日本IBMは11月14日、都内でデベロッパー向けの取り組みに加え、自然災害アプリ開発コンペティション「Call for Code チャレンジ 2019」の日本最優秀ソリューションを開発したチームを発表した。

Call for Code チャレンジ 2019について、日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部の戸倉彩氏は「今年2月にIBMは『Code and Response』を発表し、オープンソース技術による災害対策・災害復興ソリューションの開発、強化、テスト、配備、これらを世界の人々や地域コミュニティに普及するというものであり、2019年は健康とウェルネスを重視した災害対策と復興にフォーカスしたCall for Code チャレンジ 2019のコンペティションを通じてアプリ開発を促進した」と説明する。

  • 日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部の戸倉彩氏

    日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部の戸倉彩氏

  • 「Code and Response」の概要

    「Code and Response」の概要

同社は2018年にCall for Codeへ3000万ドル投資し、パートナー団体とともに5年間の支援をコミットしている。アプリ開発者、ITエンジニアなどコードを書ければ誰でも参加が可能であり、AIやデータ、ブロックチェーンなどIBM Cloudを無料提供している。2019年の全世界で参加人数は18万人以上、参加国は165カ国、応募作品数は5000以上に達したという。

  • 「Call for Code」の概要

    「Call for Code」の概要

日本からの応募作品で選出されたのは「Prevent the Outbreak of Infection」、慶応義塾大学大学院リーディングプログラムの「KOUDOU Flow」、Code for Aichiの「Blooming - Everybody Smailes More」の3チーム。

  • 選出された3チーム

各チームの応募作品は、Prevent the Outbreak of Infectionが自然災害発生後の避難所において医療関係者が不足している状況において、Watson Visual Recognitionに避難所での感染症原因菌特定をサポートするソリューション、KOUDOU Flowは災害時の行動フローの作成とそれに基づく行動支援システム、災害時におけるボランティアのミスマッチを防ぐシステムとなる。

日本最優秀賞を災害時の行動フローの作成とそれに基づく行動支援システムを「Node-RED Stater」「Watson IoT Platform」「Watson Text to Speech」を活用して構築したKOUDOU Flowが獲得した。

  • 「KOUDOU Flow」のシステム構成イメージ

    「KOUDOU Flow」のシステム構成イメージ

KOUDOU Flowを構築したチームによると、日本に住む多くの人が災害対策の必要性を理解しつつも、その半数程しか自宅付近の避難場所を把握しておらず、さらにその半数ほどの人しか災害時の家族の安否確認をどのように行うかということを家族で話し合っていないことが判明したという。

また、多くの企業や団体が事業継続計画を用意しているものの、マニュアルを災害の種類、期間、近隣施設との連携等を考慮して更新し、社員への防災訓練の実施、全社的な防災意識の向上に対する施策を実施するために多大なるコストとワークロードを要しているということがわかったとしている。

  • プレゼンテーションを行う「KOUDOU Flow」のチームメンバー

    プレゼンテーションを行う「KOUDOU Flow」のチームメンバー

そのような災害対策に関する課題に着目してKOUDOU Flowを開発。ユーザーは、災害発生時にアプリを起動することで、次に何をすべきかを災害のタイプ別に表示され、現在の状況と次のアクションを容易に把握できるようになるほか、緊急地震速報(EEW)のような公的な情報でアプリを起動させることもでき、スムーズに行動マニュアルの実践に移ることを可能としている。

一方、企業や団体ユーザーは災害ごとに簡単かつ自由に行動マニュアルを設定できる。アクションテンプレートを利用することで、簡単にマニュアルの準備と更新を可能とし、アプリを防災訓練に活用することで、社員の防災意識向上につながり、BCPとの連携もできるため企業や団体での活用を可能としている。

日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏は「デジタル変革には人に関して、無駄な時間を省く、判断する時間を最小にする、どこからでもアクセスできるようにする、という3つの要点がある。この3つを押さえていればデジタル変革は、大抵成功する。しかし、これらを成し遂げるには考えるべきことがあり、ゴールを達成するためのアプリを開発するとともに継続的に改良をしなければならないことに加え、データ・AIの併用、エッジデバイス・クラウドの利用が必要だ」と指摘する。

  • 日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏

    日本IBM デジタル・ビジネス・グループ デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏

  • 大西氏はデジタル変革には継続的な改良を伴うアプリ開発と運用が必要だと説く

    大西氏はデジタル変革には継続的な改良を伴うアプリ開発と運用が必要だと説く

大西氏は、そのような状況を踏まえ「そこで重要となるのがデベロッパーだ。IBMとしては『Codeの力で、未来を変える人々』と定義しており、Code、Content、Communityを重要視している」と話す。

そのため、同社では現実的なシナリオにおいて、どのように技術を適用すべきかなどのコンテンツを持つIBM Developer JapanのWebサイトや、座学と実体験による理解を深めるためのIBM Developer Dojoの定期開催、これまでの同社におけるオープンソースへの取り組みを学べるWebサイトを紹介していた。

また、日本IBM デジタル・セールス事業 チーフ・デジタル・オフィサー(CDO) 執行役員の尾股宏氏は「デジタル変革は、デジタルとデータを活用するが、デベロッパーが経営の意思決定に影響を与えているという調査結果もあることから、デジタルとデータに加え、デベロッパーにエンゲージすることで、われわれと顧客のデジタル変革を支援する」と強調していた。

  • 日本IBM デジタル・セールス事業 チーフ・デジタル・オフィサー(CDO) 執行役員の尾股宏氏

    日本IBM デジタル・セールス事業 チーフ・デジタル・オフィサー(CDO) 執行役員の尾股宏氏

  • デジタル変革にはデータ、AIに加え、デベロッパーも必要となる

    デジタル変革にはデータ、AIに加え、デベロッパーも必要となる