2016年発足とeスポーツチームとしての歴史は浅いながらも、その年に開催された「E-Sports Festival」香港大会にて、シューティングゲーム『レインボーシックス シージ』でアジアチャンピオンを勝ち取るなど、世界的な活躍をみせる野良連合。ゲーミングハウスを運営する「e’sPRO」とコラボレーションし、チームメンバーがゲーミングハウスで共同生活している点でも注目を集めている。

今回、野良連合のオーナー 貴族氏と『レインボーシックス シージ』のプレイヤーであるPapilia選手、ReyCyil選手、Merieux選手に、チームやゲーミングハウス、eスポーツ業界について話を聞いてきた。

舞台はあくまで世界! チーム発足5年以内の優勝を目指す

――野良連合は昨今のeスポーツブームとほぼ同時に発足しましたが、ブームとともに歩んできた立場から、eスポーツの現状についてはどう感じていますか?

野良連合 オーナー 貴族氏(以下、貴族):eスポーツという言葉が認知され、多くの人に見られるようになった印象です。オフライン大会の会場では多くのファンが来てくださるようになりました。女性の観客もビックリするくらいいらっしゃるんです。

また、いろんなところから、チーム運営についての話を聞かれるようになりました。ただ、スポンサーから聞かれるのはいいんですが、これからeスポーツに参入し、チーム運営をしていきたいって企業がタダでそのノウハウを手に入れようとしてくるのは、ちょっと話が違うんじゃないですかね。おっと、話が脱線しました。まあ、それだけ注目度が上がっているってことです。

たとえば、バトルロイヤルゲームの『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』は、ほかのゲームに比べて“観る専”の人が多い印象です。この前、韓国で試合をしてきたのですが、観客の7割くらいは女性で、手にアイドルのコンサートで使うような「選手の顔写真を貼り付けたうちわ」を持って応援している人もいました。

こういったムーブメントが起きているのは、eスポーツよりもYouTuberのおかげかもしれません。決してゲームの腕が高いわけではないですが、おもしろく紹介しているので、ゲームの認知度が上がっているのでしょう。

そして、ゲームに興味を持った人のなかで「自分でプレイしない層」が、プロプレイヤーの試合を観戦するようになったのだと思います。日本だと、野良連合のメインタイトルでもある『レインボーシックス シージ』の人気が急上昇していますが、話を聞いてみると、やはりYouTuberの動画がきっかけで知った人が多いみたいです。

  • 野良連合のオーナー 貴族氏

――野良連合は『レインボーシックス シージ』や『オーバーウォッチ』『PUBG』などのタイトルで、世界を中心に活動していますが、拠点の日本で人気の対戦格闘ゲームへの参入は考えていないのでしょうか。

貴族:日本で流行っている対戦格闘ゲームといえば『ストリートファイターV AE』が代表的だと思うんですが、売上でいうと8万本くらいなんですよね。それに対して『レインボーシックス シージ』は300万本。日本でも一番人口が多いタイトルと言われています。

また、対戦格闘ゲームは海外でのプレイ人口も少なく、海外のeスポーツの格付けでも『レインボーシックス シージ』は“Tier1”タイトルですが、対戦格闘ゲームの各タイトルは軒並み“Tier3”のカテゴリー。この違いは、大会の数や賞金額の高さ、Twitchなど動画配信の視聴数によって決定されるわけですが、Tier1とTier3だとまったく違います。

おそらく、日本メディアもそういった状況に気づきはじめて、1~2年しないうちに流行は変わってくるのではないでしょうか。そういう観点からも、野良連合はTier1タイトルを中心に行っています。まあ、世界しか見ていない感じですね。

――野良連合を含め、日本チームの実力は世界でどの位置にいるのでしょうか。

貴族:野良連合は発足時の2016年から『レインボーシックス シージ』で日本代表として活動しており、それ以降ずっと代表です。ただ、年々代表になるのが辛くなってきていますね。今年はギリギリだったんじゃないでしょうか。そういう意味では、日本は全体的にレベルが上がっていると思います。

世界との差はそんなにあると思っていません。2018年は『レインボーシックス シージ』の世界大会でベスト4になりましたが、これも2回め。目標は発足から5年以内、つまり来年までに優勝です。選手はどう思っているんですかね。

――とオーナーがおっしゃっていますが、選手の方々はどうお考えですか? まだまだ世界との差は大きいと感じるのか、それとも敵わない部分はあるものの同じラインの延長線上のちょっと先を行っている感じなのか。

Papilia選手(以下、Papilia):そうですね、『レインボーシックス シージ』は、単純にエイム(シューティングゲームで標準を合わせること)や操作の腕などの個人技だけでなく、戦術やチームでの動きも重要なゲームです。個々のスキルは海外と大きな差がないと感じていますが、戦術面に関してはまだ足りない部分がありますね。そこをクリアできれば優勝できると思います。

  • 今回、取材に対応してくれた野良連合の選手。左からPapilia選手、ReyCyil選手、Merieux選手

――先ほど日本で対戦格闘ゲームが流行っているという話がありましたが、その理由の1つに、日本人選手の活躍があると思います。『レインボーシックス シージ』に関しても、野良連合の活躍が日本での人気に大きく影響しそうですね。

Papilia:eスポーツタイトルは、新しいものが出てくると、一時的とはいえ、そちらに流れてしまうことがあるんです。

『レインボーシックス シージ』は、まる4年稼働していて、今年が5年目。その間にもいくつもの大型タイトルがリリースされ、『レインボーシックス シージ』の人口が減りそうなポイントはありましたが、野良連合がアジア大会で優勝したり、世界大会で活躍したりしたタイミングで『レインボーシックス シージ』のプレイ人口は伸びたと聞いています。なので、野良連合が活躍したことによって、日本の『レインボーシックス シージ』の人気が途絶えずに済んだのかなと思います。