◆RMMT 1.1(グラフ25)

Rightmark.org
http://cpu.rightmark.org/products/rmma.shtml

今回はRMMAは掲載しない(こちらのテストでやった結果と同じだからだ)が、RMMTの結果だけご紹介したいと思う。

といっても、こちらもゲームベンチマークとほぼ同じで、アーキテクチャが一緒で動作周波数に大差がなく、メモリも一緒だったら結果は同じ、という当たり前の結果になった。それでもわずかにRyzen 9 3900Xの方が性能が上回っているのは、Base周波数の差に起因するのではないかと思われる。

◆消費電力(グラフ26~32)

最後は消費電力である。Sandra 20/20のArithmetic Benchmark(つまりDhrystoneとWhetstone)がグラフ26、CineBench R20のMPがグラフ27、TMPGEnc Mastering Worksで4streamのエンコードを行った際の最初の150秒間がグラフ28、3DMark Firestrike Demoがグラフ29、それとFarCry New Downを2Kで行った際のものがグラフ30となる。

CineBenchは今回初めて追加したものだが、Ryzen 9 3950の方が早く処理が終わる関係で、ピークに達している時間がより短い。更に言えば消費電力もむしろ下がっているというおまけつきである。あとはいつも通りだ。

この5つのテストの稼働時の平均消費電力と、待機時の消費電力をまとめたのがグラフ31、待機時の消費電力との差を算出したのがグラフ32となる。

このグラフ32を見ると、意外にRyzen 9 3950Xの消費電力が低いのが判る。勿論ピーク時、例えばDhrystoneやWhetstoneを行っている際の消費電力は10W強~30Wほど高くなっているが、同じ様にCPU負荷を掛けている筈のCineBenchとかTMPGEnc Mastering Works 7での消費電力はRyzen 9 3900Xとほぼ変わらないし、3DMark FireStrikeやFarCry New Dawnも同等レベルである。

要するに、本当にフルにBoostに近い動作周波数で動かない限り、案外に消費電力は低く抑えられている訳だ。また待機時の消費電力も70W弱と、ハイエンドシステムの割には低めなのも特徴的である。

ちなみに今回Sandra 20/20のテスト結果は入れていないがArithmetic Benchmarkの結果で言えば

Dhrystone
(GIPS)
Whetstone
(GFLOPS)
Ryzen 9 3900X 331.70 458.00
Ryzen 9 3950X 557.00 754.59

という結果になっており、性能/消費電力比で言えば

Dhrysone
(GIPS/W)
Whetstone
(GFLOPS/W)
Ryzen 9 3900X 2.33 3.64
Ryzen 9 3950X 3.59 4.78

と、圧倒的にRyzen 9 3950Xの方が良い結果になっている。

これは、全コアがフルに稼働しており、ところがPower/Thermal Budgetがあるから、Ryzen 9 3900Xの方がRyzen 9 3950Xよりも平均的に高い動作周波数で稼働することになる(Ryzen 9 3950Xの方がコア数が多い分、動作周波数は低めにして消費電力を抑えざるを得ない)。その一方でRyzenに限らずCMOS回路全般に、ある閾値を超えると電力効率は急速に悪化する。結果として、動作周波数を低めに抑え、それを数で補ったRyzen 9 3950Xの方が遥かに効率が良くなるという訳だ。

これはCineBenchもそうで、結果として処理時間の短縮にも繋がっている。こうした、並列性の高い、かつCPU Intensiveな処理に関して言えば、やはり「コア数こそ正義」と言えそうだ。

◆考察

今回は暫定版の評価ということで、Ryzen 9 3900Xとの比較のみでお届けしたので、考察も当然この範疇での話となるが、エンコードなどの用途を考慮すると、Ryzen 9 3950Xの性能と効率は圧倒的であって、こうした目的であれば「圧倒的にお勧め」として良い。

逆にGamingがメイン、ということであれば現状Ryzen 9 3900Xとの明確な差は認めにくいし、更に言えばこれならRyzen 7 3800Xの方がBase周波数が高い分、むしろ性能は上がるかもしれない。現状まだ16コアをフルに使うようなゲームは存在しておらず、強いて言えばeSportなどの絡みでプレイ動画をリアルタイム配信する、なんてケースでのみコア数が生きてくるだろう。

その意味では第2世代のRyzen Threadripperなどと同じ扱いになる訳だが、Ryzen Threadripper 2950XがBase 3.5GHz/Boost 4.4GHzでしかないから、これと比較しても明らかに性能改善である。第3世代Ryzen ThreadripperがSocket sTRX4になって、第2世代までとの互換性が無くなってしまったから、アップグレードパスはRyzen 9 3900X/3950Xか、Socket sTRX4ということになる。Gamingがメインなら、Socket sTRX4に移るより、Socket AM4でRyzen 9 3950Xを入手する方が安価で、しかも幸せになれるだろう。