ワコムは7月18日、21.5型の液晶タブレット「Wacom Cintiq 22」(以下、Cintiq 22)を発表しました。Cintiq 22の特徴は、なんといってもこの大型サイズの液晶タブレットながら、ワコムストア価格118,800円(税込)というコストパフォーマンスの良さ。新型の実力はいかほどか、一足先に触れてみました。

  • Cintiq 22、おはぎ氏

    メディア向け体験会でCintiq 22を語ってくれたのは、プロのイラストレーター、おはぎ氏

学生や趣味で絵を描く人も手に取れる液晶タブレット

ワコムの液晶タブレットといえば、イラストレーターや漫画家、アニメーターなど多くのプロフェッショナルが選ぶ製品。プロフェッショナルが選ぶだけあり、使いやすさや精度の高さなどには定評があります。ただし、価格もそれなりに高いのが難点。ワコムは今回発表されたCintiq 22と同じサイズのプロフェッショナル向け形液晶ディスプレイ「Cintiq 22 HD」も販売していますが、こちらはワコムストア価格で203,040円(税込)となかなか手が届きにくい価格です。

一方、ワコムが2019年1月から販売しているのが、15.6型サイズながら8万円以下というエントリーモデル「Wacom Cintiq 16」(以下、Cintiq 16)。フルHD(1,920×1,080ドット)の解像度があり、プロ用のペン「Wacom Pro Pen 2」に対応する本格的な仕様です。ワコムストア価格が73,224円(税込)と、非常に手に取りやすい値段ということで、ワコムファンの間でも衝撃をもって受け入れられました。今回発表されたCintiq 22は、このCintiq 16と同シリーズです。

  • Cintiq 22

    Cintiq 22と撮影するマイナビニュース・デジタルの林編集長。発売済みのCintiq 16より画面サイズがかなり大きくなりました

  • Cintiq 22

    プロフェッショナル用に搭載されている物理ボタンがCintiq 22にはなく、すっきりとしたデザイン。本体サイズは幅570×奥行き40×高さ359mm、重量5.6kg(いずれもスタンドを除く)。VESAマント100mmに対応しています

プロフェッショナル用との大きな違いは、液晶タブレット本体にファンクションボタンなどの物理ボタンが搭載されていないこと。また、マルチタッチ機能やダイレクトボンディングと呼ばれる視差を減らす方式にも非対応です。ただし、最大表示色数、視野角やコントラスト比など、絵の表現に重要な仕様はプロ向けと遜色ないレベル。ワコムは「今後プロになる可能性のあるユーザーにはちゃんとしたものを使って欲しい」とします。

スペックの概要は、画面サイズが21.5型、液晶パネルがIPS方式、解像度が1,920×1,080ドットのフルHD、視野角が水平垂直とも178°、最大輝度が210cd/平方メートル、コントラスト比(標準値)が1,000:1、応答速度(標準値)が22ms、色域(標準値)がsRGBカバー率96%、NTSCカバー率72%です。

【動画】実際にCintiq 22を使用しているところ。ペンはプロ用の「Wacom Pro Pen 2」を使用可能で、筆圧感知は8,192レベルまで対応します。ペンのお尻は標準で消しゴム機能が割り当てられています
(音声が流れます。ご注意ください)

  • Cintiq 22
  • Cintiq 22

    専用の着脱式ペンホルダーが付属するのもCintiqモデルの魅力。従来までのスタンド型と違って倒したり、机の上のスペースを取ったりしません。ペンホルダーは本体の左右どちらにも装着できます

  • Cintiq 22

    ペンホルダーには芯抜きの機能がついているほか、3本の芯が収納できるようになっています。芯はなくしやすいパーツだけにこれは便利

画面が大きいだけで描くストレスが大幅減!

筆者は2019年1月発売のCintiq 16発表会に参加し、その描き心地の良さにいたく感心しました。しかし、今回Cintiq 22を体験したところ「5万円高くなっても、机にスペースがあるなら買うのはこっちだな!」と確信しました。

その理由は2つ。もっとも大きいのは、液晶タブレットの描き込みサイズ面の大きさによるメリット。15.6型のCintiq 16では、解像度の高いイラストなどは描き込みたい部分を拡大して細かい作業をして、それから縮小して全体をチェックという作業が発生しがちです。一方、Cintiq 22は画面の表示サイズが漫画原稿用紙よりやや小さい程度。拡大縮小なしでも絵を描きやすいというメリットがあります。Cintiq 22の解像度はCintiq 16と同じフルHDなのですが、個人的には解像度にもの足りなさは感じませんでした。

  • Cintiq 22

    拡大縮小の必要なくサクサクとイラストを描けるのが気持ちいい。描くことにストレスを感じないのは重要なポイント

Cintiq 22のもうひとつの魅力は、Cintiq 16では別売りだったスタンドが標準で付属するところ。専用スタンドはでは、Cintiq 22を無段階で16~82度まで好きな角度に調整できます。しかも、座った状態でも角度を変えられます。絵を描くときは画面を寝かせ気味にセットしたいけれど、メール処理やWEBブラウズなどは画面を立てて使いたいなど、頻繁に画面の角度を変更したい人にとってかなり便利な機能です。

  • Cintiq 22

    スタンドが標準装備となったのもうれしいところ

【動画】本体背面のロックをつまんで本体を傾けるだけで、簡単に角度を調整できます
(音声が流れます。ご注意ください)

  • Cintiq 22

    角度はほぼ無段階で16~82度まで傾けることができます

ただ、Cintiq 16のほうが使いやすいと感じた点も。入出力ケーブルのインタフェースで、Cintiq 16は電源、USB、HDMIを1本で接続できる三分岐ケーブルを採用していたのですが、Cintiq 22ではUSB、HDMI、電源ケーブルを1本ずつ接続する形式になりました。

  • Cintiq 22

    USBにHDMI、電源ケーブルを1本ずつ接続。ケーブルを隠すカバーがついているので、後ろから見ても比較的すっきりしています

  • Cintiq 16

    こちらはCintiq 16の接続部。電源、USB、HDMIがまとまった専用ケーブルです(反対側で3種類のコネクタに分岐)

Cintiq 16を使用しているプロイラストレーター

メディア向けの体験会では、同シリーズのCintiq 16を使っているというプロのイラストレーター、おはぎ氏によるゲストトークもありました。

  • 小学生のころからワコムの板タブレットを使っていたというおはぎ氏。小学校ではおはぎ氏を含めて、3人が板タブレット使いだったそう。「Cintiq 22は安定した姿勢でイラストが描けるので疲れにくい」とコメント

おはぎ氏はなんと、小学生のころからワコムのタブレットを使っていたという生粋のワコムユーザー。ただし、液晶タブレットは高額のため、今年になるまではずっと板タブレットを利用していたといいます。比較的低価格のCintiq 16が1月に発売されたことで「この価格なら買える!」とCintiq 16を導入したという経緯があるそうです。

今まで板タブレットで満足していたものの、実際に液晶タブレットを導入すると「こんなに違和感なく絵がかけるんだ!」と感動したと。「今まで自分は線画を描くのが苦手だと感じていたのですが、液晶タブレットを導入してからは思ったように描けるようになって苦手意識がなくなりました」として、イラスト制作の作業時間も短縮されたと語ります。

  • おはぎ氏の作品

また、トーク内でCintiq 22の使い心地について質問されると、やはり画面の広さに感動したとのこと。絵を描く途中に拡大縮小する動作が減ったほか、Cintiq 16では置き場に困っていた肘の位置も安定したそうです。また、Cintiq 16とCintiq 22共通で気に入っているのが、液晶表面の質感。少しざらっとした抵抗のある描き心地は、紙に絵を描く感覚に近いといいます。

おはぎ氏はプロのイラストレーターですが、エントリーシリーズのCintiqモデルには十分満足しているといいます。プロはもちろん、同人作家や趣味で絵を描いている人など、今まで「ワコムの液晶タブレットは価格面でハードルが高い」と感じていた人にとって、かなり導入しやすい製品ではないでしょうか。

なお、 2019年8月16日までにワコムストアで「Wacom Cintiq 22」を購入するともれなく、ワコム監修のペンタブレット用2本指グローブがもらえます。

  • 2本指グローブは液タブで絵を描くときに便利。手のすべりが良くなり、画面に皮脂が付くのを防ぐ効果も