PJSのシーズン減少はシーンの縮小ではない

――先日、2020年に発表されたPJSスケジュールでは、年間のシーズン数が3つから2つに変更していました。改めて経緯を教えてください。

井上:日本ではPGSの予選をPJSで行うことが決まったので、グローバルスケジュールに合わせる形で2シーズンになりました。

これに対して、コミュニティから「縮小しているのではないか」という反応があることは、DMM GAMESさんから伺っています。

ただ、この決定は、サードパーティーオーガナイザーさんの試合を増やすことを含めて日程の調整が入ったもの。世界大会への出場チームをリーグから選出することは変わっていないので、リーグの価値も変わっていない認識です。

――これまで全日程がオフライン形式だった上位リーグの「Grade1」が、各フェーズの最終日を除いてオンラインになったことも、コミュニティで話題になりました。
※インタビュー実施後、新型コロナウイルスの影響によりDay3はオンラインで開催されることが決定しました。

井上:これは主に、オフライン会場に集まって試合する選手への負担を考慮しての判断です。いままでアメリカや中国などの大きな国でも、1つの会場に選手が集まって試合に参加していました。ですが、遠方からの移動や時間の拘束は、選手にとって大きな負担。参加の困難さを生み出しているのではないか、という意見が出ていたんです。

そのため、グローバルの方針で、各地域の予選はオフラインだけでなくオンラインでも開催できるようになりました。こうした流れのなかで、PJSでも同様に取り組んでいくことが決まり、オンライン形式が増えたわけです。

――なるほど。日本でも64名の選手が毎週末、東京へ移動するのはハードでしたから、選手の負担軽減になりますね。

井上:一番の目的は、大会参加へのハードルを下げることにあります。全日程オフラインでの開催だと、それだけで参加できるプレイヤーが限られてしまう。これを取っ払うことで、参加できる選手やチームの数が増えるのではないかと考えています。

――これも参加プレイヤーの裾野を広げていく方針のもとで、行われた判断の1つだったわけですね。

井上:その通りです。やはりeスポーツシーンは、新しい選手やチームがどんどん入ってきて、激しい競争のなかで切磋琢磨するピラミッド構造が理想的なはず。これまでは限られた選手やチームの大会が多かったと思いますが、これからのシーンの成長を阻害する要因になりうる危機感から、これらの方針が決定しました。

過去に発表された『PUBG』eスポーツシーンの構想は?

――2018年の東京ゲームショウで行われたカンファレンスで、『PUBG』eスポーツシーンの方針が発表されていました。その後、方針が変わった部分も含め、改めてお話を伺えればと思います。

井上:当時、日本でいろいろと取り組んでいきたいという意気込みをお話しさせていただいたのですが、トライアンドエラーを繰り返しながら検討していく会社の体制や、グローバル方針の変化もあり、なかなか発表通りにはいきませんでした。DMM GAMESさんとお話ししながら、少しずつ方向性を探ってきた形です。

――発表の1つに、「Tierシステム」(※)の構想がありました。これはまだ実現していませんが、サードパーティー大会の開催を積極的にサポートしていく形と、方向性は近いのでしょうか。

井上:はい。コミュニティを活性化していくための、1つのやり方としてTier制を提唱したのですが、大きな方向性は変わっていません。日本でやろうとしていたことが、グローバル全体での方針になっているイメージです。

  • 2018年の東京ゲームショウで発表されたスライドの一部
    (※)PJSを頂点として、PUBG Corp.とDMM GAMESの定める基準を満たした大会にポイントを付与し、国内の統一ランキングを作成する制度が予告されていた

――4人チームのSQUADモード以外に、SOLO(1人)やDUO(2人)の公認大会を開催していきたいというお話もありました。

井上:SOLOやDUOの大会の位置付けとして考えているのが、テクノブラッドさんの運営する「TechnoBlood CUP」。2020年もぜひ開催したいのですが、まだまだ改善したい点がたくさんある状況です。会場に来て試合をして帰るだけではなく、もっとコミュニティに寄り添ったイベントにしていきたいなと。そのために、テクノブラッドさんと一緒に検討している段階です。

「TechnoBlood CUP」は、一般の方からPJSに出場するプロ選手まで、幅広いプレイヤーの交流の場にしていきたいですし、会場になる地方のeスポーツ施設の活性化にもつなげていきたいと思っています。

――2018年に発表した構想は、形を変えつつ実現に向かって進んでいるわけですね。

井上:ええ、こうしたイベントがきちんとコミュニティとして成り立つ方向性が見えれば、開発メンバーを呼んで、参加者の皆さんからアップデートに対する意見を吸い上げるなどの試みも行っていきたいと考えています。