1品種を軸としたサプライヤであり、例外はオムロン程度となっている。同社は圧力センサ、フローメータ、温度センサを製造している。また、このほか日本勢としては、村田製作所、アズビル、TDK、ルネサス エレクトロニクス、日立製作所なども有力メーカーとして名を連ねている。

  • バイオMEMS

    主要バイオMEMSサプライヤ29社の製品構成比率。ほとんどの企業が得意な1品種に注力している (出所:Yole Développement)