対策と、再打ち上げに向けた状況

こうした原因の調査結果を受け、まず断熱材については、延焼防止のためアルミシートを施工するという対策を取るとした。断熱材そのものに一周巻きつける形で施工し、実際に試験で燃焼しないことを確認したという。

一方の耐熱材についても、帯電防止のためと目的は異なるものの、やはりアルミシートを施工する。なお、断熱材は2層構造になっており、上面側(耐熱材と接している側)の断熱材と耐熱材をいっしょに包むように巻きつけて施工するという。こちらも、実際に試験で帯電しないことを確認したとしている。

さらにそのうえで、アース(接地)し、電気を地面に逃すようにしたという。

原因のうち、重要なのは静電エネルギーが帯電することであり、まずはこれを逃がすことが第一かつ、根本的な対策になるという。一方、液体酸素による耐熱材の割れについては、防ぎきれないところがあるとしている。

この処置については、試験などを経て十分なものであると確認したとしている。ただ、より良い対策、改善方法があるかどうかなどについては、今回の打ち上げ後に再度検討するという。

  • H-IIB

    火災の原因と対策。実際に再現試験などを行ったうえで、最も可能性の高い原因が特定された (C)MHI

なお、H-IIAロケット用のML1は、液体酸素の排出口と開口部壁面との距離が約600mmと離れていることから、排出された液体酸素が耐熱材に直接的には吹きかかりにくいという。ただ、一部に断熱材を施工しているところがあることから、ML1も同様の対策を施すかどうか、今後検討するとしている。

また、今回の火災に関する責任の所在については、MLは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が維持管理しているものではあるものの、これまで経緯や事実関係を考慮し、打ち上げ後に検討するとしている。

一方、火災を受けたロケット機体については、「火炎による熱の影響」、「消火作業による浸水の影響」、そして「煙の侵入による影響」について点検、確認を行い、良好に完了したとしている。

まず熱に関しては、温度計測のデータを分析した結果、機体に過大な熱影響がないことを確認。消火作業にともなう機体内部への浸水については、水分を除去する対処が取られた。また煙に関しては、タンク内などには窒素ガスによる内圧がかかっていたこともあり、内部への侵入がないことを確認し、機体表面に付着したススについては除去作業が行われた。

  • H-IIB

    火災を受けた機体の状況。点検や対処を経て、問題がないことが確認された (C)MHI

また火災を起こした発射台側についても、熱と水、煙について点検と確認を実施。その結果、火災が起きた断熱施工部以外については健全であることを確認でき、また断熱施工部についても対策を完了し、健全な状態に直したとしている。

これを受け、会見が行われた23日の昼前に行った再Y-0作業移行可否判断において、「Go」判断が下され、打ち上げに向けた作業が再開。このあと、24日9時ごろからロケットをVABから射点へ移動させる機体移動を行う予定となっている。

新しい打ち上げ日時は9月25日1時5分5秒で、打ち上げ予備期間は26日~10月31日。予備期間中の打ち上げ日時については、国際宇宙ステーションの運用にかかる国際調整により決定するとしている。

「次に成功させ、信頼性をつなげていきたい」

  • H-IIB

    打ち上げ前ブリーフィングの登壇者の中継画像。右から、藤田猛氏(JAXA鹿児島宇宙センター所長 打上安全監理責任者)、辻本健士氏(JAXA有人宇宙技術部門 HTV技術センター 技術領域主幹)、田村篤俊氏、鈴木啓司氏(三菱重工 宇宙事業部 MILSET長)

今回の火災が起きたこと、そして打ち上げが延期したことについて、田村氏は「火災というのはあってはならないこと。非常に厳しく、重く受け止めている」と語った。

また、「H-IIA、H-IIBロケットは、スケジュールどおり打ち上げる『オンタイム打ち上げ』を、顧客の方に高く評価していただいていた。今回、9月11日に予定どおり打ち上げらなかったことは、非常に厳粛に受け止めている」とも述べた。

そのうえで、「今回、火災を発生させてしまったが、しっかり原因を究明し、対策を講じた。次に成功させることで、信頼性をつなげていきたい」と語った。

また、これまで70機以上のロケットの打ち上げに関与したJAXAの藤田猛氏(鹿児島宇宙センター所長 打上安全監理責任者)は、その経験を踏まえた上で、「今回のような事象は初めてのこと。非常に重く受け止めている。打ち上げに向けて十分な対策を取り、ロケットの打ち上げ作業を再開した。安全・確実に打ち上げミッションを成功させるのが使命だと考えている」と語った。

そして最後に田村氏は、「11日に火災が起き、打ち上げが延期してから12日経った。この間、社内は懸命に動き、そしてJAXA、パートナー社にも迅速に動いていただき、ご協力いただいた結果、再打ち上げに臨むことができるようになった。尽力していただいた方々、そして打ち上げに期待を寄せてくださっている皆さまに、25日に良い知らせをお届けできるよう、一つひとつ確実に、慎重に作業していきたい」と、意気込みを語った。

  • H-IIB

    会見する田村篤俊氏(中継画像)

出典

H-IIBロケット8号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機(HTV8)の打上げ時刻について|三菱重工
MHI Launch Services(@MHI_LS)さん | Twitter
三菱重工|MHI 打上げ輸送サービス: 製品ラインアップ
ロケット発射台用塗料|オキツモ株式会社/Okitsumo Inc.
JAXA | H3ロケット

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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Twitter: @Kosmograd_Info