2020年5月、バトルロイヤルゲーム『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の地域別オンライン国際大会「PUBG Continental Series: Charity Showdown」(以下、PCS)が開催されました。

4つの地域で行われた本大会のうち、日本チームを含むアジア地域の大会では、彗星のごとく現れた複数の国際大会初出場チームが活躍し、上位を席巻するという思いもよらない結末を迎えました。

『PUBG』の競技シーンにおいて、韓国や中国のチームが出場するアジアは、世界で最も有名強豪プロチームが集うハイレベルな地域。国際大会に初めて出場するチームが上位にランクインするのは、それだけでも十分に大きなトピックスです。

さらに驚くべきことに、総合3位にランクインした香港チーム「Team Curson」は、これが初の国際大会だっただけでなく、社会人と学生混合のアマチュアチームであることが明らかになりました。

  • Team Curson

    圧倒的なポイントで王者に輝いた中国チーム「Tianba Gaming」も、これが初の国際大会だった

日本チームは、国際大会で思うような成績を残せない状況が続いています。日本チームが国際大会で結果を出すために必要なことは、「専業のプロチームとして十分な練習時間が確保できること」や、「チームのサポート体制が整っていること」だと考えられてきました。しかし、Team Cursonの活躍は、そうした考えを覆すものだったと言えるでしょう。

そこで今回、Team Cursonにメールによる取材を敢行。アマチュアチームにもかかわらず、なぜアジア3位という素晴らしい結果を残すことができたのか。普段の練習スケジュールやチーム体制、PCSで好成績を生んだ戦略など、さまざまな内容を聞いていきます。

Team Cursonは、MartianChun選手を中心に結成された

――まずは、Team Cursonが結成された経緯を教えてください。

Team Cursonは2018年、チームキャプテンのMartianChunによって設立されました。かねてより『PUBG』ファンだった彼は、友人とアマチュアチームを結成して、オフライン大会に参加する機会をうかがっていたんです。香港では、まれにオンラインやオフラインのPUBGイベントが行われていて、Team Cursonはそのすべてのイベントにエントリーしていました。

そして、私たちはこの2年間、「PUBG Master League(PML)」(※)に挑んできました。私たちにとって「PML」は、まったく新しいレベルのチャレンジであり、大きな経験になりました。満足できない結果も多く、ときには最下位になることもありました。現在のTeam Cursonの好成績は、選手たちの諦めない心と適応力の結果です。

※PML…PUBG Corp.が主催する、台湾・マカオ・香港地域の公式プロリーグ。

――チームメンバーの紹介をお願いします。

チームキャプテンのMartianChunは28歳で、フルタイムの会社員。仕事のあと、すぐ家に帰って、練習試合や大会に参加しています。彼のモットーは「年齢は負ける言い訳にならない」です。

SoMeTh1nGは、過去に香港と中国本土のプロチームに所属していた経験があり、チームのなかで最も経験豊富なプレイヤーです。SoMeTh1nGとMartianChunは、香港で行われたPUBGのオフライン大会で知り合いました。SoMeTh1nGは、中国のプロチームでの活動を辞めたあと、Team Cursonに加入し、チームのオーダーを務めています。

dAは学生です。Team Cursonのメンバーは、台湾・香港・マカオのチームが参加する練習試合を通じてdAと出会い、その後チームに誘いました。dAは、間違いなく香港で最も人気かつスキルのあるスナイパーの1人です。

PH111は最近チームに加わり、すぐさまキープレイヤーになりました。PH111は、『Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)』のアマチュア大会に参加した経験があり、MartianChunの友人です。ほかの3人と比べて経験は少ないものの、先日のPCSで懸命な戦いぶりを見せてくれました。

  • Team Curson

    Team Cursonのメンバー。左から、MartianChun選手、SoMeTh1nG選手、dA選手、PH111選手

練習時間は1日およそ4時間、コーチやアナリストは不在

――Team Cursonは、社会人と学生混合のアマチュアチームだと伺いました。平日・休日それぞれの練習スケジュールを教えてください。

MartianChunはフルタイムの会社員で、休みは日曜だけです。dAは学生で、ほかのプレイヤーはときどきアルバイトをしています。

そのなかで、私たちはチームとして可能な限り練習しようとしています。基本的な練習スケジュールとしては、月曜から土曜まで、19時~20時ごろにスタートして23時前に終わります。メンバーが疲れ切っていなければ、練習後に試合を見返しながら、プレイについて話し合います。

メンバーの1人が練習に参加できない場合は、外部からサポートメンバーを募ります。2人以上のメンバーが出られないときは練習しません。

――専業のプロチームに比べて練習時間が限られていると思いますが、練習において工夫していることや意識していることはありますか?

学校と仕事があるので、私たちの練習時間は1日4時間ほどに限られています。できるときはなるべく、その日の試合を振り返る時間を1時間ほど設けて、大小問わず各プレイヤーのミスをレビューします。

あらゆるミスを厳しく修正していきながら、良いコミュニケーションを取ること。そして、安定したメンタルと、優れたチームワークこそが、チームを良い状態に保つために大切なことです。

――普段の練習試合では、主にどのような国や地域のチームと試合をしていますか?

以前は、台湾・香港・マカオといった地域のチームとの練習試合が主でしたが、2020年からは中国本土の練習試合にも参加するようになりました。

また、東南アジア地域で、いくつかのサードパーティ大会にも招かれました。私たちにとって大きな経験になり、多くの知識を得ることができたと思います。

将来的には、韓国や日本の練習試合にも参加できたら、とても貴重な機会になるだろうと思っています。

――コーチやアナリストなど、チームの戦術面をサポートするメンバーはそれぞれ何人いますか?

このチームには、デザイナーや動画エディター、ソーシャルメディアを担当するチームマネージャーのMartianYanと、プレイヤーのMartianChun、SoMeTh1nF、dA、PH111、Aliceの計6人が所属しています。

現在、コーチやアナリストはいません。このチームは、各地域の大会を観たり話し合ったりするのが好きで、そうしたなかで新しい戦術を見つけています。