「The Room」は2019年7月にデビューしたばかりの最新仕様。最新だけに、他の配置で見られるネガを上手につぶしながら広いスペースを確保することに成功している。空間利用という点では、実に無駄がない。

ただし、777-300ERの胴体径があるから実現できた、という一面もありそうだ。もっと胴体径が小さい787で同じことをやろうとすると、1-2-1列を維持すれば、区画の幅が狭くなってしまう。もっとも、ANAの長距離国際線は、今は777-300ER、将来は777Xがフラッグシップだから、そんな心配はいらないかも。

「The Room」では、前後向かい合わせ配置とオットマン部のオーバーラップによって、ファーストクラスに迫る最大幅を確保した点が最大の特徴になっている。ただし、向かい合う2席でオットマン部のスペースを分け合っているために幅が狭く、それがファーストクラスとの違い。

つまり占有スペースが台形になるわけで、寝る時に使用するマットやブランケットも、それに合わせた形状になっているのが面白い。そして、対面席から突き出てきたオットマン部の上にテーブルや収納スペースを設けて、有効活用している。AC電源もそこにあるのはうまい配置。

  • 「The Room」のシートのモニタと机

フルフラットにして寝てみると、身長169cmの筆者は真っ直ぐの向きで寝てちょうどいい、という按配。もっと背の高い人になると、少し斜め向きに寝る必要がありそうだ。それも見越して1人当たりの幅を広くとっているのだろうか

いずれにせよ、幅方向の余裕が大きいので、感覚的には「広い」と感じる。身体の幅と比べて余裕があるので、ブランケットなどを空きスペースに積んでおけるのも便利だ。しかも扉を閉めれば「個室」になるのだから、これは人気が出るだろう。

気になったのは、前方から引き出して、さらに左に展開するテーブル。展開した状態でノートPCを置いて作業していると、キーを叩いたときに少しぐらぐらした。構造上、致し方ない部分ではあるし、実害が生じるほどではないけれど。

なお、「The Room」のIFEコントローラもタッチスクリーン式で、フライトマップの表示が可能。あと、機首に設けられた2ヶ所のカメラの画質が良かったところが印象に残っている。

  • The Room」のタッチスクリーン式IFEコントローラ

座るのは一人だけなのに、オーディオのコネクタが左右に付いていたのは、幅の広さを考慮したためだろうか? (報道公開のときは見逃していた)

なかなか「ありとあらゆる要求を満足できる配置・構造」というのは実現できないもので、ここで取り上げた3種類にもそれぞれ、一長一短がある。というのが、実際に利用してみての感想だった。

とはいえ、やはり最新鋭の「The Room」には後発の利があるなと感じた。こうなると、国際線のフラッグシップが将来的に777-300ERからA350-1000に代替わりするJALが、どういう手を打ってくるかが興味あるところだ。そして、未経験のリバースヘリンボーン配置も試してみなければなるまい、という気になってくるのだが、さてどうしたものだろうか。