米Adobeは11月4日(現地時間)開催のクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2019」にあわせて、「Adobe Photoshop」のiPad版や、iOS向けのARオーサリングツール「Adobe Aero」をリリースしました。どちらもすでにApp Storeから入手が可能になっています。

また同イベントではあわせて、2020年リリース予定のスマートフォン向けカメラアプリ「Adobe Photoshop Camera」や、「Adobe Illustrator」のiPad版も発表されます。

iPad版Photoshop、いよいよリリース

Photoshop iPad版は2018年開催の「Adobe MAX 2018」で発表され、リリースが待望されていたもの。写真を複数のレイヤーに切り分けての編集・加工など、デスクトップ版と同じく本格的なフォトレタッチができます。デスクトップ版のユーザーが違和感なく使えて、なおかつタッチ操作や「Apple Pencil」での操作に最適化されたUIを採用。これはベータ版テストで得たユーザーからのフィードバックを反映しながら、1年をかけてブラッシュアップされたもので、初心者向けのチュートリアルも充実しています。

  • オリジナルのブラシが使えないなど、デスクトップ版とまったく同じとはいきませんが、タッチの方法によってショートカットが使える機能などかなり工夫されています

ファイルは自動的に「クラウドドキュメント」に保存されるしくみで、このクラウドを通じてPSDファイルを、デスクトップ版とiPad版でシームレスに扱えるようになっています。あわせてPhotoshop デスクトップ版もアップデートされて「クラウドドキュメント」対応となるほか、AdobeのAIプラットフォームである「Adobe Sensei」を用いて、複雑なオブジェクトを自動的に選択できる「オブジェクト選択ツール」などの新機能も追加されます。

  • クラウドドキュメントを通じてデスクトップ版でもiPad版でも、PSDファイルを同じように扱えます。細かいレタッチは「Apple Pencil」でなど、いろいろな活用ができそうです

Photoshop iPad版は単体では月額1,080円(税込)で、30日間の無料試用が可能です。すでにAdobe Creative Cloudのコンプリートプラン(月額5,680円)を利用している人は、追加料金なしで利用できます。月額980円~のフォトプランでは一部機能は制限されるものの、2020年1月31日までに加入した人は無料となります。

Photoshop印のカメラアプリが爆誕!

Photoshopでもうひとつ注目の発表が、2020年提供予定のスマートフォン向けカメラアプリ「Photoshop Camera」です。

AI「Adobe Sensei」を用いて、ポートレートや風景、フード、セルフィーといったシーンを、それぞれのシーンに最適な設定で自動補正できるほか、オリジナルのイメージをキープしつつ、「レンズ」と呼ばれる様々なエフェクトをリアルタイムに加えることができます。

色調やタッチを大胆にアレンジしたり、背景を切り取って異なる風景を合成するといった複雑なエフェクトが、レンズの種類を選ぶだけで簡単に楽しめるというもの。有名アーティストやインフルエンサーが手がけるレンズも多数用意されるとのことで、来年のリリースが今から楽しみです。

  • 「Adobe Photoshop Camera」では様々なエフェクトをリアルタイムに表示しながら写真撮影ができます。AIを用いてかなり複雑なエフェクトも楽しめるようになっています

iPad版Illustratorがベータ提供開始

なおAdobeでは、多くのデザイナーに愛用されている「Adobe Illustrator」のiPad版も、同じく2020年にリリース予定。ベクターデータを扱えて、アイコンやロゴなどを作成できるのはデスクトップ版と同じですが、iPad版ではカメラで取り込んだイメージを、「鉛筆ツール」で素早くトレースするといったことも簡単にできます。今回のイベントと同時にクローズドでベータプログラムの提供が開始されるとのことなので、いち早く試してみたい人は要チェックです。

  • Adobeを代表するソフトウェア「Adobe Illustrator」もいよいよiPadで利用可能に。デザイナーの働き方改革に貢献できるかも注目です

拡張現実を簡単に創造できるAeroで2020年はARの年に!

もうひとつ、これから注目のアプリとなりそうなのが、2019年の同イベントで「Project Aero」として紹介され、今回iOS向けにリリースされた「Adobe Aero」です。PhotoshopやIllustratorのデータから、難しいプログラミングなしにARコンテンツが作れるオーサリングツールで、作成したコンテンツはAppleが「AR Quick Look」で公開している3Dモデルと同じ、USDZフォーマットでの書き出しが可能。ARコンテンツの作成から共有まで、驚くほど簡単にできます。

なおAero iOS版の利用は無料。さらにAdobeでは今回のイベントと同時に、デスクトップ版のベータプログラムも開始する予定です。今はまだコンテンツが限られているARですが、これを機に一気に盛り上がるかもしれません。

  • カメラでとらえた風景にオブジェクトを重ねながら、直感的にARコンテンツを作成できる「Adobe Aero」。ARが普及するきっかけになるかもしれません