チケットの申し込みが始まり、早くも盛り上がりを見せている「2020年東京オリンピック・パラリンピック」。デジタル写真配信の世界最大手であるゲッティイメージズ(Getty Images)の日本法人であるゲッティイメージズ ジャパンが、東京オリンピックで使用するロボットカメラなどの最新機材を公開しました。一瞬の感動を逃さずキャッチし、すぐさま世界に配信できる仕組みを、いち早くチェックしてみましょう。

  • 2020年東京オリンピック・パラリンピックに投入されるゲッティイメージズの最新ロボットカメラの一例。左は遠隔で移動や撮影ができるロボットカメラ、右はサッカーのゴールの瞬間をとらえる小型カメラシステムです

EOS-1D X Mark IIを遠隔で操作し、真上から撮影

水泳などの屋内競技で、このように真上から選手を撮影した写真を見たことはないでしょうか。フォトグラファーが横から撮る一般的な写真と違って、目を引く印象的な写真になっています。現代のオリンピック報道には欠かせない視点といえるでしょう。

  • オリンピックをはじめとする屋内競技の試合では、真上から撮影した写真や動画が増えています。カメラマンが高い位置に陣取っているわけではなく、遠隔で制御できるロボットカメラが撮影しているのです

  • メダル獲得が決まった瞬間の選手の表情は、地上のフォトグラファーよりも上部に設置したカメラのほうが良い写真が撮れる場合もあります

そうした真上からの撮影を可能にしたのが、ゲッティイメージズがキヤノンの協力を得て開発したロボットカメラです。あらかじめ、競技場の天井やキャットウォークにこのカメラを設置しておき、離れた場所から遠隔で撮影する仕組みです。

  • キヤノンが協力して開発したロボットカメラ。カメラの操作や撮影だけでなく、カメラの移動も遠隔で制御できる優れモノです

装着されていたのは、キヤノンのフルサイズ一眼レフ「EOS-1D X Mark II」と望遠ズームレンズ「EF70-200mm F2.8L IS II USM」。機材自体は市販のものと同じですが、電動でレンズのズーム操作をするためにモーターとギヤが組み合わさっており、見た目のインパクトはかなりのものです。

  • ロボットカメラに用いられていたのは、キヤノンのフルサイズ一眼レフ「EOS-1D X Mark II」。装着されていたレンズは望遠ズームレンズ「EF70-200mm F2.8L IS II USM」です

  • レンズの先端を固定する金具を変更すれば、ほかのレンズも使用できます

  • レンズのズームリングと、それを動かすモーターがギアでつながっています

  • カメラはパン、チルト、回転が可能

  • EOS-1D X Mark IIは有線LAN端子があるので、ダイレクトにネットワークに接続できます

このロボットカメラを使えば、パソコンの画面に表示されるライブビューを見ながら離れた場所からカメラを上下左右や回転方向に動かせます。遠隔操作でのピント合わせやズームも調整でき、カメラのそばにスタッフがいる必要はありません。コントローラーはジョイスティック式で、ネットワークでカメラとつながっているパソコンにUSBで接続されていました。

  • 遠隔でロボットカメラを操作しているところ。hpの高性能ノートPCを利用していました

  • ロボットカメラの制御に使うUSB接続のコントローラー。ジョイスティックの上下左右でパンとチルトが、ジョイスティックを回すとカメラ自体が回転(ロール)します

  • パソコンのライブビュー画面。カメラの設定値のほか、ヒストグラムなども表示されます

コントロールや画像の転送には、ゲッティイメージズが独自に構築したネットワークを使用します。このネットワークは、現場に設置したゲッティイメージズのサーバーともつながっており、写真編集者が写真を選んで配信するインフラにもなっています。初の試みとして、東京オリンピックでは通信事業者(NTT)と提携して新たなネットワークを開発。ゲッティイメージズの機材を検出して自動的に接続できるようになるなど、配信の高速化に一役買う予定です。

このロボットカメラ、1ユニットの価格はおよそ2万ドル(約220万円、カメラ本体やレンズ、コントローラーなどは除く)。現在、これと同じ最新のタイプは2台しか存在しないそうですが、東京オリンピックでは10~20台を設置することにしています。

撮影した写真を早く配信するため、ゲッティイメージズは膨大な写真を迅速にセレクトして配信するソフトウエアも独自に開発。「FOCUS」と名付けられたこのソフトは、高速連写した一連の写真からベストショットを瞬時に選ぶ機能を搭載しています。こうした独自のシステムによって、重要な競技や場面では撮影後1分以内に世界中の顧客に写真を配信できるそうです。

  • 独自の閲覧用ソフト「FOCUS」の画面。動画の中から1コマを選ぶようなイメージで、ベストショットを素早く選択できます

サッカーのゴールネットではソニー「RX0」が活躍

会場には、ゲッティイメージズがサッカーの撮影用に開発した小型カメラも展示されていました。ゴールネットに設置することで迫力のあるゴールシーンの撮影を可能にしており、同じシステムを東京オリンピックでも採用することが決まっています。

  • ゴールネットを揺らすダイナミックなゴールシーンを捉える小型カメラ

この小型カメラの正体は、ソニーが2017年10月に発売した「Cyber-shot DSC-RX0」でした。アクションカムサイズの小型ボディに1型のCMOSセンサーや広角24mm相当のレンズを搭載した高画質モデルです。前述の一眼レフと比べれば超小型ともいえるサイズと、アームによる自在なセッティングが特徴で、どのようなベストショットが撮れるのか期待がふくらみます。

  • カメラの正体は、ソニーの「Cyber-shot DSC-RX0」でした。周囲にたくさんの三脚穴が開けられたSmallRig製のケージに収められています

  • RX0は、関節を備えるアームで支えられており、設置の自由度が高いのも特徴です

プールでは独自開発の水中カメラも使われる

実機の展示はありませんでしたが、ゲッティイメージズが開発した完全防水の水中カメラも紹介されました。これも遠隔操作可能なロボットカメラで、水泳選手を真下から撮影できます。防水であることを活かして、プールサイドからの撮影にも使われます。

  • ゲッティイメージズオリジナルの水中ロボットカメラ。魚眼レンズが装着されており、超ワイドな範囲を撮影できます

  • このような印象的な写真が撮れます

ゲッティイメージズは、東京オリンピックに60人以上のフォトグラファーを動員するほか、100名以上のサポート要員を置くという気合いの入れようです。カメラやパソコンなど、投入する機材は実に1,000アイテム以上になるとしています。

同社は公式フォトエージェンシーということで、期間中は毎日すべての会場を取材します。大会中に撮影する写真は約200万枚にのぼると想定し、そのうち約10万枚が実際に配信されると見込んでいます。ライブでの観戦がもちろん魅力的ですが、テレビや新聞、Webメディアに掲載される動画や写真からも目が離せない大会になりそうです。

著者プロフィール
武石修

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。