一人称視点のシューティング「FPS」ゲームでは、「音」をしっかり聴き分けられるか否かが勝敗を分けます。プレイ中は、銃声や足音から敵の場所を予測して立ち回らなければなりません。ですが、音の聴こえかたは使うイヤホンによって大きく変わります。

そこで、バトルロイヤルゲーム『PUBG MOBILE』の日本代表選手としてアジア全域大会4位の成績を残したことのある筆者が、価格別にいくつかのイヤホンをピックアップ。実際に、モバイル端末のゲームプレイでどのような違いがあるのか聴き比べてみました。

今回は30,000円~50,000円のイヤホンをトライ。筆者は最近この価格帯のモデルを使うようになりました。気軽に手を出せる金額ではないかもしれませんが、モバイルゲームでも勝ちにこだわりたい人にとっては、チェックして損はないと思います。なお、取りあげた各製品の価格は2019年12月時点のものです。

  • ハイスペックイヤホンで『PUBG MOBILE』をプレイし、ドン勝を狙いにいきました

低音が力強いSHUREの「SE535」

まずは、SHUREの「SE535」を試してみましょう。市場価格は50,000円前後。3基の高精度ドライバー(シングルツイーター+ダブルウーハー)を搭載していることからも、豊かなサウンド体験を提供してくれそうです。

  • SHUREの「SE535」

さっそくイヤホンをセットして『PUBG MOBILE』をプレイ。SE535を通じて入ってくる『PUBG MOBILE』のサウンドは、低音がズッシリと強く響きます。銃声を中心に低音域の伸びがよく、それでいて透き通った音が入ってきます。

音源の精度も高く、遠い場所からの銃声も比較的ピンポイントで判断可能。ゲーム内に登場する車の音も聞きやすく、距離感や位置もかなり正確に判断できました。わずかな音でも耳に届く性能も魅力です。

「車両が遠ざかって音が消えた」のか、「停車してエンジン音が消えた」のか、といった音の違いまではっきりとわかりました。

音を聴き分けやすい「ATH-E70」

次は、オーディオテクニカの「ATH-E70」。市場価格は52,000円前後です。こちらは、低・中・高の3基の「バランスド・アーマチュアドライバー(BA)」を搭載し、全音域をカバー。どんなゲームサウンド体験を提供してくれるのでしょうか。

  • オーディオテクニカの「ATH-E70」

オーディオテクニカのイヤホンでは、26,000円程度の「ATH-E50」を使って『PUBG MOBILE』をプレイしたことがありますが、E50と比べてE70は、全体的に音の圧を強く感じました。ですが、低音だけが主張するわけではありません。3基のドライバーがそれぞれの役割を果たしているからか、全体的にクリアな音質で、一つひとつの音が聴きとりやすい印象です。

『PUBG MOBILE』のプレイ中、銃声と車両の音が同時に聴こえたとしても、明らかな音程の違いでそれぞれを判別できます。音源の精度も申し分なく、どこで銃声が鳴ったのか、ゲーム内で200m以上離れた場所でも把握できました。周囲の音に対する遮音性も問題なく、ゲームへの没入感を高めてくれます。

低音が強いながらバランスのとれた「AM Pro20」

続いて手に取ったのは、テックウインドが販売するWESTONEの「AM Pro20」です。開放型のアンビエントインイヤーで、低音域と高音域に2基のバランスド・アーマチュア・ドライバーを搭載。市場価格は30,000円前後です。

  • WESTONEの「AM Pro20」

AM Pro20で『PUBG MOBILE』をプレイしてみると、低音域の強さがやや目立つ印象ですが、音質はかなりクリア。音のバランスがとれるイヤホンといえます。

ゲーム中は、車両音、銃声、足音など、複数の音が同時に発生することがあります。「AM Pro20」では、そのような環境下でも、それぞれの音がかき消されることなく独立して聴こえました。

遮音性については、外部の音を感じられるアンビエント型でありながら、周波数レスポンスを下げることなく、周囲の環境音とサウンドの信号をつなぐ「SLEDテクノロジー」が、余計なノイズをカットしてくれるので、ゲームの集中を妨げる要因にはならないでしょう。ゲーム音が外に漏れる心配もなさそうです。

銃声や金属音が主張する「AMBEO Smart Headset」

ゼンハイザーの「AMBEO Smart Headset」は、iOSデバイス(iOS 10.3.3以降)でバイノーラル録音が可能なヘッドセットです。市場価格は35,000円前後。接続はLightningケーブルを使用します。

  • ゼンハイザーの「AMBEO Smart Headset」

『PUBG MOBILE』をプレイすると、高音が強く、銃声や金属音が主張するように感じました。低音域はあまり響かない印象です。たとえば、車両に乗ったときのエンジン音も高めに聴こえるので、低音の響きが苦手な人にとってはフィットする一品かもしれません。遠くの距離の銃声は音質が柔らかく感じられました。

また、ゲーム内で武器に「サプレッサー」を装着すると、敵から発見されにくくなるのですが、このイヤホンでは高音域の音が非常に強いことから、ほかのイヤホンに比べて「サプレッサー」の音がよく聴こえました。

3段階で遮音性のレベルを調整できる「Transparent Hearing」を搭載しており、外部の音も適度に取り入れられるようになっています。実際にプレイした限りでは、そこまで外部音は気になりませんでした。

丸みを帯びた音の「IE 80 S」

同じくゼンハイザーの「IE 80 S」は、ステンレススチール製パーツを使用したインダストリアルハウジングデザインによる設計のイヤホン。ネオジウムマグネットを採用したダイナミックスピーカーシステムを採用しています。市場価格は36,000円前後。

  • ゼンハイザー「IE 80 S」

独特のフォルムをしたIE 80 Sは、音質もちょっとユニーク。少しこもったような、丸みを帯びた音が特徴的です。だからといって、音の精度に問題があるかというとそうではありません。『PUBG MOBILE』で重要な、銃声のポイントもしっかりと把握できました。ただ、音量を大きめに設定しておかないと、ゲーム内の音が遠く聴こえてしまうため、慣れが必要でしょう。

遮音性については、会話レベル以上であればかすかに耳に音が入ってきたこともあり、大音量のプレイでは外にも音が漏れてしまうかもしれません。

音の聴き分けで有利に立ち回れるハイエンドイヤホン

さまざまなイヤホンを聞き比べてみることで、価格帯によってかなり音質の違いがあることがわかりましたが、同じ価格帯でもその性格は違います。とはいえ、「価格が高い」ことにはやはり理由があるのです。実際に、30,000円から50,000円前後のモデルは、『PUBG MOBILE』のさまざまな音を、それぞれ聴きわけつつ、正確に把握できるため、ゲームをかなり有利に立ち回れました。

一瞬の判断が勝負を左右するFPSやTPSのゲームでは、やはりイヤホンは重要な役割を担います。今回紹介したイヤホンは、手軽に買えるものではありませんが、FPSの勝ちにこだわる人は、一度試してほしいですね。