AMDは12月12日より、Radeon RX 5500 XTの発売を開始した。10月にRadeon RX 5500シリーズのアナウンスがあってから、随分後ろにずれた気がするが、やっと製品が登場したわけだ。そんな訳で性能評価を行ってみたいと思う。ちなみに今回は併せて、GeForce GTX 1650 Superの性能も確認してみた。こちらのレビューの際には評価機が間に合わなかったのだが、今回のRadeon RX 5500 XTは(後述するが)GeForce GTX 1650 Superが競合と位置付けられている。なのでまとめて確認を行ってみた。
XTとは言うけれど
さて、まず最初にRadeon RX 5500 XTについて。こちら(Photo01)がRadeon RX 5500 XTのスペックである。一方こちらがRadeon RX 5500 Seriesのスペックである。さすがに「何が違うの」と聞いたところ、要するに10月に発表されたものはOEM向けの最大スペックで、実際にはこれを下回る(動作周波数が低い、メモリ容量8GB品が無いなど)ものが予定されているらしい。ただこれはあくまでOEM向けで、直接リテールチャネルに流れる可能性は低い模様だ。一方リテール向けとなるのがRadeon RX 5500 XTで、こちらはPhoto01のスペックが最低限(実際にはOC製品が多く出回る事になるだろう)になるという違いがある(というか、それしか違いが無い)という返事であった。チップそのものはどちらも一緒だそうで、なんというかちょっと判りにくい。
さて、10月の発表の際にはGeForce GTX 1650との性能比較が示されたが、その後NVIDIAがGeForce GTX 1650 Superをリリースしたことに合わせ、今回はGeForce GTX 1650 Superとの比較(Photo02)が示された。また、もう一つ面白いのは4GB版と8GBで、明確に性能が違う事も示された事だ(Photo03)。このあたりは実際に確認してみたいと思う。
なお、12月12日にはOEM各社からそれぞれ製品が投入されるとしている(Photo04)が、国内販売は12月18日の午前11時スタートとされる。現時点で国内市場にどの程度出回るかは現時点では不明である。AMDはこのRadeon RX 5500を1080P Gaming向けと位置付けており、価格は4GB版が$169、8GB版が$199とされる。GeForce GTX 1650 Superの価格が$159、GeForce GTX 1660が$219、GeForce GTX 1660 Superが$229だったことを考えると、Radeon RX 5500 XTのポジショニングが判ろうというものだ。ちなみに国内での予定価格は現時点では不明である(Photo05)。
余談になるが、Photo01で22CUというのは、どう考えても収まりが悪い。普通に考えれば24CU構成で、ここから2CUを無効化したと考えるべきだろう。これはどちらかと言えば歩留まり改善というよりは性能調整といった感が強い気がする。なので、将来的には24CUの製品が出てきても不思議ではないが、メモリ帯域とのバランスが難しいところだ。ただRadeon RX 5500では既にハイエンドのXTという型番を使ってしまっているから、出るとしたらRadeon RX 5600あたりだろうか?
評価機材
では評価機材をご紹介したい。まずRadeon RX 5500 XTの方だが、今回はSapphireのPulser Radeon RX 5500 XTが届いた(Photo06)。見かけは4GB版(Photo07~11)、8GB版(Photo12~16)ともに全く違いが無い。実際、小さく張られたシールを見ないと区別がつかないほどだ。
さて、これと対決するGeForce GTX 1560 Superであるが、今回はZotacのGAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fanを選んでみた。選択した理由は「購入したショップ(BUYMORE秋葉原店)で一番安いGeForce GTX 1650 Super(\21,780:12/4購入)だったから」である。こちらもOC可能な製品であるが、初期状態では定格動作(Photo17)となっており、同じく定格動作のRadeon RX 5500 XTとの比較には都合が良い。製品ページにもあるように、全長は158.5mm、高さもブラケットと同じという小さくまとまった製品で、重量も417.3g(実測値)とかなり軽い。省スペース向けには適当な製品であろう。
ところでRadeon RX 5500 XTに関しては、こちらで紹介したRadeon Software Adrenaline 2020 Editionを使っているが、今回こちらの比較(つまり2019 Editionとの比較)は無しである。というのは、Radeon RX 5500 XTが動くのが2020 Editionのみなので、前バージョンと比較が出来ないためだ。あくまで今回はGeForce GTX 1650 Superとの比較に留めたい。ただ一つだけ。
以前こちらにちょっと書いたが、大昔のCCC(Catalyst Control Center)とか初期のRadeon Softwareでは、カスタム解像度を利用して3200×1800pixelの表示が可能だった。ところがAdrenaline 2019 Editionではこの解像度が作成できないという問題が生じていた。今回久々にTerry(Makedon)に会ったついでに「前のバージョンだと3200×1800pixelのカスタム解像度が作れなかったんだが」と訴えたところ、今はちゃんと動作するという。実際やってみると、"Timing Standard"を明示的に"CVT"に設定する必要はある(Photo18)が、きちんと作成できるようになった(Photo19)。もう一つ付け加えると、NVIDIAの場合カスタム解像度を作成しても、ビデオカードを差し替えると無効になる(元のカードに戻すとまた有効になる)ので、カード毎にカスタム解像度の作成が必要だったが、AMDは一度作るとそのまま他のカードでも利用できるようで、これも「筆者の様な環境の人間には」ちょっと嬉しいだろう。
ということでテスト環境であるが、「基本的には」にはGeForce GTX 1660 Superをレビューした時の環境そのままであり、この後ご紹介する実際のテストも、GeForce GTX 1660 Superの時と「基本的には」同じである。環境は表1の通りであるが、しつこく「基本的には」を繰り返すのは、なにしろゲーム自身がどんどんバージョンアップされてゆく(それも勝手に)という問題があるのと、OS/ドライバもバージョンアップしているからだ。実際WindowsはBuild 1903→Build 1909になっており、またGeForceのドライバも440.97/441.07→441.41に上がっているので、厳密に言えば以前の結果を混ぜるのは正しくない。ただ時間の関係もあり、今回はあくまで参考として、GeForce GTX 1660の結果のみ以前のものをそのまま利用して掲載している(それ以外の2製品は今回データを取り直したので同一環境である)。テスト手順などはGeForce GTX 1660 Superの記事をご覧いただきたい。
■表1 | |||
Processor | Core i9-9900K | ||
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M/B | ASUS ROG STRIX Z390-F Gaming BIOS 1302 |
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Memory | Corsair CML16GX4M2A2666C16 (DDR4-2666 CL16 8GB×2)×2 |
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Video | SAPPHIRE PULSE Radeon RX 5500 XT 4G SAPPHIRE PULSE Radeon RX 5500 XT 4G Radeon Software Adrenaline 2020 19.12.2 |
ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fan GeForce Driver 441.41 DCH WHQL |
MSI GeForce GTX 1660 AERO ITX 6G OC GeForce Driver 440.97 DCH WHQL |
Storage | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 1909 Build 18363.476 | Windows 10 Pro 日本語版 Version 1903 Build 18362.449 |
なおグラフ中の表記は以下のようになる。
5500 XT 4GB : SAPPHIRE PULSE Radeon RX 5500 XT 4G
5500 XT 8GB : SAPPHIRE PULSE Radeon RX 5500 XT 8G
GTX 1650 Super : ZOTAC GAMING GeForce GTX 1650 SUPER Twin Fan
GTX 1660 : MSIのGeForce GTX 1660 Aero ITX 6G OC
また、原稿中の解像度の表記は次の通りだ。
2K : 1920×1080pixel(Full HD)
2.5K : 2560×1440pixel(WQHD)
3K : 3200×1800pixel
4K : 3840×2160pixel
先にPhoto03で出てきた、「高負荷時に性能差が顕著にでる(らしい)」特性は、本来ターゲットではない3K~4Kあたりで顕著に出てくると思われる。製品ターゲット自体は2Kがメインなので、評価そのものは2Kの結果が中心だが、そんな訳で測定は4Kまで行った。
3DMark v2.11.6846(グラフ1~5)
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
12月5日にバージョンアップされた3DMark。Release Notesを見ると"Fixed a rare issue that could cause the benchmark to crash before showing the result."なる話がある。これと直接関係しているかどうかは不明だが、Ice Lakeで3DMarkを動かすとFireStrikeがクラッシュするという話があり、あるいはそれ絡みかもしれない。
ということでまずOverall(グラフ1・2)で見ると、テストによって多少差はあるが、Radeon RX 5500 XTはGeForce GTX 1650 Superよりやや高速といったところか。負荷が上がるとこの傾向が顕著に思える(FireStrike/FireStrike Extremeなど)。
Graphics Test(グラフ3・4)もほぼ同じく。CPUの負荷率もグラフ5を見る限り大差ないようで、とりあえずGeForce GTX 1650 SuperとRadeon RX 5500 XTはほぼ同程度のカテゴリーとして戦える製品同士であることはこれで確認できたと思う。
SuperPosition v1.1(グラフ6~8)
Unigine
https://benchmark.unigine.com/superposition
続いてはSuperPosition。まず平均フレームレート(グラフ6)を見ると、きっちり3つに分かれているのが判る。要するにRadeon RX 5500 XTは4GB/8GBともにほぼ同一のフレームレートで、なので
GeForce GTX 1650 Super < Radeon RX 5500 XT < GeForce GTX 1660
といった結果になっているわけだ。
最大フレームレート(グラフ7)を見るとGeForce GTX 1650 SuperとRadeon RX 5500 XTの差がかなり縮まっているが、逆に最小フレームレートではRadeon RX 5500 XTとGeForce GTX 1660のフレームレートがほぼ同じ、というあたりはやはり絶対的な性能という意味では(差はともかく)GeForce GTX 1650 Super < Radeon RX 5500 XTとなっているとみて良いだろう。