昨今では、さまざまなタイトルで数多くのeスポーツ大会が開催されるようになりました。プレイヤーが腕を競い合うeスポーツ大会において、適切な大会ルールが設定され、競技としての公平性が保たれていることは欠かせない要素です。

数々のeスポーツイベントで運営や配信を手がけるRIZeSTには、eスポーツ大会における円滑な進行や公平性を保つための「バトルプランナー」という仕事があります。バトルプランナーは、いったいどのようにeスポーツ大会を支えているのでしょうか。

今回は、バトルロイヤルゲーム『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の国内公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES」(DMM GAMES主催、以下、PJS)の会場にて、RIZeSTのバトルプランナー武富宣利さんにお話を伺いました。

eスポーツ大会を円滑に進行させることがメイン

――まず、バトルプランナーとはどのような役割の仕事なのか教えてください。

武富宣利さん(以下、武富):ひとことで表すのはすごく難しいのですが、eスポーツ大会の運営を円滑に進めるために、さまざまな役割を担っています。

大会によっても役割は違っていて、eスポーツ大会のルールを1から策定することもあれば、大会をスムーズに進行するために選手とコミュニケーションを図ることがメインになるケースもあります。

  • RIZeST バトルプランナーの武富宣利さん

    RIZeST バトルプランナーの武富宣利さん

――ゲームタイトルによっても担う役割が変わってくるのでしょうか。

武富:そうですね。例えば『PUBG』では、eスポーツ大会における公式のグローバルルール(Standard and Universal PUBG Esports Ruleset)が定められているので、国内リーグのPJSも、そのルールに基づいて試合が行われています。

そのため、PJSにおいては主催のDMM GAMESさんと選手たちとの間に入って、さまざまなコミュニケーションを行うことが多いですね。

一方で、大会の運営をすべてお任せいただくケースもあります。例えば、『ロケットリーグ』というタイトルの国内リーグ「PRIMAL - Rocket League Japan Series」がそれに当てはまります。

このリーグでは、海外大会などを参考にしながら、eスポーツ大会としてのルールを1から決めました。こういうケースですと、“バトルプランナー”という名前のイメージに近いかもしれません。

――では、PJSでの例を中心に、バトルプランナーの仕事内容を教えてください。

武富:まず事前に行うのが、選手やチーム関係者との連絡。チャットアプリなどで当日のスケジュールや持ち物、注意事項などを伝え、チームや選手から質問があれば対応します。

次に、前日など大会直前に行うのは、選手がプレイする場所の設営ですね。まっさらな状態から選手席を作るので、スタッフを集めて設営の流れを指示していきます。

選手席の設営においては、いろいろなことに気を配る必要があります。例えば、プレイに必要な机の広さを確保したり、隣の選手のモニターが見えないように仕切りをつけたり。ほかにも、実況・解説の音声が選手のプレイに影響しないように、会場のスピーカーの音量を調整したり、モニターが見やすいように照明を調整したりなど、さまざまです。

そういった細かなところを現場の各スタッフとやり取りしながら、選手たちが問題なくプレイできる環境を作っています。もちろんタイトルや大会によって異なる部分もありますが、選手のプレイ環境を作るうえでの基本的な流れは同じですね。

  • PJSの会場

――大会当日は、どのような仕事をしていますか?

武富:当日は、選手たちがプレイ環境をセットアップする際のサポートや、大会進行、注意事項に関するフォローを行います。

それから、不正がないようにチートツールの使用を防止するのも重要な仕事。審判スタッフには、チェックリストに沿って、大会で決められたルールが守られているかどうかチェックしてもらいます。僕は審判スタッフを統括する立場でもあるので、予期せぬタイミングでPCの電源が落ちてしまうなど、何らかのトラブルが起こった場合には対応することもあります。

  • PJSでは審判が選手のプレイをチェックします

どんなプレイヤーにも平等に、わかりやすく

――バトルプランナーの仕事において、意識していることを教えてください。

武富:どのプレイヤーにとっても平等になるように、ということですね。ルールを読み込んで、それぞれのルールがなぜ記載されているのか、何が起こると不平等になってしまうのかなど、一つひとつ確認しています。

カードゲームなど運の要素を含むタイトルもありますが、お互いにランダム性が影響するなら平等です。でも、どちらかのプレイヤーだけ何かを選べる状況が生まれたら、不平等になってしまう。大会固有のルールも含めて、そういったところを意識しています。

それから、どんなプレイヤーにもルールをわかりやすく伝えることも意識しています。例えば、オンラインストラテジーゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』では、トーナメントドラフトというモードがよく大会で使われますが、このモードをプレイするには、ゲーム内で使用するキャラクター「チャンピオン」を20体以上持っている必要があるんです。

もちろんルールには書いてあるのですが、初心者のプレイヤーには気づけない可能性があります。そういう人が大会に出ようとしたときに、当日になって出場できないと気づくと、困ってしまいますよね。

最近は高校生のeスポーツ大会なども開催されているので、自分たちにとっては当たり前になっていることも、きちんと事前にわかりやすく伝えられるように意識しています。

  • 選手やスタッフとコミュニケーションを図る武富さん

――お話を伺っていると、まさにeスポーツ大会ならではの仕事という印象です。

武富:そうですね。RIZeSTでは、こうした役割の重要性が浸透しているので、進行や演出などに携わるほかのスタッフとのやり取りもスムーズ。ですが、一般的なイベントにはないeスポーツ大会独特の仕事なので、まだあまり重要性が理解されていない現場もあると聞きます。

自分の立場にあたる人が、ゲームや大会のルールをよくわかっていないと、現場スタッフから「今こういうトラブルが起きています。どうしたらいいですか?」と報告が上がってきても判断できませんよね。そうすると、対応を検討するために大会が一時ストップし、どんどん進行が押してしまって……という事態になってしまいます。

――たしかに、何らかのトラブルが起きた際に、大会ルールを踏まえて適切な判断を下せる人がいることは非常に重要ですね。

武富:トラブルが起きたときに、何が原因だったのかをきちんと把握することも大切なんです。ゲーム側のエラーなのか、運営側が用意したPCによるエラーなのか。それとも、選手が持参したデバイスの不具合なのか。トラブルの原因によって、対応は変わってきます。これらも大会の公平性につながる部分なので、正確に判断できることが必要ですね。