今回は、ドライブレコーダー(ドラレコ)の売れ筋を取材するために、カーアイテムの専門店であるオートバックスの旗艦店「A PIT AUTOBACS SHINONOME」を訪れました。
同店では、お盆明けからドラレコの売れ行きが急激に伸び、9~10月は取り付け作業予定がすべて埋まってしまうほどだったそうです。カーライフアドバイザーを務める千野直克氏は、「8月の常磐道あおり運転事件を契機に、予想を上回る勢いで売り上げが伸びています。来店者の応対をしていると、それまでは『あったらいいかな』だったのが、『付けなきゃまずいな』にシフトしてきているのを感じます」といいます。
それ以前も、2017年6月に発生した東名高速あおり運転事故によってドラレコの需要が増す、といった類似の動きはありましたが、今回は求められるドラレコのタイプにも動きが出ているそう。「それまでは、車体の前後を撮影できるタイプが中心でしたが、車体の側面や車内の様子も残せる“360度撮影タイプ”を求める人が急に増えたのは確かです」(同)
常磐道あおり運転事件では、運転席のドライバーがドア越しに加害者に殴られる映像が報道を通してたびたび流れました。そうした非常事態でも、きちんと証拠が残せるタイプを求める人が増えているようです。
とはいえ、従来通りの前後撮影タイプの需要も根強いほか、道順の記憶や走行中の景観を楽しむための撮影に使う用途で購入する人も少なくありません。そうしたさまざまな需要を踏まえ、ドラレコ購入時の3つのポイントを教えてもらいました。
- あおり対策用なら、前後撮影や360度タイプがお勧め。軽自動車やワンボックスは煽られる傾向が強く、相談を受けることが多い。
- 設置後のメンテナンス性も要比較ポイント。メモリーカードの定期的なフォーマットが必要なタイプとフリーなタイプがある。
- 降車後のトラブルにも対応するなら、駐車監視オプションのあるタイプが心強い。そうした拡張性もチェックしたい。
そのうえで、注目が高まる360度タイプと前後タイプのドラレコの売れ筋トップ3をそれぞれ見ていきましょう。
※原稿と写真で掲載している価格は、2019年10月30日14:30時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
360度第1位:即確認できるモニターが好評の「HDR360G」
360度タイプで一番人気となっているのは、コムテックの「HDR360G」でした。2.4型モニターを本体に搭載したモデルで、有効340万画素の全天球カメラを搭載しています。取材時の価格は3万6999円(税別)。
「スマホと連動していなくても、何かあったときにその場ですぐ映像が確認できるところに魅力を感じている人は多いですね。360度タイプとしては比較的買いやすい価格帯なのもポイントです」
360度第2位:カメラ2台搭載の高画質モデル「d'Action 360 S」
続く2位は、カーメイトの「d'Action 360 S DC5000」。最大約730万画素で撮影できる全天球カメラと約200万画素のフロントカメラを搭載した高性能モデルで、価格は5万9799円(税別)となります。
「とにかく高画質な360度タイプを求める人におすすめしているモデルです。スマホとの連携に慣れれば設定がやりやすいですし、衝撃録画や静止画撮影など、さまざまな機能が使いこなせると思います」
360度第3位:本体をコンパクトにしたい人に支持される「d'Action 360」
3位には、DC5000の下位モデルであり、360度撮影ドラレコの元祖モデルともいえる「d'Action 360 DC3000」がランクインしました。DC5000と同じくモニターは非搭載で、スマホでモニタリングや操作をする仕組みです。カメラは約800万画素の全天球のみ。取材時の価格は3万9999円(税別)でした。
「360度カメラが本体の底部にある作りで、360度タイプのなかでもコンパクトです。それでいて、4K相当といわれる2880×2880ドットの撮影もできますし、価格も抑えられるということで、現在も好調に売れています」
前後第1位:リアもフロントも370万画素で残せる「ZDR026」
続いては、車体のフロントとリアに計2台のカメラを設置する前後タイプの売れ筋です。一番人気となっていたのは、コムテックの「ZDR026」。フロントとリアにそれぞれ有効画素最大370万画素のカメラを組み込んだ製品で、価格は3万6800円(税別)でした。
「前後ともにしっかり映像を残したいという人に人気があります。あおり運転に対しての付加機能は、後続車接近お知らせ機能や、条件によって自動で上書き防止録画できるモードを搭載しているので、安心感も評価されていますね」
前後第2位:メンテナンスフリーで使える「CSD-790FHG」
2位は、セルスター工業の「CSD-790FHG」です。フロントに装着する本体は有効200万画素カメラ、リアなどにつける別体カメラは有効100万画素カメラの構成で、価格は2万9800円(税別)となります。
「microSDカードの定期的なフォーマット作業が不要で、取り付けが終わったらメンテナンスフリーで利用できるということで購入する人が多いですね。事故やトラブルが発生したとき以外は特にいじらない、という人にうれしいモデルだと思います」
前後第3位:明るいレンズで映像が残せる「リアレコ DRV-MR740」
3位には、JVCケンウッドの「リアレコ DRV-MR740」が続きます。前後ともにF1.8の明るいレンズと有効約208万画素のカメラを搭載したモデルで、取材時の価格は2万9800円(税別)でした。
「高精細できれいな映像が残せるということで、証拠性も高いですし、ドライブの映像を楽しみたいという人にも支持されますね」
はみ出し情報…車内が撮れるタイプで人気があるのは「CSD-690FHR」
1台でフロントと車内を撮るタイプのドラレコも、タクシードライバーなどから根強い支持があるとのこと。やはり、車内トラブルへの備えであったり、違反性のない運転の証明などが目的で注目されているそうです。
このタイプでよく売れているのは、セルスター工業の「CSD-690FHR」といいます。前方用に200万画素、車内用に暗視や赤外線LEDを搭載した100万画素カメラを配置しており、価格は3万999円(税別)でした。
著者プロフィール
古田雄介
フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『死とインターネット』(Kindle版)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。