フィルム時代からのコンセプトを貫き通し、高画質コンパクトデジカメの代名詞的な存在として根強い人気を誇るリコーの「GR」シリーズ。3月中旬に登場した最新モデル「GR III」は、シリーズ初の手ぶれ補正機構を搭載しながら、旧モデルよりもボディを小型化した点が話題になりました。さっそくGR IIIを購入したという落合カメラマンですが、GR IIIを「面白くて恐ろしいカメラ」と評していました。そのワケは…!?

これぞ「完成形GR」の姿?

私と“デジタルGR”の付き合いは、そんなに古くはなく深くもない。APS-Cセンサーを初めて搭載した初代「GR」を入手していたのみで、それ以前の「GR DIGITALシリーズ」(2005年~)には手を出していなかったのだ。ただし、“フィルムGR”に関しては「GR1v」を所有。フィルム時代はもちろんデジタルになってからも、うるさ型の写真愛好家とプロに愛用者が多い……私の中では、そんな印象にほぼ収れんし尽くしている「GRの歴史」であり、適度な距離を保ち続けてきた関係でもある。

  • リコー コンパクトデジカメ「GR III」。シリーズ初のボディ内手ぶれ補正機構を搭載しながら、従来よりも小型化したのが特徴。実売価格は税込み11万円前後

    リコーが3月に発売した高級コンパクトデジカメ「GR III」。シリーズ初のボディ内手ぶれ補正機構を搭載しながら、本体サイズを従来よりも小型化したのが特徴。実売価格は税込み11万円前後

基本「写りの良いコンデジが欲しい」という気持ちだけで(もちろん“モノとして”上質であることは大前提として)GR1vとGRを手に入れてきた私が、GR IIは華麗にスルーののちにGR IIIを入手することになったのは、初代GRを通じて欲しいと思っていた機能がズバッと与えられていたからだった。なかでも一番ガツンときたのが手ブレ補正機能の搭載。おかげで、GR IIIでは「撮れるもの」が確実に増えている。確実に、だ。

ボディサイズが絞られたことも、手ブレ補正と同じぐらい嬉しかった。いや、手ブレ補正機能を搭載してもなお、GRとして明確なサイズダウンを実現しているところは手放しで賞賛すべきポイントだろう。聞けば、このボディサイズ、1/1.7型センサーを搭載していたGR DIGITAL IVと同等なのだとか。我が人生にも投影したい愚直な進化である。

画素数アップももちろん大歓迎。画素数を向上(16MP→24MP)させながら常用上限感度はGR II比2段向上のISO102400を実現しているし、GRでおなじみのクロップ機能を使うのであれば、なおさら元の画素数は多いに越したことはないからだ。

とかナンとかいいつつ、私はクロップ機能は使ってない。初代GRのときにちょっと試しただけで「35mmや50mmに逃げたらいかーん! GRで撮るのなら何が何でも28mm(相当の画角)でカタをつけなきゃならーん!!」と思うに至り、それ以来ほぼ封印状態だからだ。でも、万一50mm相当の画角を有する「GR III-46(フォーシックス)」なんてのが出たら、あっさり買い足しちゃうかも? 50mmで完結するGR。こちらはクロップで80mm前後の画角が得られるのも悪くない。使いこなしが鬼のように難しくてタマらんでしょうなぁ。

  • 超高感度時のノイズは、フィルムの粒状性を意識したものであるようだ。個人的には、もう少し硬質なノイズでもいいような気がするし、少しだけカラーノイズも気になるけれど、これはこれで悪くない(ISO6400、1/25秒、F2.8)

  • マクロモードを新設。同モード時は、レンズ先端から6~12cmの間でピントが合う。けっこう限られる撮影条件ではあるけれど、そのときのボケ味はご覧の通りの美しさ。作り込みに抜かりはない(ISO100、1/250秒、F4.0)

  • 得も言われぬ立体感の獲得は、開放絞りによるボケの効果と成り行きまかせの(補正をしていない)周辺光量のおかげ。ISO3200ならば、誰もが納得の高感度画質が得られていることも分かる(ISO3200、1/100秒、F2.8)