Twitterに続々投稿されたローストチキンと黒ラベル

――大会の配信やキャンペーンで、意識した部分を教えてください。

豊後:まず、サッポロビールさんについてお話すると、PJSは未成年の選手も出場しているリーグなので、アルコールの見せ方は配慮する必要がありました。どう見せていくか、我々もすごく悩みましたね。

ただ、ビールは皆で楽しみながら飲むものだと思ったんです。皆で飲みながら語り合う、コミュニケーションツールの1つではないかと。その考えから、「サッポロビールプレゼンツ PJSアーカイブス~未来に残したいこの一戦~」というコーナーを、大会配信の最後に設けました。

皆で乾杯して、ビールを飲みながら選手たちが語るという、これまでになかったコンテンツです。ファンの皆さんからも「もっと選手のトークが聞きたい」とポジティブな反応をいただきました。

福吉:本当にいいご提案をいただいたと思っています。僕がコンテンツマーケティングをするときに気を付けていることなのですが、ブランド色が出過ぎるとコマーシャルに見えてしまうんですよね。なので、あくまで主役はリーグや選手であり、我々の商品がツールであるという位置づけは、すごくいい形だと感じています。

  • PJSseason4 Phase2 Grade1 Day6での「PJSアーカイブス」。この日は福吉さんの音頭で乾杯!

豊後:あのコーナーを作ることができたのは、とても大きかったと思います。実際に、強くアピールしているわけではないんですけど、ファンの方々のサッポロビールさんに対する好感度がとても高いんです。ただ、あの形に行き着くまでは、試行錯誤もありましたね。

福吉:そうですね。実際にやりながらの試行錯誤でした。振り返って見ていただくとわかりますが、毎回少しずつ変わっているんですよ。

豊後:ガストさんに関しては、実際に出演者が食べるコーナーを設けました。毎回、龍康殿さんとご相談しながらメニューを決めたり、ときには出演者をいじるようなおもしろいコメントをいただいたり(笑)。

コーナーを見ていただくと伝わると思うのですが、回を重ねるごとに出演者もガストさんのファンになっていって、好きなところを語る流れが自然と生まれていました。

それから、ガストさんはYouTube配信上のコメント欄にも登場してくださって。視聴者の方々も「ガスト公式さんが見てる!」という雰囲気になって、すごく良かったなと。そこは、SNSを運営されてきたノウハウが活きていると感じます。

龍康殿:私のメイン担当はTwitterなんですけど、YouTube配信上でもコメントしていたのは、「ガストもファンの1人として、皆さんと一緒に応援していいですか?」という気持ちを、間接的に伝えたかったからです。

ただ、ガスト公式がしつこく何度もコメントをすると、広告になってしまいます。なので、試合の最初や最後、それから「ガストプレゼンツ プレイバックRound」の間だけコメントするように、私のなかでルールを決めていました。

そうするうちに、「ガストさんお疲れ様」なんてコメントもいただけるようになって。配信上でコメントしていたことで、「ガストも皆と一緒にドキドキしているんですよ」というのが、伝わったのではないかなと思います。

Twitter上で実施したのは、シーズン前半のガスト協賛記念キャンペーンと、シーズン後半のローストチキン投稿キャンペーン。それから、大会中に勝利チームを予想する「リアルタイムドン勝予想」の3つです。何度も協議しながら進めさせていただいて、結果的に露出やUGC(画像や動画などユーザーが生成したコンテンツのこと)を増やすことができました。

  • ローストチキン投稿キャンペーン

――視聴者からの反応はいかがでしたか。

福吉:数字と人が紐付いているわけではないので、購買につながった部分の数値化はすごく難しいんです。でも、明らかにファンの皆さんが、Twitterに黒ラベルの写真を投稿してくださっているんですよ。これが、なかなか半端ない量でして。

会社で報告するときに、一番わかりやすいのはビジュアライズされていることだと思うんです。皆さんが投稿してくださった「自宅で観戦しながら黒ラベルを飲んでいる写真」を並べて、「こんなに投稿されているんですよ」と報告すると、「おぉ~!」となるんです。

もちろん視聴者数などの情報も大切なんですが、最も社内でも反応があるのは、お客様が投稿してくださった写真ですね。これに代わるものはないと思います。

龍康殿:まったく同じ意見です。皆さんが投稿してくださるツイートや画像が、すべてと言ってもいいくらいです。ハッシュタグや関連ワードをずっと追っていますが、PJSをきっかけに生まれたUGCが明らかに増えているので、社内ではその数値も逐一報告しています。

ガストでの食事ってすごく日常的で、例えば高級レストランに行ったらInstagramに写真を上げたくなるものですが、599円のハンバーグはなかなかアップしようと思わないんですよね。そこは、私たちとしても課題の1つだと思っていたのですが、今回こういうきっかけのおかげで、普通の日替わりランチでも写真を上げてもらえることがすごくうれしくて。

  • 投稿されたUGCの例

豊後:しかも、こちらからは何も言っていないのに、ガストのローストチキンとサッポロ生ビール黒ラベルの両方を買って、それを並べて写真を撮ってくださるファンの方々もたくさんいたんですよね。

福吉:すごいですよね! わざわざ両方買ってきて、一緒に写真を撮ってくださるという。皆さんの反応を見ていると、本当にやってよかったなと思います。皆さんと同じ目線に立っているつもりでも、本当に伝わっているかドキドキするものですが、ああいった投稿をしていただけると「伝わっていたんだな」って。すごく感動しますね。

龍康殿:本当に感動しますよね! もううれしくて、見つけたら全部スクリーンショットして保存しています(笑)。

豊後:さらには、配信のコメント欄で「どうやったらもっとガストさんやサッポロビールさんに恩返しができるだろう」と議論してくださるファンの方々もいたんです。本当にすごいことだなと思いますね。

スポンサー企業がeスポーツシーンを盛り上げるためにできること

――逆に、eスポーツに関する取り組みをするうえで、課題を感じることはありましたか?

福吉:小学1年生のころから40年ずっとゲーム好きだった僕としては、日本のeスポーツシーンは、なぜもっと盛り上がらないんだろうと思っています。お隣の韓国や中国では、アリーナがいっぱいになるわけですから。日本でも、もっと皆で熱狂しながら試合を観て、そのときには黒ラベルで乾杯できたらいいなぁと。課題というよりは、早くそんな日が来てほしいと思っていますね。

龍康殿:一般的なスポーツと違って、eスポーツの大会に興味を持つには、まずはそのゲーム自体を知ってもらうハードルがあると感じました。そういう部分で、PJSというリーグに興味を持っていただくきっかけを、もっと私たちも作れたんじゃないかなと思っているんです。

というのも、ガストは全国に1,300店舗以上あり、お客さまの滞在は1回の来店で50分ほど。しかも、全店にFree Wi-Fiがあって、店舗によってはすべての席にコンセントがあります。それを活かせば、例えばスマホ版の『PUBG MOBILE』を来店時にプレイしていただくなど、さまざまなアプローチの可能性があるのではないかと気づきました。

いまはSeason4が終わって、離れてしまうのがとても寂しいのですが、また機会に恵まれるのであれば、もっとPJSのファンを増やすためのサポートも含めて、今回できなかったことを1つでも多く取り組めたらと思っています。

福吉:シーンを盛り上げるために我々に何ができるかという意味では、学びがすごく多かったですね。いつも大会を観戦しながら、龍康殿さんがやっていることを見て、公式アカウントを活用することで、こんなにもコミュニケーションが深くなるんだと感動していました。

僕らも、もっとファンに近い目線に立つためには、SNSを活かした発信を積極的にしていかなければと感じたので、そこは今後さらに取り組んでいきたいと思う部分です。

豊後:eスポーツへの参入にはまだ懐疑的な企業さんも多いなかで、お2人には今回これほどの熱い想いで、先駆けて取り組んでいただいて。私たちとしても、もっと恩返ししたいのですが、実現しきれなかった部分もありました。そこは、さらに改善を重ねて、企業の方々に「参入したい」と思っていただくための土壌作りをしていきたいと考えています。

――それでは最後に、eスポーツへの取り組みを考えている企業の方々へ向けて、伝えたいことがあればお願いします。

龍康殿:今回、スポンサーという立場ではありましたが、どちらかというとDMM GAMESさんとはパートナーという関係性に近かったと感じています。毎週のように、「これならファンの皆さんに喜んでもらえるかな」と、一緒に相談しながら進めてきました。そういう意味で、スポンサーとしての取り組みは「お金を出して終わりではない」というのは伝えたいことですね。

福吉:eスポーツに関する取り組み全体に言えることですが、本当に好きで取り組める人が担当してほしいですね。eスポーツが盛り上がってきたことで、「うちも何かやったほうがいいと思うんですけど、どうしたらいいですか?」と聞かれることもあるんです。けど、僕はそうじゃないよね、と思っていて。

ファンの方々は、そういう気持ちを見抜くと思うんですよ。だって、自分たちと同じ目線に立っているかどうかって、すごく気になるじゃないですか。龍康殿さんのおっしゃる通り、お金を出すだけだったら、なかなか共感はされないですよね。そういう人ばかりが増えたら、ファンの気持ちも冷めてしまうのではないかと。

だからこそ、ファンと同じ目線に立てるかどうかが大事だと思うんです。これからeスポーツに参入しようと考えている企業の方々には、ぜひ熱意を持って取り組んでほしいですね。

――両社の取り組みが、大会のファンからとても高く支持された理由がよくわかりました。本日はありがとうございました!

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