アップルが、第4・第3世代の12.9インチ、第1・第2世代の11インチのiPad Proに対応する専用キーボード「Magic Keyboard」を4月下旬に発売しました。実際に入手して半月以上使ってみると、iPad ProとMagic Keyboardの組み合わせがどんなユーザーに向いているのかが見えてきました。2018年から先行発売されているiPad Pro専用キーボード「Smart Keyboard Folio」との使い分けについても解説したいと思います。

  • iPad Pro専用のMagic Keyboardが発売されて約半月。見えてきた新製品の特徴をレポートします。価格は、11インチiPad Pro用が税別31,800円、12.9インチiPad Pro用が税別37,800円です

Magic Keyboardを半月使って気が付いた7つのポイント

まずは、筆者がMagic Keyboardを約半月使って得た手応えについて、7つの評価のポイントに沿ってお伝えします。

【1】キーボードの打鍵感

とても良いと思います。長時間タイピングを続けても疲れません。筆者は、最新のMacBook Airと16インチMacBook ProのMagic Keyboardを試したことがありますが、それぞれの打鍵感に近いと思います。

  • MacBookシリーズのMagic Keyboardのキータイピングによく似た安定感です

筆者がふだん仕事に使っているのは、薄肉のバタフライ式キーボードのMacBook Airです。自宅で仕事をしていると、家族に「打鍵音がうるさい」と怒られることがよくありましたが、シザー式キーボードのMagic Keyboardを使うようになって注意を受ける回数が減りました。

キーボードの打鍵感には人それぞれの好みがあり、購入を決める際にとても重要な評価のポイントになることは承知です。できれば、Apple Storeの営業が再開したら実機で確認してみることをおすすめします。

【2】LEDバックライト

自宅では夜も電気をつけて仕事をしているので、Magic Keyboardに搭載されたLEDバックライトの恩恵を受ける機会は今はあまりありません。ですが、また以前のように照明を暗くした部屋で開催される記者会見や発表会の取材に出る機会があると、この機能が大いに役に立ってくれると期待しています。

なお、LEDバックライトはiPadOSの設定メニューからオフにできるので、部屋を暗くしてiPad Proで映画を見る時にも安心です。

  • Magic Keyboardは、暗い場所でのタイピング作業に欠かせないLEDバックライトを搭載しています

【3】トラックパッド

Magic Keyboardを使い始めて半月も経つと、iPadのトラックパッドによる操作もすっかり板に付いてきました。MacBookによる仕事も、写真データを加工する時など以外はほとんどトラックパッドを使っているので、たまにiPad ProをSmart Keyboard Folioに付け替えると、トラックパッドがないことに違和感を感じてしまいます。

トラックパッドがあるとiPad Proの画面に指で触ることが減るため、指紋汚れによるストレスからも解放されます。モバイル端末を日々使ううえでの衛生対策にも良いと思います。他のiPadシリーズ向けのトラックパッド付きキーボードもぜひ商品化してほしいと思いました。

  • マルチフィンガージェスチャー操作との相性が良いMagic Keyboardのトラックパッド

【4】カバーとしての堅牢性

Magic Keyboardを装着したiPad Proを外に持ち出して使ったことがほとんどないのですが、Smart Keyboard Folioよりも堅牢性は高く、iPad Proをしっかりと保護してくれそうです。カバーの表面はSmart Keyboard Folioと同じ素材です。

  • Magic KeyboardはiPad Proの保護カバーとしても機能します

【5】ひざ打ちタイピング

Magic Keyboardは、キーボード側のパネルがSmart Keyboard Folioよりもわずかに重く、iPad Proを乗せてフローティングカンチレバーのポジションを固定したあとはグラつかないので、ひざ打ちタイピングも安定します。iPad Pro自体の重さで後ろに倒れることはないと思いますが、何かに手を伸ばす際などはひざの上に置いたiPadに手を添えてゆっくりと体を動かすようにしましょう。

  • 土台となるキーボード側のパネルが安定しているので、ひざ打ちタイピングもスムーズにできます

【6】バッテリーの消耗

Magic Keyboardの電源は、iPad ProからSmart Connectorを経由して給電されます。テキストエディタ以外のアプリを終了し、Magic KeyboardとSmart Keyboard Folioを交互に付け替えながら、30分間にiPad Proのバッテリーがどれほど消耗するかを本稿を書く作業で比べてみました。すると、Magic KeyobardとSmart Keyboard Folioがともに「4%減る」という同じ結果になりました。もう少し使い込んでみないと判断はしづらいところですが、今のところMagic KeyboardがiPad Proのバッテリーを大食いする感じはありません。

  • Magic KeyboardとSmart Keyboard Folioを比べると、iPad Proのバッテリーが減るスピードに変化はありませんでした

【7】重さをどう評価する

12.9インチのiPad ProにMagic Keyboardを装着すると、合わせた質量は約1.34kgになります。2020年モデルの13インチのMacBook Airとほぼ同じ質量です。筆者がふだん仕事に出る時に使っているリュックサック型のバッグに入れて近所を散歩してみましたが、負荷はMacBook Airとほぼ変わらないと思います。Magic KeyboardはiPad Proの保護ケースでもあることを考えれば妥当な重さと言えます。もし多くの荷物があるため、iPadとキーボードの組み合わせをなるべく軽くして出かけたい時にはSmart Keyboard Folioを選ぶとよいでしょう。

Smart Keyboard Folioにも良さがある

Smart Keyboard Folioも2020年モデルのiPad Proの発売に合わせてリニューアルされています。メインカメラの形状が違うため、iPad Proを2018年モデルから買い換えた場合はSmart Keyboard Folioも買い直す必要があります。

  • iPad Pro専用のSmart Keyboard Folio。Magic Keyboardに比べて軽量なのが特徴です

Smart Keyboard Folioもフルサイズのキーボードを搭載していますが、一つひとつのキーサイズが大きく、キーストロークが安定していることやバックライトを設けていることも含めて、文字入力作業の生産性は圧倒的にMagic Keyboardの方が高いと思います。テキスト入力をメインにiPad Proを活用するのであればMagic Keyboardをおすすめしますが、Smart Keyboard Folioは軽いだけではなく、Apple Pencilによる作業との親和性が高いことも特長に挙げられます。

iPad Proを装着しているパネルの背中を、キーボードを搭載する側のパネルの背中に合わせてテーブルの上などに平置きができるので、Apple Pencilで絵を描いたり、静止画データのレタッチなど細かな作業をメインにiPad Proを使う方にはこちらの専用キーボードが向いています。欲を言えば、いずれか一方のキーボードを先に買って、あとから余裕があればもうひとつのキーボードも手に入れたいところ。iPad Proによるクリエイティビティの広がりに実感が沸くと思います。

  • パネルの背面を背中合わせにできるので、平置きにしてApple Pencilによる作業がしやすいこともSmart Keyboard Folioの魅力です

iPad ProとMagic Keyboardの組み合わせをこんな人にもすすめたい

Magic Keyboardの特徴を踏まえたうえで、筆者は以下のような方々にもiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせをおすすめしたいと考えています。

【1】映像コンテンツの編集作業にiPad Proを使いたいクリエーター

先ほど、Apple Pencilを使ってiPad Proでイラストを描く作業などにはSmart Keyboard Folioの方が向いている理由を説明しました。ところが、Adobe Premiere Rushで動画ファイルの編集作業を行う場面では、Magic Keyboardの方が快適に感じました。フローティングカンチレバーにより画面の角度調整が自由にできて、斜めに傾けた画面の方がApple Pencilを使った操作にも向いていたからです。テロップの文字入力にも素速く移れます。ペン入力操作ができる分、MacBookでよりもスピード感が高まる場合もあります。

  • フローティングカンチレバーはiPad Proの画面のポジションをしっかりと固定できるので、映像編集の作業がApple Pencilとキーボードを併用してスムーズにできます

【2】NetflixやAmazonプライム・ビデオなど動画配信サービスのファン

フローティングカンチレバーにiPad Proを装着すると、画面が宙に浮いたようなポジションになります。その効果は映像への没入感が増すだけでなく、内蔵スピーカーで再生する音の切れ味も豊かになります。iPad Proの本体とキーボード側のパネルが離れているため、スピーカーから出力される音の振動がテーブルなどキーボードを置いている面に伝わって不要なノイズを生むことがないからです。ダイアローグ(セリフ)が聞きやすくなり、効果音の立体感がグンと増してきます。

  • iPad Proが宙に浮いているようなポジションになるので、映像コンテンツの没入感も高まります

【3】ビデオカンファレンスの機会が多くあるビジネスパーソン

フローティングカンチレバーにより画面の位置調整が自由にできることと、スピーカー再生による音が聞きやすくなることのメリットは、FaceTimeやZoomによるビデオカンファレンスにも効果を発揮しました。iPad Proにはスタジオグレードのマイクも内蔵されているので、マイク付きのワイヤレスヘッドセットなどを別途用意しなくても、カンファレンスの相手にこちらの声をクリアに届けられます。

  • スタジオグレードのマイクを内蔵するiPad Proの特徴がビデオ会議でも活かせます

iPadシリーズのフラグシップであるiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせは高価な買い物になりますが、直感的なタッチ操作ができ、Apple Pencilによるペン入力に最適化されたアプリとサービスが充実するプラットフォームはほかにありません。Wi-Fi+CellularモデルのiPad Proを選んでSIMカードを装着すれば、場所を選ばずにいつでもiPad Proをネットワークにつないで仕事ができます。

iPadOSの登場により、iPad Proもマルチタスクの操作性がアップして、外部USBストレージからのファイルの読み書きが容易になりました。これからハイエンドクラスのモバイルPCを買い替えたり、買い増す予定がある方は、iPad ProとMagic Keyboardのペアも選択肢に入れて比較検討するべきだと思います。

著者 : 山本敦(やまもとあつし)

ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。