マウスコンピューターが夏商戦向けの新型PCの投入を本格化している。今回は同社の飯山事業所(長野県飯山市)を訪問し、今回の新製品や今後の製品戦略について詳細に話を聞くことができた。

同事業所はマウスコンピューター全PCブランドを一手に担う生産工場を擁しており、この機会にあわせて、「日本品質」をうたう同工場の内部もレポートする。

  • マウスコンピューター飯山事業所。同社製品の開発から生産まで一手に担う

インテルCPUの供給問題は? AMDベースの新製品は?

マウスコンピューターの小松永門社長は、直近のビジネス環境についてボーナス商戦や消費増税を控え例年よりも進捗が早めという認識だが、来年の1月にかけての盛り上がりも想定しているという。2018年から業界を悩ませているインテルのCPU供給難は未だ尾を引くが、それでも(高性能SKUなど)一部厳しいものを除けばだいぶ改善している。またWindows 7のサポート終了が近づいていることから、年末~年明けにかけて積極的に動きやすい状況が来るという見方だ。

  • マウスコンピューターの小松永門社長。国内PC市場の年末年始の盛り上がりを予想

また小松社長は、このような状況の中で、「AMDさんにも期待している」と話す。さっそく、実際にAMDのプロセッサを採用した開発中のPCを公開し、発言を裏付けた。

Kaby Lake-G上位モデルを初採用、純AMDの"赤いノート"も始動

公開されたのは、まずはIntel製CPUに、AMD製GPU(Radeon RX Vega M GH)を統合した「Kaby Lake G」(開発コードネーム)を搭載した13.3型ノートだ。Kaby Lake GはIntelとAMDがタッグを組んだ異色のプロセッサパッケージだが、これを搭載したノートPCなどは既に製品化され市場にも出回っている。今回のマウスの開発中製品で注目なのは、Kaby Lake Gシリーズのなかでも最上位モデル「Core i7-8709G」を採用したところだろう。

  • Kaby Lake Gの上位モデル「Core i7-8709G」を搭載する”世界唯一”のノートPC

同社調べでは、Core i7-8709Gを搭載するノートPCは世界中を見まわしても存在せず、製品化されれば「世界唯一のノートPC」になるそうだ。当然パフォーマンスは高く、開発途中ではあるがCore i7-8750HにGeForce 1060を組み合わせた際と同等のスコアをたたき出しているという。性能が高い分、発熱の処理などは難しくなるが、それでも本体サイズは本体重量1.6kg、厚さ19.8mmを計画し、持ち歩きできる13.3型ゲーミングノートとして開発中だ。

  • 「Core i7-8709G」搭載の開発実機。NEXTGEARブランドの13.3型ノートとして製品化予定で、開発中のサイズ/重量は約W307×D215×H19.8mm/約1.6kgで、モバイルが十分視野に入る

そしてもう1台、マウスコンピューター史上初のAMD製APU搭載の純AMDベースのノートPCも開発中だ。APUは「Picasso」(開発コードネーム)のRyzen 5-3500Uを採用しており、開発途中のパフォーマンス計測ではCPU性能(Cinebench)でCore i5-8265Uに匹敵し、グラフィックス性能(3DMark)では同比で2倍程度のスコアを達成しているという。仕様に不明な部分は多く残るが、このAPU性能だけでも使い勝手のよいゲーミングノートとして仕上がるだろうと期待が持てる。

  • まだ仕様に謎の部分も多いAMD RyzenベースのノートPC。開発中のスコアだが優秀なCPU性能とずば抜けたGPU性能を見せる

今年の下半期にかけ、さらに「新しいもの、面白いものを」

マウスコンピューターといえばIntelベースでいち早くPCを製品化するイメージが強いが、同社開発本部で製品企画を担当する今村究氏は、「新しいもの、面白いもの」をユーザーに提供するのが同社の基本的な考え方だと説明する。Core i7-8709G搭載PCの製品化はその考えによるものであり、2019年の後半にかけAMDは積極的に提案していくという。

  • マウスコンピューターで製品企画を担当する今村究氏

今村氏は他にも、2019年の後半からに向けてのマウスコンピューター製品開発の方向性をいくつか示してくれた。キーワードとなるのは、「ナローベゼル化」「ディスプレイ選択肢の拡充」「キーボードの改良」「薄型軽量ノートPCの開発」だ。

  • 2019年後半に入る前に、こちらは2019年前半の振り返り。ブームにもなったIoT翻訳機への参入などもトピック

ナローベゼル化では、ノートPCのディスプレイでベゼル部分の面積削減を進める。同じフットプリントでもディスプレイサイズを大きくできるため、大画面化やダウンサイズのメリットがある。同社の現時点のラインナップではナローベゼル製品の比率は50%程度にとどまるが、来年にかけ、ほぼ全ての製品をナローベゼル化したいと述べる。

キーボード改良では、ノートPCの日本語キーボードをイチから設計しなおす。これまでの同社キーボードでは、使い勝手よりも経済合理性を優先した部分があった。コストアップになったとしても、日本のユーザーを向いてキーピッチの拡大やキー配置の最適化を実施する。2019年後半から順次、この改良後の新キーボードを導入していく計画だ。

  • ナローベゼル化を急速に進める計画

  • ノートPCのディスプレイ選択肢を拡充

  • ディスプレイ拡充では、DIVEの有機ELモデルを開発中

  • 左が開発中の有機EL採用DIVEで、右が従来液晶。比べると有機ELの黒の引き締まりや、鮮やかな発色が際立つ

  • 使い勝手こそ優先し、キーボードを大幅改良する

薄型軽量ノートPCの開発にも意欲的に取り組む。まずは6月24日に新製品「m-Book Xシリーズ」を投入する。このXシリーズのコンセプトは「性能と重量と価格のバランス」だ。10万円台前半の普及価格帯でありながら、1.13kgの重量と14.5時間のバッテリ持続時間に、GeForce MX250のグラフィックス性能を盛り込んだ。今村氏は、「薄型軽量という部分で他社を追う立場になるので、スペックと価格の両立では負けたくなかった」と振り返る。薄型軽量ノートPCへの挑戦は続けるとしており、今後はXシリーズを発展させた1kg切りの製品などにも取り組みたいとしていた。

  • 今後は薄型軽量ノートPCの製品展開を本格化する。まずは6月24日に「m-Book X400S」を発売する。性能と価格のバランスは妥協せず、外装にマグネシウム合金を使用することで堅牢性と軽量化も両立した