Microsoftは米国時間2020年1月30日、UWP(Universal Windows Platform)アプリに広告を配信して開発者や企業が利益を得るための「Microsoft Ad Monetization platform」をシャットダウンすることを、開発者向けソーシャルサイトに投稿した。実行日は米国時間2020年6月1日を予定している。

  • UWPアプリ以外にもエンターテイメント(映画や音楽)なども提供する「Microsoft Store」

どうもMicrosoft Storeの雲行きが怪しい。ここでいうMicrosoft Storeは、Surface Proなどを販売するショップやサイトではなく、UWPアプリ配信プラットフォームを指す。スマートフォンライクにアプリをWindows 10にインストールするプラットフォームとして登場した「Windows Store(現Microsoft Store)」は現在、映画や音楽の販売も行っている。

プラットフォームの魅力は基盤となるOSの普及が欠かせない。Microsoftの公式発表によれば、Windows 10デバイスは9億台(間もなく10億台に達するというウワサもある)。一方で同様のアプリストアを持つiPhoneの月間アクティブユーザー数は約23億人(*1)、Androidの月間アクティブユーザー数は約25億人(*2)。数値が多少前後したとしても、Windows 10と各スマートフォンOSには倍以上の開きがある。

*1:2018年12月末時点におけるインストールベース出荷台数の14億台に、2019年第1四半期の9億台を合算 *2:2019年5月 Google I/O発表数値

Windows 10のプラットフォームとして、有償で購入するほど魅力的なUWPアプリがない、Windows 10でUWPアプリを必要としないビジネスユーザーが圧倒的――など、さまざまな理由が思い浮かぶ。それでも、Microsoftアカウントにひも付けて、別のPCを新たに使用するときに「マイライブラリ」からライセンスを所有しているUWPアプリを、ボタン1つでインストールできるのは実に便利だ。正直、旧来のセットアップウィザードを見ると少々げんなりしてしまう。

Microsoft Storeはビジネスユーザー向けに「Microsoft Store for Business」、教育機関向けに「Microsoft Store for Education」と別のラインナップを用意しているが、Mary Jo Foley氏が米国時間2020年1月10日に寄稿したZDNetの記事では、両者が閉鎖する可能性があると報じている。真偽はともかく、実行するとなればMicrosoft Store全体の規模縮小だ。さらにうがった見方をすれば、Microsoftは収益を生まないMicrosoft Storeを段階的に縮小し、管理コストが安価なアプリ提供システムに移行する可能性も拭い切れない。

以前から筆者は、Windows上で使用するアプリのバージョンアップシステムに不満を感じている。例えばLinuxでは、aptコマンドによって更新パッケージの入手と展開を自動化でき、手間が少ない。Windows環境でも、ChocolateyScoopといったコマンドラインでアプリケーションを管理できるパッケージマネージャーは存在するのだが、登録パッケージが開発者寄りのため万人にはおすすめしにくい。

  • ChocolateyはGoogle Chromeなどエンドユーザーが使用するアプリもリストに並ぶ

MicrosoftがMicrosoft Storeをこのまま継続するのか、縮小するのか、それとも代替プラットフォームを新たに構築して移行するのか。Microsoftの判断がユーザーの利便性を大きく左右する。

阿久津良和(Cactus)