• VAIO S15

    VAIO S15。ソニーストアでは11月12日9時から受注開始。発売は量販店・ソニーストアで11月22日から。価格はオープン、量販店の店頭予想価格は税別164,800円前後から。ソニーストアモデルの予想価格は税別119,800円前後から

VAIOは、15.6型ディスプレイを搭載するノートPC新製品「VAIO S15」を発表しました。その仕様や製品コンセプト、VAIOが考える位置づけについては別記事で紹介していますが、ここではVAIOが公開した分解作業から、VAIO S15の内部構造と新たに採用したクーラーユニットなど、機構開発で取り入れた新機軸を探っていきます。

なお、この記事の写真で示した分解手順と作業については、VAIOの開発当事者が説明のために実施したものです。ユーザーが記事で紹介している手順を真似して分解した場合、保証は無効になるのでご注意を。

まずは光学ドライブの取り外しから

VAIO S15の分解は底面にあるネジを外す作業から始まります。最初に取り外すのは中央付近にある1本のネジです。これを抜くと内蔵する光学ドライブが取り出せます。続いて周辺部にあるネジを外して底面パネルが開きます。そのうちの1本は内蔵する光学ドライブを取り出さないと外せません。底面周辺部を固定するネジには長さの異なる3種類があり、最も長いネジは強度を確保する必要があるヒンジ周辺を固定しています。

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    分解は底面を固定するネジを外すところから始まる。最初に外すのは中央部の1本

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    そのネジを外すと内蔵する光学ドライブが本体から抜き出せる

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    続いて、ヒンジ側を固定しているネジ3本を外す。ここが底面において最も力がかかる部分で、ネジのサイズも底面を固定するネジでは最も大きい

  • その後、底面の前面、左右両側面を固定するネジを外す

  • 最後は、光学ドライブを外すとアクセスできるネジを外す。ここのネジが最も短い

内部レイアウトが変わったVAIO S15

底面の外装パネルを開くとシステムボードやクーラーユニット、ストレージデバイス、バッテリーパック、スピーカーユニットなど、ノートPCの“臓物”が全て現れます。内部のレイアウトも従来のVAIO S15(2016年発表モデル)と変わりました。これは、システムボードのサイズがコンパクトになったことで、さらなる高密度実装が必要になったのと、CPUの動作クロックが上がったことで、クーラーユニットが従来モデルからサイズアップしたことが影響しています。

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    爪で固定している底面パネルを開くと内部の全てにアクセスできる

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    バッテリ側が手前側でその反対がヒンジ側になる

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    固定用ステーのネジを外してHDDを取り出す

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    その脇のNVMe SSDも固定用ネジを外すと取り出せる

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    システムボードへの給電ケーブルを抜いてバッテリーパックを外す

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  • USBとシステムボードを接続するフラットケーブルを外し(写真左)、無線通信モジュールを外す(写真右)

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  • クーラーファンを外して(写真左)、システムボード固定ネジを外すと(写真右)

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    システムボードが取り出せる

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    左が新しいVAIO S15のシステムボード。右にある従来のVAIO S15のそれと比べてコンパクトになった

バッテリーパックをバランスよく薄型化

バッテリーパックの形状も従来から変わりました。先ほども述べたように、バッテリーパックは従来のヒンジ側から手前のパームレスト側に移設しました。そうなると、パームレストに設置したタッチパッドモジュールとの干渉が問題になります。

特に、新しいVAIO S15では、直感的なタッチパッド操作ができるよう、ディスプレイサイズに合わせてタッチパッドのサイズを大きくすることも求められていました。その結果、バッテリーパックの一部とタッチパッドモジュールの一部がどうしても重なってしまったといいます。一方で、イマドキのノートPCデザインにおいてボディの厚みを増すことは避けたいところ。このような事情からバッテリーパックの形状や厚さが変更されたのです(バッテリー容量は従来モデルから増えている)。

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    バッテリーパックの厚さは均一でなく、中央部側(画面右側)が薄くなっている。これはタッチパッドモジュールと干渉させないための工夫

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    パームレストパネルの裏側に取り付けるタッチパッドモジュール

CPUは従来の第8世代「Core i7-8750H」から、第9世代「Core i7-9750H」に変わりました(上位モデルの場合)。さらに、最上位構成のALL BLACK EDITIONになると、VAIO PCでは初採用の「Core i9-9980HK」を搭載します。動作クロックはCore i7-8750Hの2.2GHz-4.1GHzから、Core i7-9750Hで2.6GHz-4.5GHzと上がりました。また、Core i9-9980HKでは、物理コア数が8基(同時対応スレッドは16)に増え、動作クロックも2.4GHz-5.0GHzと上がっています。

これら全てのCPUでTDPは45ワットですが、VAIO開発陣は、新しいVAIO S15の筐体内空間がより薄く、かつ、より高密度実装となったことや、クーラーファンのサイズの変更が求められたことなどによって、冷却効率を向上させたクーラーユニットを新たに開発しました。

  • 新旧VAIO S15で搭載するクーラーユニットを比べる。手前が新しいVAIO S15で右斜め上にあるのが従来のVAIO S15ヒートパイプの本数と形状、太さが異なる。それらの左にあるのは新しいVAIO S15用クーラーユニットの裏側

大型ファンと肉厚ヒートパイプで強力冷却

新開発のクーラーファンではブレードの形状を変更することで風量を確保し、ヒートパイプでは従来の1本から、Core i7-9750H搭載モデルでは平たくつぶした6ミリ径パイプ2本に増やし、Core i9-9980HK搭載モデルではさらに太いパイプを平たくつぶして組み込んでいます。また、CPUと接するヒートシンク部分もCore i7-9750H搭載モデル用と比べてCore i9-9980HK搭載モデル用は肉厚にしています。

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    どちらも新しいVAIO S15用だが、右はCore i7-9750H搭載モデルで左がCore i9-9980HK搭載モデル用。ヒートシンクの厚みが異なる

VAIO S15はディスプレイを開いたときに、キーボード側ボディが前端を始点として浮き上がるチルトアップ構造を採用しています。そのため、浮いたときでも快適にキーボードをタイプできるようにボディの剛性を確保する必要があります。そのため、従来はボディの一部(底面部分)だけに用いていたアルミパネルとパームレストなど全面的に取り入れました。

狭ベゼルでも強度を確保

ボディの堅牢性については、ディスプレイ側でも対策を施しています。ディスプレイ部分の堅牢性においてはベゼル幅を狭めるほど、従来と同じ構造では堅牢性を確保できない問題がありました。VAIO S15では、天板側からL字に折り曲げた部分を、全周で従来モデルより太くすることで、枠全体の強度を高めています。

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    ディスプレイユニットの分解では、まずヒンジを本体に固定するネジから外していく

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    本体(キーボード搭載側ボディ)と分離したディスプレイユニット

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    剛性を確保するため、キーボード搭載側ボディの外装パネルもアルミ製とした

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    ベゼルパネルを固定する爪を外す

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    ベゼル部分を外すと、内蔵のカメラユニットやディスプレイパネルにアクセスできる

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    天板側パネルに固定するネジを外すとディスプレイパネルが取り出せる

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    天板パネル新旧比較。手前が新しいVAIO S15で奥が従来のVAIO S15。新しいVAIO S15では天板周辺部からL字に立ち上げた“側面”部分をより太くすることで、ディスプレイと天板側の全体で強度を確保している

見てきたように、新しいVAIO S15では、処理能力が向上したCPUの冷却機構や狭ベゼルでも強度を確保できるパネル構造の採用など、新機軸の工夫を採用しています。これらによってVAIOが新しいVAIO S15に託した「パフォーマンスと『快』のさらなる進化」という開発目的の実現に大きく貢献しているのは間違いのないところでしょう。