既報の通り、Microsoftは米国時間2019年10月2日、Surface Pro Xに代表される新たなSurfaceファミリーを発表した。個別機種の概要は別記事『Microsoft、Surfaceイベント発表まとめ、2画面デバイスや独自プロセッサなど』を参照していただくとして、まずはメインストリームであるSurface Pro 7に目が行った。

正直な感想は「何も変わっていない」。もちろんUSB Type-Cを用意し、CPUも第10世代Intel Coreプロセッサーに更新している。だが、LTE標準搭載は標準搭載を見送り、液晶ディスプレイのベゼルもさほど変わったように見えない。Surface Proシリーズは熟成期を迎えたのだろう。

  • Surface Pro 7

    USB Type-CとType-Aを兼ね備えるSurface Pro 7

「変わらないSurface Pro」に対するMicrosoftの回答が、Surface Pro Xである。プロセッサーはSnapdragonではなく、Qualcommと共同開発した「Microsoft SQ1プロセッサー」を搭載。Microsoftの説明によれば「2TFLOPSのグラフィック描画能力を持つ、PC用に設計した最速のQualcommプロセッサー」という。

スペックシートを見ると、内蔵GPUはAdreno 685。MicrosoftがCPUの処理能力に触れていない点は気になるものの、バッテリー駆動時間が約13時間であることを踏まえると、ある程度のパフォーマンスは期待できそうだ。さらに、Surface Pro XとSurface Laptop 3はリムーバブルSSDを採用し、保守性を高めている。特にビジネスシーンで利用するデバイスとしては、保守性が高いのは歓迎したい部分だ。

  • Surface Pro X

    新型Surface Penの充電に対応するSurface Pro X

さて、本命となるのは、コード名Centaurusで開発が進んでいたSurface Neoではないだろうか。以前はWindows Liteと呼ばれたWindows 10XをOSとした、9インチのデュアルスクリーンデバイスは噂の通り。キーボードは背面から折り返す状態で有効となり、13インチディスプレイを備えた2in1 PCとして使えるだろう。Windows 10XがどのようなOSなのか、現状はっきりしない点はあるのだが、Microsoftは「我々は(Windows 10に)“One Core”を採用している。Windows 10XはコンテナでWin32アプリを実行するための新実装を含む」と述べている。ネイティブでWin32アプリが動作しないのは、パフォーマンスが気になるところだ。

  • Microsoft CPOのPanos Panay氏

    Surface Neoを手にするMicrosoft CPOのPanos Panay氏

筆者の予測を裏切ってくれたのが、Surface Duoの存在。Microsoftは「ポケットに収まる最初のSurface」と述べており、採用OSはAndroidである。5.6インチのデュアルスクリーンで、展開時は8.3インチまで広がり、Androidスマホ&タブレットとして使えそうだ。

ここでふとWindows Phoneが頭をよぎる。Microsoftはかつて「PDA」と呼ばれた時代からパーソナルデバイスを手がけてきたものの、Windows 10 Mobileの不振から抜け出せず、撤退したことは記憶に新しい。Windows 10 Mobileは、Microsoft Storeを通じたアプリのエコシステム構築がうまくいかず、できることがなかなか拡がっていかなかったことから、iPhoneやAndroidの確固たるマーケットに食い込めなかった。

  • Microsoft CPOのPanos Panay氏

    手のひらにSurface Duoを乗せたPanay氏

Surface Duoを2020年ホリデーシーズン(クリスマスから年末年始)に投入するMicrosoftの意図は、「次世代のデュアルスクリーンコンピューティングで、モバイルによる創造性を開拓する」こと。振り返ればSurfaceシリーズも、2in1 PCという新たなPC体験の開拓を目指して投入し、バージョンを重ねることで現在の地位を築いてきた。Surface DuoはAndroidという巨大なプラットフォームとエコシステムへ参入する形となるため、Windows Phoneと同じ轍(てつ)を踏むことはないだろう。

阿久津良和(Cactus)