コーヒー好きが高じて喫茶店のオーナーになり、本まで出した家電流通コンサルタントの得平司氏が、コーヒーメーカーの正しい選び方を紹介します。美味しいコーヒーを飲むためには努力を惜しまない人だけに、気になる製品を1台ずつ実際に購入し、歯に衣着せずに評価していきますよ! 今回は、焙煎したコーヒー豆を挽くところから楽しめるミル付きのコーヒーメーカーを試します。まずはデカフェ豆にも対応したパナソニックの沸騰浄水コーヒーメーカー「NC-A57」です。

  • パナソニックの沸騰浄水コーヒーメーカー「NC-A57」

    NC-A57。今回も自腹購入のレビューです!

1台で豆の粉砕から抽出まで一気通貫

コーヒーの美味しさは、豆の品質、抽出、飲み方などによって変わります。特にコーヒー豆を挽いて粉にするときは、粉の粒のキメをそろえることと、微粉の量を抑えることです。これは抽出プロセス全体の中でも、大事なポイントの1つになります。

コーヒー豆を挽く機器は、ミル(mill)やグラインダー(grinder)といいます。厳密な呼び分けはないのですが、家庭用がミル、業務用がグラインダーと呼ばれることが多いようです。ミルを内蔵するコーヒーメーカーは、1台で豆の粉砕から抽出までを一気に行えるのがメリット。パナソニックのNC-A57は、豆からはもちろん、粉からも淹れられるので、コーヒー豆をどんな状態で入手しても大丈夫です。

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    NC-A57と得平氏

  • 得平司(とくひらつかさ)
    フワッティ・カフェ代表。2015年、東京・千駄木団子坂下にフワッティ・カフェをオープンする。世界から集めた10種類程度のコーヒー豆を自家焙煎し、注文を受けてから1杯1杯コーヒー豆を挽き、ハンドドリップで提供している。本業は家電流通コンサルタントであり、株式会社クロスの代表。コーヒー文化推進のため、本連載ではコーヒーメーカーを1台ずつレビューして、そのマシンで美味しく淹れるコツや、自分に合った製品の選び方を分析。

NC-A57のスペック

  • 発売日:2018年9月
  • ミル:搭載(最大使用容量40g)
  • フィルター:ペーパーフィルター
  • 最大使用水量:670mL
  • 一度に淹れられるカップ数:5カップ
  • 本体サイズ:W220×D245×H345mm
  • 重さ:約3.0kg
  • 本体カラー:ブラック(-K)
  • パナソニックの沸騰浄水コーヒーメーカー「NC-A57」

    2019年11月25日の実売価格は税込18,436円(税別16,760円)。これまで取り上げた中で一番高額!

NC-A57には、内蔵ミルで豆を挽くときに、粗さを調整するためのメッシュフィルターが2種類付属します。中細挽き用が茶色、粗挽き用が緑色です。なお、カフェインレスのデカフェ豆を使うときは、中細挽き用にします。

抽出コースにはマイルドとリッチが用意されており、豆の挽き方と抽出コースを組み合わせて、コーヒーの淹れ方を調整できます。

得平:コクと苦味のあるブレンディな味には中細挽き用を使い、マイルドコースに設定します。アイスコーヒーやカフェオレも中細挽き用で、コースはリッチを選びます。一方、渋みが少なく後味の良いマイルドなコーヒーにしたいときは、緑色の粗挽き用がよいでしょう。アメリカンコーヒーは、粗挽き用でマイルドコース、スペシャルティコーヒーは粗挽き用でリッチコースがオススメですね。

メッシュフィルターは、本体の前面からペーパーフィルターをセットするバスケットを手前に引き、豆容器下部にパチっとはめるようにセットします。

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    本体にメッシュフィルターを装着したところ。写真の茶色いメッシュフィルターは中細挽き用で、緑色の粗挽き用も付属。付け替えて使用します

続いて、水容器(給水タンク)に水を入れて、ガラス容器(サーバー)と合わせて本体にセット、電源を入れます。NC-A57に限らず、コーヒーメーカーの水容器やガラス容器などは、初めて使うときは必ず水洗いしてください。

NC-A57の水容器には、ホットとアイスの目盛りに加え、マグカップサイズ用の目盛りも付いています。また、水道水で淹れるときは、水容器の上部に活性炭フィルターをセットします。

得平:目盛りが内側になるので、水容器を外さないと入れる水の量を測れません。ただしお手入れを考えると、水容器を外せるのはメリットでもあります。

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    目盛りが付いていて見やすい水容器(水タンク)。活性炭フィルターはカルキを約90%カットするそうです

抽出したコーヒーが落ちてたまるガラス容器(サーバー)のフタにも注目。このフタには、交換不要のミネラルフィルターが付いており、「酸味調節レバー」を使って、ソフトとストレートを切り替えられます。ソフトに合わせると、抽出したコーヒーがミネラルフィルターを通過することによって、酸味が抑えられます。ストレートは、ミネラルフィルターを通しません。

得平:風味が落ちてきた豆は酸味がきつくなります。豆をまとめて購入して何日もかけて飲んでいると、最後のほうは酸味の美味しさが損なわれがちです。NC-A57なら、豆をまとめて購入しても、ミネラルフィルターを「ソフト」にして淹れることで、酸味の劣化に伴う風味の低下をある程度は避けられそうです。逆に、焙煎したばかりの豆を調達したときは、酸味の美味しさも楽しみたいもの。その場合はミネラルフィルターを「ストレート」に合わせて、ミネラルフィルターをスルーして淹れましょう。

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    ガラス容器(サーバー)のフタにはミネラルフィルターを搭載。ここで酸味を調整できます

豆、投入!

本体上部の豆容器フタを開け、豆を投入します。まずは2杯分を淹れてみましょう。計量スプーンでは2杯と1/4杯です。一応、計量スプーンには1/4ごとの目盛りが付いていますが、ちょっと分かりにくいですね。

豆容器フタはシャワードームになっており、ドーム内やミルに飛び散ったコーヒー豆は、ドリップのときに自動で洗われる仕組みになっています。

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    本体上部の豆容器フタを開け、豆を投入!

今回は「タンザニア オルディアン(Oldeani) AA++」の豆を使いました。

得平:この豆はコクと甘みが強く、フルーティな味わいが特徴のとても良い豆です。別名の「キリマンジャロ」のほうが有名ですね。

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    豆を入れました。早くも香りが漂ってきます

コーヒーをドリップする前に、メッシュフィルターの中細挽きと粗挽きでどのくらい粉の大きさが変わるか、コーヒー豆を挽き比べました。

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    中細挽き(左)と粗挽き(右)でコーヒー豆を挽き比べ。左の中細挽きのほうが、粒が細かくなっていることが分かるでしょうか

得平:粉を均一に挽くには、カッター式より臼式が有利です。NC-A57はカッター式ですが、比較的均一に挽けていて優秀だと思います。微粉がやや多く出るのはカッター式の宿命。この微粉による雑味は、ペーパーフィルターで抑えられます。気になったのは、使わないメッシュフィルターをしまう場所が本体にないこと。なくしてしまいそうなので、本体に収納場所を設けてほしかったところ。

さあ、抽出!

せっかくの良い豆なので、粗挽きしてリッチコースで淹れました。

NC-A57の操作部は、本体右下にボタンが縦に並ぶデザイン。コースを選び、「豆」または「粉」のボタンを押すとスタートします。ボタンは一番下の「保温/取消」が一番大きいため、スタートのタイミングで「保温/取消」を押したくなる……。このあたりは慣れでしょう。

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    抽出中の様子。思っていたより、ゆっくりと抽出されてきます

抽出されたコーヒーは、ガラス容器(サーバー)に入る直前で86℃前後。ガラス容器内では82℃前後でした。淹れ終わるとピーピーピーと電子音が鳴り、自動で保温に移行します。なお、保温は2時間で切れます。トータルの抽出時間は、豆を挽くところから数えて、2杯分が約7分半、5杯分が約10分半と、やや時間がかかりました。

得平:抽出が終わったときのお知らせ音は、電子音ではなくもっと気の利いた音にすればよかったのに。ピーピーピーでは、コーヒーを飲むときのわくわく感が盛り上がりません。

淹れ方を変えれば、味の違いが分かるように

ミル挽きの粗さや抽出コースを変えて、何度か淹れてみました。

リッチテイストでミネラルフィルターをストレートにすると、濃度が「1.32」と濃いめの仕上がり。スッキリした中にも、コーヒーのほどよい苦味と酸味が楽しめます。また、マイルドコースでミネラルフィルターをソフトにすると、濃度は「1.17」に。酸味が確かに抑えられ、コクが感じられました。

得平:ミネラルフィルターは、コーヒー豆をこだわって用意する人にとっては、味がマイルドになりすぎると感じるかもしれません。好みの分かれるところです。NC-A57は、メッシュフィルター、ミネラルフィルター、活性炭フィルター、ペーパーフィルターと、いくつものフィルターを使うのが特徴のひとつ。味を調整するパーツが多く、味の違いを楽しめる一方で、最初は少し分かりづらいかもしれません。ただ、淹れ方で味がちゃんと変わるので、ビギナーから中級者が本格的なコーヒーを気軽に楽しむにはとても良い製品に仕上がっています。

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    テイスティング。「値段だけのことはある」と得平氏。ほめ言葉ですよ!

カフェインレスのデカフェ豆も

デカフェ豆コースも試しました。蒸らしと抽出のプログラムをデカフェ豆に最適化しており、デカフェ豆でもコーヒーのコクが楽しめるコースです。

基本的にデカフェ豆は、カフェインと一緒にフレーバーやコクが飛んでしまうため、風味が落ちます。今回も、半信半疑を抱えてのテストでした。

豆はタリーズの「オーガニック&カフェインレス」を使用。エチオピアのモカ(MOCHA)をベースに、マウンテンウォーターという化学薬品を使わない製法で、香りとフルーティな風味を残しています。

得平:結論から言うと、想像していたよりも風味がしっかり残っていました。今まで飲んだデカフェコーヒーよりずっと美味しい。コーヒーは好きだけれど、カフェインは減らしたい、減らさないとならないといった人には、うれしい機能です。

総合評価では、味の再現性を4.5としました。マイルドコースやミネラルフィルターのソフト設定は、コーヒーが飲みやすくなりますが、一方でコーヒーの個性も抑えてしまいます。個性を出したいときは、豆を少し多めに、濃いめに淹れるとよさそうです。

得平:香りの評価は「4」になっていますが、淹れている間はけっこう香ります。抽出中の香りを重視する人なら、4.5と見てもよいでしょう。

NC-A57は、ビギナーから中級者が本格的なコーヒーを気軽に楽しむには、とても優れた仕上がりと感じました。味の違いが分かるようになりたい人にもオススメです。

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諸山泰三

諸山泰三(もろやまたいぞう)
PC雑誌の編集者を経て、家電流通専門誌の編集者となり、現在は家電流通誌やマイナビニュース・デジタルなどのネット媒体で執筆。カフェで原稿を書くことも多く、いろいろなカフェやコーヒーメーカーを体験した。得平がフワッティ・カフェ名義で監修した「ツウになる!コーヒーの教本」(秀和システム刊)にも協力。本連載では評価のアシスタントと執筆を担当。