• Frescoを使ってイラストを描く体験会が開催されました。写真はイラストレーター・福田愛子さんがFrescoで描いた作品です

Adobeは8月8日、iPad向けのドロー&ペイントアプリ「Fresco」のメディア向け体験会を開催しました。ここでは体験会の様子とFrescoを実際に試した感想をお届けします。

ドロー&ペイントアプリ「Fresco」とは?

Frescoは、2018年10月に、同社が米ロサンゼルスで開催したクリエイティブイベント「Adobe MAX 2018」で発表されたiPad向けのドロー&ペイントアプリ。Frescoの一般向け正式リリースは2019年冬が予定されており、国内では初の実アプリ体験会となります。

当初「Project Gemini」という名前で発表されたこのアプリは、2019年6月に正式名称が「Adobe Fresco」だと発表されました。由来は絵画技法のフレスコから。漆喰が乾く前の新鮮(フレスコ)なうちに描くフレスコ画のように、“インスピレーションがが降りてきたら新鮮な内に描く”との意を込めたといいます。

  • Frescoのホーム画面。右側にメニューが並び、左側にはレイヤーが表示される。右側メニューは上から順に、ピクセルブラシ、ライブブラシ、ベクターブラシ、消しゴム、移動ツール、選択ツール塗りつぶしツール、スポイトツール、カメラ(写真撮影や取り込み)、カラーホイールとなっています。横線以下はブラシの詳細設定です

ピクセルブラシとベクターブラシを1アプリ内で使える

Adobeはすでに「Photoshop Sketch」や「Illustrator Draw」といったiPad向けのドローイングアプリを提供しています。同社が“次世代”とうたうFrescoは、一体どういうものなのでしょうか。

Frescoは、Photoshopのビットマップベースのピクセルブラシ(ラスター)と、拡大縮小自在なベクターブラシを一つのアプリ内で利用できることが、大きな特徴のひとつ。ピクセルブラシで描いたイラストに、ベクターブラシで補足して(レイヤーは分かれます)、最後に統合させることもできます。それぞれを意識せず、スムーズに切り替え・統合することが可能です。

  • ピクセルブラシの例

  • ピクセルブラシの上にベクターブラシで描くと、自動的にレイヤーが分かれます。最後に統合させることも可能。ベクター描画は最大12,800倍まで拡大可能とのこと

なお、Frescoは、iPadとApple Pencilを活用するお絵かきアプリという位置付け。すでに提供されているDraw(ドロー)とSketch(スケッチ)は、描けるのがベクターかビットマップか、という違いがありますが、この両方の形式にFrescoは対応しているわけです。

ベクターは図形を数式で描画する方法で、ロゴ制作など比較的単純な形を描くのに適した形式。拡大・縮小しても画像が劣化しないのが特徴です。一方ビットマップは、ピクセルごとに色情報を記録する描画方法で、細かく繊細な表現が可能となる一方で、拡大・縮小には対応できません。DrawとSketchでは、それぞれベクターかビットマップか、描くものによって使い分ける必要がありました。

「ライブブラシ」で色の滲みや重なりをリアルに再現

そしてもう1つの特徴が、お馴染みAdobeの人工知能、Adobe Senseiを活用した、リアルな表現ができる油彩・水彩ブラシです。

水彩ライブブラシでは、色が拡張していく様子や、違う色を重ね合わせたときの色の交じり具合、水によるぼかしや色が薄まった様子などが、ブラシ設定や筆の力の入れ具合が加味された上で、描画されます。色の混ざり方や絵の具量なども設定で調整できます。

また、油彩ライブブラシでは、油絵の具を厚く重ねた立体感やはけ筋、筆致が再現されます。また、色を重ね合わせた表現や、色の混ぜ合わせによって生まれた色のピックアップも可能となっています。水彩・油彩ともに、特に色を重ね合わせたときの描画は圧巻で、全く絵心のない筆者のような人間でも楽しく筆を進められました。

  • 油彩ブラシで赤、オレンジ、黄色、緑、水色、青、紫を、それぞれの色の境界に重ねるよう塗っていったもの

  • 油彩ブラシを厚めに塗ると筆致も表現されます

【動画】水彩ブラシを使ってトマトを描いてみたところ。色を重ねたときの滲みにAdobe senseiが活用されています。Fresco標準機能「タイムラプス」で出力しています