Industry 4.0をもたらすモデル拠点

ル・ヴォードライユ工場は、多くのデジタルツールを採用したことで保守コストを30%削減すると同時に全体的な機器効率を7%向上させている。その結果、昨年に世界経済フォーラム第12回ニュー・チャンピオン年次総会において、現代の製造業にIndustry 4.0(インダストリー4.0)をもたらした「世界で最も先進的な9つのモデル拠点」の1つに選定された。

さらに、企業におけるデジタル変革を支援するフランスの組織「Alliance Industrie du Futur(AIF)」から、デジタル化により組織的な生産や革新的なプロジェクトを生み出した企業に授与される「Vitrine Industrie du Futur」を受賞している。

既存設備を活用しつつ最新ツールを組み込んでいる点や持続的な改善という観点からも、このような評価を受けるのもうなずける。そして、本社ビルにおける取り組みとコンセプトが一貫していることも特筆すべきことであり、「RE(Renewable Energy)100」や「EP(Energy Productivity)100」への参画が単なるポーズ取りではないことを示すものだろう。

  • 「Vitrine Industrie du Futur」のトロフィー

    「Vitrine Industrie du Futur」のトロフィー

継続的な改善の必要性

当初、スマートファクトリー化のプロジェクトメンバーはマネージャークラスのフルタイム従業員が7人、自動化技術やエネルギー効率など専門的な知識を持つ4人でスタートしたが、課題もあったようだ。現場レベルの従業員は、新しいテクノロジーへの理解が必要となることから、従業員のマインドセットを変革することが求められた。

そのため、マネージャーの役割は大きく、専門家と従業員のインタフェースになることを心がけたという。専門家はテクノロジーがもたらす影響を把握しているが、従業員は作業が簡便化されなければ納得しないため、マネージャーは中間の立場として双方に配慮したことで、現在では従業員のスマートファクトリーへの理解は深くなっている。

同社は、インダストリー4.0を進める上で「Mass customization production(カスタマイズ製品の大量生産)」「The energetic transition(力強い移行)」「The growing range of new products(新製品が成長する範囲)」「Innovation and Operational excellence(イノベーションとオペレーショナルエクセレンス)」「The widespread adaption of digital technologies(広範囲にわたるデジタル技術の適用)」の5つをキーポイントとして挙げている。

これは、同社におけるインダストリー4.0をユーザーやパートナーに説明する際、具体的なイメージを提示するとともに、この種のイノベーションや技術の活用法は見えにくいことから、1つ1つのコンセプトを説明し、理解してもらうためだという。

Rigaudeau氏は「最新のツールなしでは、強い産業とは言えない。古い生産設備であろうが、試行錯誤することで最新の設備に置き換えられる。そして、継続的な改善に取り組んでいる。然るべき姿勢とツールを駆使したことで従業員のマインドセットも変革できた」と力を込める。

また、Schneider Electric Plant ManagerのEmmanuel Morice氏は、同社におけるスマートファクトリーの定義について「機械とOT(Operational Technology)、ITが融合して1つになることだ。リーンマネジメントは、産業的なパフォーマンスを達成するための大原則であり、これによりスマートファクトリーが成り立つ。リーンマネジメントとスマートファクトリーの違いとして、スマートファクトリーはリアルタイムに大多数の人がデータにアクセスできる点が挙げられる。これまで対応できなかったことに対し、解決策を与えることを可能としている」と話す。

  • Schneider Electric Plant ManagerのEmmanuel Morice氏

    Schneider Electric Plant ManagerのEmmanuel Morice氏

最後に、理想的な工場の姿に関して問われたMorice氏は「工場が多様な要求を満たし、ダイナミックな改善に継続して取り組めば、顧客、社員、株主、社会の期待は常に変化する。この期待に応えることが理想の工場の姿であり、常にチャレンジしている」と強調していた。