川崎フロンターレと富士通は12月9日、共同でRPA(Robotic Process Automation)を活用してチケット転売サイトなどに流通するチケット転売情報を収集し分析する実証実験を2019年7月から9月まで実施し、有効性を確認したと発表した。

近年、横行するスポーツやコンサートなどのチケットの不正転売を対策するため、政府は2018年12月14日に法律第103号として「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称:チケット不正転売禁止法)を公布し、2019年6月14日から施行された。

しかし、法律施行後もチケットの不正転売行為は後を絶たず、一般販売のチケットだけでなく、本来、ファンクラブ会員のみが入手できるチケットも転売されているほか、法律では「特定興行入場券」に該当しないチケットは不正とみなされないため、イベント興行主による不正転売対策が引き続き重要となっている。

川崎フロンターレでは職員が転売サイトなどを日々閲覧し、情報を取得・分析していたが、負荷が高く、現状の把握や転売対策を講じることが困難だったという。これらの課題を解決するため、両者はRPAを活用し、チケット転売サイトで不正に転売されているチケット情報の収集や分析を自動化する共同実証を行い、有効性を確認した。

  • 「チケット転売対策」システムのイメージ

    「チケット転売対策」システムのイメージ

実証実験は7月11日~9月30日まで行い、実証内容は富士通が開発したRPAパトロールロボットにより、指定したチケット転売サイトなどを自動で定期的に巡回したほか、チケット転売サイトから出品者IDや出品日時、出品名、出品画像、落札金額などの情報を網羅的に収集し、不正転売された可能性の高いチケットを一覧化。一方、川崎フロンターレは一覧化された情報を確認することで、高額出品される試合や正価との差異などを把握し、対策を検討した。

実証の成果として、約70件から300件の不正転売チケットを約5分で一覧化することに成功したことに加え、収集されたデータを確認し、チケット転売サイトへの掲載取り消し依頼を実施。また、高額出品されたチケットを実際に購入し、年間チケットであれば出品者への座席利用禁止措置など遂行したほか、データで試合日から最も出品数が多い時期を把握し、SNSでの不正転売に関する啓蒙活動を定期実施した。

今後、実証結果をもとに川崎フロンターレは意図しない転売行為の撲滅に向けてチケット転売サイトとの交渉や、SNSなどでの啓蒙活動を実施し、富士通はスポーツやコンサートなど幅広いイベント興行主に対して、RPAパトロールロボットを活用したサービスモデルを検討していく考えだ。