東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年5月のIT・ソフトウエア業界のM&Aの発表件数は12件で、5月としては2008年以降の13年間では、2018年(14件)次ぐ2番目の多さだった。新型コロナウイルスの影響が懸念されたが、今のところIT・ソフトウエア業界のM&Aへの影響は限定的といえそうだ。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移

一方、取引金額は約3億6500万円で、5月としては2008年以降の13年間では10番目に とどまった。1億円台が1件、1億円未満が3件と小型の案件が中心だったほか、非公表 が8件に達したため金額が膨らまなかった。

取引金額トップは約2億5600万円

取引金額が最も多かったのはCRI・ミドルウェアが、ゲーム用ソフト開発のアールフォース・エンターテインメント(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取引金額は2億5600万円。

CRI・ミドルウェアは音声・映像関連分野のミドルウエア製品を幅広く展開する。スマートフォンゲーム、家庭用ゲーム、カラオケなどのエンターテイメント分野から、家電・IoT(モノのインターネット)機器、医療ヘルスケア、さらに近年は車載や監視カメラ向けソリューションといった分野に事業を広げている。

アールフォースが持つネットワーク技術や独自フレームワークによる高い生産性、開発 ノウハウを取り込み、製品・サービスの付加価値向上につなげる。

2番目はイードがメルカリ傘下で自動車関連コミュニティーサイト「CARTUNE」を運営するマイケル(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取引金額は8800万円。イードは自動車総合ニュースサイト「レスポンス」、燃費管理サービス「e燃費」など複数の自動車関連メディアを運営する。「CARTUNE」を取り込み、事業領域の拡大につなげる。

3番目はAppBankがインターネット関連サービスの3bitter(東京都渋谷区)の全株式を取得し子会社化することを決めた案件で、取引金額は約1100万円。3bitterはビーコン(無線標識)によるエリア測定を行い、リアルな場所とコンテンツを結び付けるアプリツール「SWAMP」の提供を主力とする。AppBankは同社を傘下に取り込み、メディア事業の集客と広告単価の向上につなげる。

このほかに、みらいワークスが地方企業への転職情報を発信する日本人材機構(東京 都中央区)からメディア事業の一部を1000万円で取得することを決めた案件があった。