カシオはビューティテック分野の事業展開を進めており、化粧品メーカーのコーセーと協業しています。第一弾の取り組みは、ネイルプリンターと関連サービスです。コーセーが2019年12月に東京・銀座にオープンした体験型ストア「Maison KOSÉ(メゾンコーセー)」に、カシオのネイルプリンターを5台設置し、来店者1人につき指1本の無料ネイル体験とアンケート調査を実施。今までにないネイルサービスのニーズと情報の収集を目指すとのことで、体験会に参加してきました。

大人気のネイルプリンター、そのお手並みは?

  • メゾンコーセーの1階にある体験スペース

ということで、普段は長蛇の列ができるというネイルプリンターを体験です。操作はすべて、ネイルプリンターとつながっているタブレットで行います。ネイルアートが印刷されたカードから好きな柄を選んで、カードのQRコードをタブレットのカメラで読み込んで登録し、ネイルプリンターに指を1本ずつ差し込んで爪の形を認識させてプリント……というのが大まかな流れです。

下準備として、爪の形をネイルプリンターに認識させる白いネイルカラー(コーセーのNAILHOLIC)と、ネイルプリンターのインクを定着させるプレプリコートを塗ります。インクは化粧品登録済みの安全な製品ですが、水溶性で水に溶けやすいため、プリント後は必ずトップコートを塗って保護します。なお、今回は複数の指(爪)にプリントしていますが、一般の体験は指1本となります。

  • 1. ベースの白いマニキュアをムラなく2~3度塗り、約5分乾燥。ネイルドライヤーも設置されています

筆者は店頭と同じものを事前に塗ってきましたが、必要なアイテムは店頭にすべてそろっているのでご安心を。画像認識(爪の部分をネイルプリンターが認識)の基準になるので、なるべくはみ出さないように塗るといいですよ(タブレット上での修正も可能)。

  1. プレプリコートを塗り、約3分乾燥。ここでもネイルドライヤーが使えます
  • 3. デザインのQRコードをタブレットに読み込ませます

  • 筆者は「Tarto」のトロピカル柄をセレクト。メゾンコーセー1階では3種の「Tarto」柄、2階では3種の「JILL STUART」柄が選べます

  • 5. プリントする指を選択

  • 6. ネイルプリンターに指を入れ、タブレット画面で指の位置を確認。ネイルプリンターの中で指を乗せたアダプターを押して固定します

  • 7. プレビューでプリント範囲を確認

ノズルが一巡すると完成。指1本15秒の速さに、撮影したマイナビニュース・デジタルの林編集長も圧倒されっぱなし……(水に溶けるインクなので、失敗してもこの段階で拭き取ればOK)

  • 8. トップコートで全体をカバーして完成

凹凸がなければジェルネイルの上にもプリントが可能。ベースに白いジェルを塗っておけば何度も楽しめそうです。

ネイルプリンターで印刷した品質はさすがの美しさ。影になった部分に若干の白地は見えるものの、よい感じの仕上がりです。

  • ネイルプリンターの本体はナチュラル系デザイン。コーセーのブランドイメージやメゾンコーセーのコンセプトを参考にしたオリジナルデザインとのことです。余談ですが、カシオが最初に作った試作機は、まったく違う「なんだこれ?」的なデザインだったとか……

このネイルプリンターには、カシオがデジタルカメラとプリンターで培ってきた技術が応用されています。例えば、デジタルカメラの画像認識や画像補整といった画像処理技術です。ネイルプリンター本体の内部カメラで撮影した爪の形を認識させ、爪の湾曲や角度を計算した上で、基本の柄に部分圧縮や輪郭補正を加えて調整しています。この処理を行うため、あらかじめ1,000種類以上の形と湾曲の例が学習させてあるのだとか。

プリンターの濃度補正もそうです。こちらも爪の根元の湾曲に合わせて柄を調整し、色が薄くなりやすい端にまで均一に印刷できるよう調整しています。画像解析・認識、印字という、プリンター設計技術の中では特に印字品質にこだわっているため、既存の類似製品では難しい高精細な表現が可能です。

カシオ計算機とコーセーならではの新しい発明を

今回の取り組みに、カシオのビューティテック事業の方向性が詰まっていると語ったのは、カシオ計算機 執行役員の井口敏之氏。これまでの資産を生かしたハードウェア開発やユーザビリティ向上のためには、安心安全で高品質な化粧品のノウハウも不可欠になると考えた、とも。

  • カシオ計算機の井口敏之氏

「そこで、美の知見や化粧品の価格研究などをお持ちのコーセーさんと協業することになりました。大きな狙いは、美容のパーソナライズです。今回は、人の気持ちやイベントごとに、個人の価値観や個性を発信する場として『爪』をとらえた提案です。コンテンツとメディア、印刷品質の面でこだわったサービスにできればと思います」(井口氏)

ネイルプリンターのデモ機は順次、ネイルサロンや化粧品売り場、イベント会場などにも増やしてフィードバックを募っていきます。一つのゴールとして、爪の下準備なしで印刷できる仕組みを完成させ、TPOに合わせたより気軽なネイル体験を提供したいとも語りました。

また、ビューティテック分野では、センシング技術による皮膚ガン検出法を応用した肌診断ツールや、ノズルなどプリント技術を活用した化粧材の開発など、さまざまな方向での展開が考えられています。カシオとコーセー、お互いのニーズを満たすことや課題解決を進め、「この2社だからこそ」のサービスを提供していく計画です。

美の殿堂でネイルプリンター体験を

このネイルプリンターを体験できるメゾンコーセーは、コーセーが手がける多様なブランドを横断的にセレクトして、美容に関する新しい体験「美容アトラクション」を提供する初の直営コンセプトショップです。コーセー執行役員の原谷美典氏は「お客さまとのコミュニケーションにネットやデジタルツールを活用し、購買データや行動データを反映させることで、よりよい体験価値を提供できる場にしたいと考えています」と紹介しました。

  • コーセーの原谷美典氏

ネイルプリンターはまさにその体験の一つ。印刷は指1本が約15秒、下準備と乾燥を含めても15分で終わるので、お買い物ついでにぜひご自身の指で試してみてください。ベースの白マニキュア(KOSÉ NAILHOLIC WT005)を塗った状態ならより簡単。男性のみなさんも「女性のためのお店でしょ」なんて思わずに、カシオの技術を(体験はできなくても)見に行ってみては。「百聞は一見にしかず」を実感できると思いますよ。また、女性の友人や彼女と一緒に行くのもおすすめ。きっと喜んでもらえるでしょう。

  • メゾンコーセーのコンセプトは「Find Your Own Beauty」

メゾンコーセーでは、ここでしか出会えないブランド「Tarte」の試用・購入が可能なほか、2階のカウンセリングスペースではスキンケアやベースカラー診断ができる不思議な鏡「Snow Beauty Mirror」の体験も。壁面を彩る巨大サイネージや、コーセーの全ブランドが並んだディスプレイはかなり壮観なので、ネイルブリンター体験とあわせて楽しんでみてくださいね。