マスクの実物を公開。シャープが作った理由とは?

マイナビニュースでは今回、シャープ広報の協力を得て、生産を開始したばかりのマスクのサンプルを入手しました。大人用サイズ、3層プリーツタイプの白い不織布マスクです。

公式に発表されている大きさは約95×175mm(縦×横)ですが、手元で本体を測ったところ、約90×175mm(同)となりました。今のところ用意されているのは大人用のみですが、将来的には他のサイズの商品化も検討するそうです。

  • シャープがマスクを作る理由

    シャープ製マスクのサンプルの表面(外気にさらされるほう)

  • シャープがマスクを作る理由

    シャープ製マスクのサンプルの裏面(口や鼻に接するほう)

本体はポリプロピレンの不織布で、プリーツを広げると目頭あたりまで伸ばせます。鼻にあたる部分にはポリエチレンで作られたノーズフィッターが入っており、装着時に指で押さえてぴったりフィットさせられます。耳ひも部はポリウレタンとポリエステルでできていて、細くて丸く、伸縮性があります。

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    シャープ製マスクを着けて横から見たところ(初出時、マスクの表裏が逆になっていたので差し替えました)

家電のシャープが作った初めてのマスク。見た目や肌触りはごく普通の家庭用マスクですが、そもそもなぜシャープは生産に乗り出したのか。そこにはどのようないきさつがあったのでしょうか?

同社広報にメールでたずねてみると、今回の取り組みは「企業としての社会貢献」と捉えており、「日本政府の新型コロナウイルス対策に懸ける強い想いと、弊社がクリーンルームを保有している点がマッチして実現した」という返事がありました。これが、政府の要請に応じて2月28日にマスクの生産を決定し、経済産業省の導入支援も受け、わずか1カ月で生産開始にこぎつけるというスピーディーな動きにつながったようです。

マスク生産はシャープとして初めての取り組みですが、生産から販売方法にいたるまでひとつひとつ調査・検討を行い、準備を進めてきました。同社の三重(多気)工場では、主に車載機器や産業用機器、そしてモバイルデバイスなどに使われるディスプレイパネルの開発・製造を行っていますが、ここのクリーンルームにマスク生産機器を新たに導入。詳細は非公開ながら他社メーカー製のものを使っており、当初の生産量は1日15万枚で、今後は50万枚/日への増産を目指しています。

  • シャープがマスクを作る理由

    マスク材料供給部
    (画像提供:シャープ)

生産にあたっては、シャープを傘下に持つ台湾企業・鴻海(ホンハイ)精密工業のサポートもありました。鴻海は既に中国の工場でマスクの生産実績があることから、装置の紹介や生産指導などを受けたといいます。

液晶パネルなどの精密機器を製造する工場は、目に見えないチリやホコリを除去したクリーンな環境であることが必須。シャープのマスク生産ラインはさらに衛生面・品質面にも配慮し、マスクやガーゼ、紙おむつといった衛生製品に関する安全・衛生自主基準を定めている日本衛生材料工業連合会からのアドバイスを受けつつ、各種検査を行っているそうです。

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    マスク生産工程
    (画像提供:シャープ)

シャープの取り組みについては、国内におけるマスクの安定供給の後押しにつながることを期待する声が数多く見受けられますが、一方でCOVID-19の影響は長引くとの見方が強まっています。同社のマスク生産は感染拡大が終息するまでの一時的な対応なのか、それとも今後も事業として継続されるものなのでしょうか。

この点について同社広報にたずねたところ、シャープの戴正呉会長兼社長が4月1日に配信した従業員向けのメッセージの中で「長期にわたって継続できる事業にもなるものと考えている」という言及があったことを明らかにしました。欧米やインド、中国でのマスク生産を早期に進めることを検討しているほか、「マスクに留まらず、健康関連分野へと事業の幅を広げていきたい」とも述べているそうです。

各地域でのマスクの生産規模や生産開始時期、国内で生産しているものと同じものかどうかについては明らかにしていませんが、欧州の場合、ポーランドにある液晶テレビ工場のクリーンルームで生産するものと見られます。シャープのマスクが、猛威を振るうCOVID-19から人々を守る日も近いのかもしれません。