パソコンを買ったり使ったりするとき、頼りにしたいのがメーカーのユーザーサポート。今回、沖縄県沖縄市にあるマウスコンピューターのコールセンターを訪ね、サポートスタッフやサービスの現場、利用者の動向を取材した。対応してくださったのは、マウスコンピューター 執行役員 サービス本部長の佐藤謙氏、マウスコンピューター コールセンターの上原直哉氏だ。

まず、マウスコンピューターの沖縄コールセンターについて体制を簡単に紹介すると、ユーザーサポートに携わるスタッフはだいたい100人で、おおまかに3つのグループに分かれる。電話対応のサポートコールチーム、メール・チャット・LINE対応のオンライングループ、通販窓口グループだ。

このうちサポートコールチームとオンライングループは24時間365日の体制で、サポートコールチームは実に15パターンのシフト制で1日に30人から60人が対応に当たる。オンライングループは6パターンのシフト制、1日10人から15人という体制だ。ちなみに通販窓口の受付は午前9時から午後8時で、6パターンのシフト制、1日10人前後で電話注文を受けている。

  • マウスコンピューター 佐藤謙氏(右)、上原直哉氏(左)

    写真右がマウスコンピューター サービス本部長の佐藤謙氏、写真左がマウスコンピューター コールセンターの上原直哉氏

なぜ沖縄に?

もともとマウスコンピューターのコールセンターは、沖縄県に拠点を構える専門事業者にアウトソーシングされていた。これを2010年に自社化。効率を求めていた運営を、ユーザーが抱える問題の解決と「サンキュー」を重視するスタイルに変えた。問い合わせてきたユーザーの問題を解決し、ありがとうと言ってもらえるようにしようということだ。

コールセンターのスタッフは基本的に沖縄の人たちで、マウスコンピューターが自社化したコールセンターへと大半のスタッフが移った。新しいスタッフも現地採用を基本としており、採用後は2週間の座学で徹底的に知識を身に付けたのち、デビューとなる。

デビュー後も、新しい製品が発売されると講習会が開かれ、開発部門のエンジニアが沖縄に行ってレクチャーする。サードパーティー製のプリインストールソフトウェアについては、開発メーカーから講師を招くこともあるという(ソフトウェアに関しては、プリインストールソフトウェアはコールセンターでサポートするスタンス)。

「沖縄の人はみんな優しくてコミュニケーションが好きなんです。おもてなしの精神は沖縄の県民性でもあります。ユーザーサポートは人対人でもあるので、これを発揮してもらえたらと考えました」(佐藤氏)

  • マウスコンピューター沖縄コールセンター

    マウスコンピューターの沖縄コールセンター。電話、オンライン、販売といくつかの窓口に分かれている

満足度、20% → 80%

ただ、なかなか上手くはいかなかった。極端な話、2009年のコールセンターの自社化以前は「対応件数(電話を受けた数)」が大きな評価軸だったため、ていねいな電話対応をすると1件当たりにかかる時間が長くなる。すると対応件数が減り、スタッフ個人の評価が下がりかねない。また、電話したユーザーが受話器の向こうで待つ時間も増え、これが常態化するとマウスコンピューター自体のユーザーサポートも評判が落ちる。

ではどうしたのかというと、ひとつはスタッフ個人の成績評価を対応件数に偏らないようにした。企業の人事的なことなので詳しくは聞かなかったが、先述した「問題解決」「サンキュー」を反映できるようになっている。

もうひとつは、とにかく緻密なシフト管理とスケジュール管理。専用のソフトウェアを導入し、過去の実績を分析して複数のシフトパターンを作り、毎月入れ替えている。さらに当日のシフトも、前日の状況を見て各スタッフの休憩時間などを30分単位で微調整するという細かさだ。混雑する曜日や時間帯に、多くのスタッフを効率的に配置している。

  • マウスコンピューター沖縄コールセンター

    電話サポートのコールチームに所属するスタッフが、実際に使っている機材

さらにもうひとつ。2016年からWeb上のサポート情報を充実させている。コールセンターの混雑状況(ヒートマップ)をWeb上で公開し、FAQを手厚くした。FAQによって、ある程度のスキルがあるユーザーはWebだけで問題を解決できるため、コールセンターへの電話が減る。そしてヒートマップのおかげで、コールセンターが混むときと空いているとき(曜日や時間)のバラツキも減ったという。

こうした取り組みを続けた結果、かつては「80%が悪い評価」だったユーザーアンケートが逆転し、「80%が良い評価」となった。電話サポートの平均対応時間は、以前の約9.5分から現在は12分へと延びている。1人のユーザーに対して、ていねいに対応していることの表れだろう。一方で、平均応答時間(電話がつながるまでの時間)は約39秒まで短くなった。実際の応答時間は混雑具合に左右されるが、空いている時間帯なら長くてもだいたい45秒以内には電話がつながる。

  • マウスコンピューター

    マウスコンピューターのWebサイトから

  • マウスコンピューター沖縄コールセンター

    壁に掲げられた目標。ユーザーからの質問を受けて、電話を保留して、自分で調べて、解答を出して、電話の保留を解除。保留時間が2分というのは思いのほか短い

ところで、電話中に各スタッフが対応できない問題が発生した場合はどうするのだろう。そんなときはスタッフが手を上げると、フロアに常駐している熟練スタッフ(スーパーバイザー)が飛んできて、解決を手伝う。これで大半のユーザートラブルは解決できるそうだ。コールセンターの上原氏は、「今後はスーパーバイザーの育成がひとつのカギ」と話す。

  • マウスコンピューター沖縄コールセンター

    右側でアドバイスしている男性がスーパーバイザー。シフト上で約20%に当たる人数が配置され、どっしりと構えている。この安心感!

メール・チャット・LINE対応のオンラインサポートが急増中

沖縄コールセンターの主力は電話サポートだが、2016年にはメール・チャット・LINEを使ってユーザー対応するオンライングループが新設された。立ち上げ時のスタッフは15人くらいだったが、2019年8月の時点では20人に増えている。メール・チャット・LINEの中でも、立ち上げ時から比較してLINEによる相談が10倍以上に増えているという。

LINEやチャットによるユーザーサポートが優れているのは、ユーザーが自分のペースでやりとりしやすい点や、英語のエラーメッセージなどを文字で伝えられること、スクリーンショットを送って質問できること、1人のスタッフが複数のユーザーをサポートできることなどだ。慣れたスタッフは、一度に5人10人のユーザーとLINEするというから(すべてにきちんと対応できることに)驚いた。

ちなみに、一番多い問い合わせは電話によるものだが、電話を使うのは40代以上のユーザーがほとんど。30代以下はまず電話は使わず、メール・チャット・LINEのオンラインサポートを利用するとのこと。妙に納得。

  • マウスコンピューター沖縄コールセンター

    オンライングループが導入しているチャットツール。3人くらいまでなら何とかなりそうな気がしないでもない……(のは気のせいだろう)

サポート対応は社内で共有、次期製品の開発に生かす

少し話が戻るが、コールセンターを自社化したことで、ユーザーの声をダイレクトに集められるようになった。これをマウスコンピューターの各部門で共有、議論することによって、品質に関する社内的な対応のスピードアップと精度アップ、さらに次期製品の開発スピードアップと品質アップにつなげている。

毎週の「品質管理ミーティング」に参加するのは、コールセンター部門、品質管理部門、開発部門、購買部門、修理部門(リペアセンター)の責任者と現場担当者だ。マウスコンピューター 取締役 開発本部長の軣秀樹(とどろきひでき)氏も加わる。

例えば、ユーザーのマシンでハードウェア的なトラブルが発生した場合、ひょっとしたら開発や設計のとき潜んでいた問題が顕在化したのかもしれない。こうしたトラブルの原因を切り分け、必要に応じて解決するのは、ハードウェアに精通した開発部門の力が不可欠だ。

「コールセンターだけでは解決できない部分も多く、これらを解決するには関連部門との連携が近道。それを制度化したりルール化して運用するだけではなく、社内の文化として浸透させていくことが大切です。そうして解決する案件が増えることは、マウスコンピューター全体で課題解決に向かう文化が築かれていることを実感する瞬間でもあります。今後もその文化を浸透させ、お客さま満足度を高めていきたいですね」(佐藤氏)

  • マウスコンピューター 佐藤謙氏

    マウスコンピューター サービス本部長 佐藤謙氏

  • マウスコンピューター 上原直哉氏

    マウスコンピューター コールセンター 上原直哉氏

ユーザーサポートを上手に受けるコツ

最後に、マウスコンピューターのユーザーサポートを上手に受けるコツを挙げておこう。

  • 製品のシールや保証書に書かれているシリアルナンバーをメモしてから問い合わせること。すると、サポートスタッフがすぐにパソコンの構成を把握でき、速やかな問題解決につながる。

  • 電話で問い合わせる場合、事前にマウスコンピューターのWebサイトでヒートマップを確認。曜日と時間帯の混雑状況を調べて、できるだけ空いている時間帯に電話する。

  • ちょっとした質問や問い合わせ、電話する時間が取れない場合は、メール・チャット・LINE対応のオンラインサポートを積極的に利用する。結果的に、電話で問い合わせるよりも早く解決することも多い。