NTTドコモが26日に実施した、2018年度の決算説明会によると、同社の営業利益(通期)は1兆円超の増収増益でした。しかし2019年度について、代表取締役社長の吉澤和弘氏は「2,000億円規模のお客様還元を実施するために減収減益になる」との厳しい見方を示します。最大4割の値下げになる新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を6月より提供開始することで、業績が大きく落ち込むとの予想です。
2019年度は「利益の底に」、減収減益を予想
2018年度の営業利益は1兆136億円で、セグメント別に内訳を見ると「通信事業」が8,663億円、「スマートライフ領域」が1,473億円となっています。新料金プラン導入により影響を受けるのは通信事業。このためドコモでは「(非通信事業の)スマートライフ領域で収益を上げることで、値下げ還元の影響をカバーしていく」(吉澤社長)と説明します。
そもそもドコモでは、総務省が提言する「分離プラン」「4割値下げ」に沿った新料金で、最終的に「最大4,000億円規模のお客様還元」になると見込んでいます。つまり、その半分(2,000億円規模)が2019年度に集中するとの見方です。その詳細について、吉澤社長は「値下げにより、実は2,500億円規模の減収になります。でも月々サポートが順次終了していくので900億円の戻りがある。docomo withにより継続して400億円が出ていくため、トータルで2,000億円のお客様還元」と説明しました。
「新料金プランの導入は、他社に先んじて競争力を高め、顧客基盤を強化するということ。減収減益の2019年度を利益の底にして、できるだけ早期に利益の回復を目指していきます」と吉澤社長。当面は2023年を目処に、収益を元の水準まで回復させる予定ですが、もっと早い時期に回復できるよう努力していく、と強調しました。
dポイントの利用を拡大
吉澤社長は質疑応答でメディアからの質問に回答。dポイントに関する施策については、「市場では1,627億ポイントが使われました。その半分弱にあたる768億ポイントが、マクドナルド、ローソン、マツモトキヨシなどの提携先で使われています」と吉澤社長。
企業のポイントサービスが活性化する昨今ですが、ドコモでもdポイントクラブ会員数が7,000万を突破。dポイント提携先店舗数は10万店舗を突破し、d払いについてはアプリダウンロード数が400万を突破したとアナウンスしています。
吉澤社長は、dポイント利用者7,000万人のうち1,000万人以上がドコモ以外の契約者であることも明かし、「これをフックに様々なサービスに結びつけていけたら」と説明しました。
通信業界は競争の繰り返し
NTTドコモは新料金プランにより2019年度は減収減益の見通しで、また、楽天が通信事業に新規参入してきます。こうした現在の状況について改めてコメントを求められた吉澤社長は、これまでも通信業界ではこうした競争を繰り返してきたと説明し、「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)が導入されたときも厳しかった。他社さんが魅力的な料金プランを発表したときも」と苦笑いしました。
一方で、今後は純粋に通信だけの競争にはならない、との見方も示しました。「様々な企業でデジタル化が進み、様々な業界がトランスフォーメーションする時代。ドコモでも5G、AI、クラウド、IoTなどを通じて産業が発展する支援を行っています。今後は、通信だけで事業を語れなくなると認識しています」。
現在の+dの取り組みを推し進め、パートナーと新たな価値を”協創”していきたいと吉澤社長。ドコモの会員基盤を活かし、パートナーとビジネスを拡大していく「デジタルマーケティング」も積極的に推進していくと説明しました。
5Gの商用化が間近に。9月20日からプレサービス
26日の決算発表会では、2020年度以降を見据えた取り組みについても説明がありました。去る4月10日に5G周波数の割当も決まり、ドコモでは「3.7GHz帯および4.5GHz帯の200MHz幅」と「28GHz帯の400MHz幅」の使用が決定。すでに5Gの特徴を活かしたエリア構築に着工しているとのことです。
ちなみにドコモではラグビーW杯の開催にあわせ、2019年9月20日に5Gプレサービスを開始します。吉澤社長からは、新たなサービスの体感、ソリューションの創出を実現するとの説明がありました。
同社は5Gスマートフォンをハブにして、拡張現実デバイス、撮影デバイス、ウェアラブルデバイスなどと連携する「マイネットワーク構想」を準備中。最先端のMR技術を有するMagic Leap社と資本・業務提携するなど、5G時代に向けて歩みを進めていると、5Gへの取り組みを強調しました。