米Intelは8月1日、第10世代Coreプロセッサを正式に出荷開始した。

元々第10世代Coreプロセッサは今年5月27日のCOMPUTEXの基調講演の中で簡単に触れられ、更にその後のセッションで断片的に情報が開示されたものをこちらの記事でまとめてご紹介したが、この時点ではTDP 9WのIce Lake-Y、及びTDP 15WのIce Lake-U Iris PlusとIce Lake-U UHDの2製品が用意されている、という以上の情報はなかった。またDellの発表の中で

・Core i7-1065 G7
・Core i3-1035 G1
・Core i3-1005 G1

という製品がある事が明らかにされたが、これはIntelからの発表ではないため、そもそもこれが本当に正しいのかを含めて、どんなラインナップがあるのかは明らかにされていなかった。

  • Photo01: Ice Lakeこと第10世代Coreの正式出荷が発表された。写真はIce Lakeの半導体チップが形成された、個々に切り分けられる前のシリコンウェハ。

今回明らかにされたのは、第10世代CoreプロセッサはCore i3~Core i7まで合計11製品あること、及びTDP 9W/15WのY/U SKUだけでなく、TDP 28WのU SKUも提供されることだ。主な特徴は既にレポートした通りだが

・最大でも4Core/8Thread構成。L3は最大8MB
・Turbo Boost時の最大周波数は4.1GHz
・GPUは最大64EUのIris Plusが用意される(全SKUではない)。こちらの動作周波数は最大1.1GHz。
・Wi-Fi 6を搭載
・最大4ポートのThunderbolt 3コントローラを内蔵
・メモリとしてLPDDR4/x-3733、及びDDR4-3200をサポート

といったあたりである。違いとしては、以前はTDP 28WのSKUは言及が無かったのは、今回追加されたという点のみである。

その他の特徴は以前Product Briefに示された通りと思われるが、そのProduct Briefがいつの間にかダウンロード不可能になってしまった(上のリンクに飛ぶと、ログイン画面に移動する)。ということで復習の意味も兼ねて、特徴をまとめた部分のキャプチャをこちら(Photo02~03)に示す。

  • Photo02: Ice Lake-UとIce Lake-Yの機能の違い。この時点ではまだ28WのSKUは存在しない。

  • Photo03: 図版でLPDDR4/xを"DDR4/x"と略するのは紛らわしいのでやめてほしい。

Ice Lakeのラインナップを読み解く

さて表1が実際の製品SKU一覧である。

  • 表1

U SKUが6製品、Y SKUが5製品であり、

・GPUは32/48/64EUの3構成。32EUが末尾はG1、48EUがG4、64EUがG7となる模様
・48EU以上はIris Plusとして扱われる
・Core i7は4Core/8Threadで8MB L3、Core i5が4Core/8Threadで6MB L3、Core i3が2core/4Threadで4MB L3

といった特徴になっている。ちなみに価格は現時点でも未公表であり、これを搭載した製品は今年のHoliday Season(つまりクリスマス頃)に市場出荷予定、とされる。

さて、このIce LakeのうちU SKUの6製品について、同じくU SKU向けの現行製品であるWhiskey Lakeのものと比較したのが表2である。

  • 表2

CPUの数やL3キャッシュ容量などは同じであり、利用可能なメモリ種別とかGPUのEU数などはIce Lakeの方が当然優位ではあるのだが、動作周波数を比較すると大幅に下がっている事がご理解いただけるかと思う。

実際CPU Base Frequencyを比較した場合、Whiskey Lakeの同クラスと比較して周波数が上なのは唯一Core i7-1068G7のみで、それもTDPを25Wにしたから可能になったという話。Core i5-1035の3製品は、いずれもBase Frequencyが1GHz台まで落ちている。勿論実際には動的にFrequencyは上がるから単純にこれで性能が下がった、とは言いにくい(比較テストを行ってみないと判断は難しい)のだが、前にこちらの記事で指摘した様に、相当動作周波数が落ちている事になる。あとは18%と言われるIPCの向上で、どこまでその周波数ダウンを補えるか、というあたりであろうかと思う。そういう意味では、Core i7-1068G7は言い訳というか、後から急遽追加したモデルに見える(Configurable TDPを未サポート、というあたりも結構怪しい)。

まぁそうした事もあってか、リリースでも"Amazing integration on 10nm"とか"New Sunny Cove CPU microarchitecture"などをアピールする一方でCPU性能への言及はなく、AI性能とGPU性能に焦点を当てた形で性能をアピールしているのは、要するにそういう事と思われる。

ちなみにいきなり話が出てきた"Intel GNA"であるが、これはAI向けの話である。2017年のICASSPで、IntelはEdge向けのAI SolutionとしてGNA(Gaussian mixture model and Neural network Accelerator)というアクセラレータを将来のクライアント製品に導入することを表明した(Photo04)。詳細はこちらのpdfにあるので興味ある方はご覧頂きたいが、要するにAI向けコプロセッサである。これをIce Lakeで搭載した、という話である。

  • Photo04: CPUコアとは別に、AI処理専用のSRAMに繋がる形でDSPとGNAが搭載されている形。ダイ上ではUncore部分に搭載されるのだろうか?

最後に与太話を一つ。Ice Lakeの資料を探していてこんなページに辿り着いた(Photo05)のだが、"2017 Q3 Pre-release"とは一体何の事なのだろう?

  • Photo05: 何気にプロセスも"10nm+ process"とあるあたり、多分Cannon Lakeから一度作り直したものを10nm+と称しているのかもしれない。