既報の通りIntelは10nmプロセスで製造したIce Lakeを第10世代Coreプロセッサとして8月1日に発売開始したが、8月21日にこれに追加する形で、Comet Lakeベースの8製品を追加した。Comet Lakeの特徴はこちら(Photo01)にまとめられているが、言ってみればIce Lakeを補完するような位置づけのシリーズということになる。

  • Photo01: 要するにWhiskey LakeというかCoffee Lakeというか、14nm++世代のコアをベースに、ConnectivityをIce Lake相当にして、TDPを7/15Wに落とした製品がComet Lakeということになる。

Photo02が今回発表された8製品のSKUである。Ice Lakeと同様に、こちらはTDP 15WのUシリーズとTDP 9WのYシリーズが4製品づつである。価格はこの原稿の執筆時点ではまだ未公開だが、Ice Lakeシリーズとそう大きく変わらないものと思われる。

  • Photo02: よくもまぁ15WのTDPで6コアを実現したな、という感じではあるのだが、その代償は低いBase Frequency(1.1GHz)ということになる。なんというか、これも色々無理がある気はする。

このComet Lakeの特長であるが、Photo01にも出てきた通り14nm++プロセスでの製造である。最大6コアの製品があるあたり、ベースとしてはCoffee Lakeに近いものと思われる。ただ既にCoffee LakeベースのUシリーズ製品は昨年から今年にかけて出荷されているが、これと今回のComet Lakeの違いとして

  • 対応メモリの違い:Coffee LakeはDDR4-2400、及びLPDDR3-2133のサポートのみだったが、Comet LakeはDDR4-2666とLPDDR3-2133、更にLPDDR4x-2933のサポートも追加されている。
  • TDPの違い:Coffee LakeはTDP 28W(cTDP Downで20Wも可能)と比較的高めであったが、Comet LakeはUシリーズで15W、Yシリーズで7Wまで引き下げている。
  • GPUの違い:Photo03は既存のCoffee Lake Uシリーズのシステム構成図、Photo04がComet Lakeのシステム構成図だが、CPUダイとPCHの他に、OPC(On Package Cache)を搭載しており、GPUはこれを利用したIris Plus 655ないしIris Plus 645であった。これに対し、Comet LakeではOPCは搭載されておらず、24EUのUHD Graphics 630相当となっている。
  • PCHの違い:Comet LakeではWi-Fi 6対応のAX201を内蔵した、Intel 400シリーズPCHが搭載されている(Thunderbolt 3は外付け)。

などが挙げられる。

要するにCoffee Lakeをベースに、コアそのものは特にいじらないままメモリコントローラ類の機能をアップし、かつPCHを充実させたのがComet Lakeということになる。

  • Photo04: Comet Lakeのシステム構成図。さすがにThunderbolt 3のコントローラまでオンパッケージには出来なかったようだ(ということは、この時点でIce Lakeとのパッケージ互換性もないことになる)。

もっともCPUコアに全く手が入っていない訳ではなく、Intel Adaptix Technologyに基づくIntel DTT(Dynamic Tuning Technology)を搭載することで、温度を上限に保ちつつ、少しでも動作周波数を引き上げる工夫が施されている。

このComet Lake、Intelによれば前世代のUシリーズ製品(これは確認したところWhiskey Lakeベースの製品という認識で正しいとの事)と比較して、Overall Performanceで16%の、Office 365を利用する際のProductivityで41%の改善がなされたとしている(Photo05)が、この向上の主な要因は、メモリ帯域の強化とDTTに基づく実効動作周波数の引き上げだとの事だった(つまりIPCは向上していない)。

  • Photo05: ちなみに脚注によれば、この41%アップは6コアのCore i7-10710UをcTDP 25Wで動作させた場合と、Whiskey LakeベースのCore i7-8565Uを15Wで動かした場合の比較だそうである。せめてTDPは一致させてほしかった。

こうなってくると、ではIce Lakeベースの製品との棲み分けは? という質問が当然でることになるが、その回答がこちら(Photo06)。まとめれば

Ice Lake: 高いAI処理性能により、AIベースソフトウェアを快適かつスマートに実行できる。加えて、Iris Plus Graphicsの搭載で、高いゲーム性能を享受できる。
Comet Lake: 様々なアプリケーションワークロードを処理可能。またCompute Intensiveなグラフィックアプリケーションや、4Kエンターテイメントなどの実行に適する。

となっている。

  • Photo06: AI性能を無視すれば、おそらくComet LakeにDiscrete GPUを組み合わせるほうがバランスが良いだろう。この辺りをOEM各社はIce Lakeベースの最終製品にどういう性格付けをするつもりなのか、は興味あるところだ。

要するに何が言いたいかと言えば、Ice LakeではAI処理とGPU性能こそ高いものの、CPU性能そのものは改善していないため、逆にAI処理やGPU性能はそこそこながら、CPU性能を高めたComet Lakeでラインナップを補完する、という話である。

ただEdge AI性能はともかくとして、GPU性能はやっとこれでAMDのRaven RidgeベースRyzen Gといい勝負という程度で、Gaming Notebook向けとするにはまだ性能が足りなすぎる。果たしてIce Lakeに適した用途のノートというのがどんなものなのか? というのは筆者には良く判らない。

それと、ついにモデルナンバーが5桁になってしまった訳だが、Intelによれば第10世代Coreに関してはPhoto07の様に2種類のモデルナンバーが混在する形になるとの事である。Comet Lakeは従来のモデルナンバーの延長(ただし世代が2桁になってしまったので、トータルで5桁になった格好)にあり、Ice Lakeがむしろ変というべきか。

  • Photo07: 合計すれば6桁、と言われればその通りなのだが。素直にIce LakeもSKU Numberを3桁にすればよかったのに、と思わなくもない。

このComet Lakeを搭載した製品も、2019年のクリスマス商戦のタイミングで出荷される予定との話である。また今回発表の製品はコンシューマ向けなのでvProの搭載などは予定されていないが、今後ビジネス向けにvPro搭載のラインナップも用意されるという話であった。

ところでIntel担当者は「DesktopのComet Lakeは?」という質問に対して「今回はMobileだけでDesktopの話は一切できない」と笑って躱していたが、この延長で考えると、それこそメモリコントローラの強化とIntel DTTの搭載、それとひょっとしてコア数の増加あたりが施された、いわば「Coffee Lake Refresh」がComet Lakeの正体なのかもしれない。以前Comet LakeではHyper Threadingが無効化されるかも、という話を聞いたのだが、今回出荷される製品は依然としてHyper Threadingが有効のままであり、Desktop版もこれに倣う形で出荷されるのかもしれない。

2019年8月21日23時 追記
情報解禁に合わせて、ark.intel.comでComet Lakeの価格も発表になった。Y SKUに関しては引き続き未公開だが、U SKUに関しては
Core i3-10110U $281.00
Core i5-10210U $297.00
Core i7-10510U $409.00
Core i7-10710U $443.00
となっている。