ゲーミングハウスでの共同生活が野良連合を強くした

――2018年の“eスポーツ元年”を経て、チームにはどのような影響がありましたか?

貴族:スポンサーのオファーの数は増えましたね。以前は営業に行き、頭を下げてから話を聞いてもらっていましたが、最近は向こうから話を持ってきてくれるようになりました。

ただ、増えたのは増えたんですが、日本企業の場合だと9割くらいが「物品提供」の協賛オファー。ありがたいことではあるのですが、今は物品提供はお断りしています。

PCや周辺機器をご提供いただくことが多いのですが、選手には好きなデバイスを使ってもらいたいので、自分たちで購入しています。無料でも選手にしっくりこなければ、マイナスにしかなりません。選手やチームを健全に運営するには、やはり金銭的なご協力がありがたいです。もちろん、金銭面に関しても、以前より増えています。

――既存スポンサーからの提供資金額に変化はありましたか?

貴族:そうですね、ご提供いただく資金も増えました。まあ、僕らもスポンサーさんの商品はめちゃくちゃ売っていて、単純にユニフォームに企業ロゴを入れてるだけでもないので、スポンサーさんとしてもメリットは大きいと思います。

――スポンサー料が順調に増えているということですが、選手として満足のいく報酬はもらっていますか? さすがにオーナーの前では答えにくいですかね。

Papilia:言っても大丈夫ですか?

貴族:いいよ。

Papilia:僕は大卒なのですが、おそらく一般的な大卒の初任給よりは多くもらっていると思います。何より、この「ゲーミングハウス」に住んでいるのが大きいですね。家賃や光熱費、インターネットの通信費も自己負担する必要がないので、食費くらいしか使わないんです。月10万円ずつくらい貯金もできています。年間だと100万円超えますね。普通に会社員やっているより待遇面もいいんじゃないでしょうか。

  • 野良連合が暮らす「ゲーミングハウス」

――ちょうどゲーミングハウスの話題が出たので、その話をさせていただきたいのですが、チームで共同生活するメリットとデメリットはありますか。

貴族:オーナー目線で言うと、チームが仲良くなれることですね。それによって成績も上がってきています。

ゲームをプレイした後には必ず反省会を行うんですが、一緒に住んでいると顔を合わせながら行うことができます。オンラインで反省会をすると、顔が見えないので、個々の選手がちゃんと反省会に向き合っているかわからないんですよね。もしかしたら、スマホをいじりながら参加しているかもしれないわけです。やはり直接話すと、反省会の濃さがまったく違います。

デメリットは、ケンカしたあとが面倒だなって思うくらいですね。とはいえ、ほとんどケンカしませんが。あ、チームとしては費用がかかります(笑)。ゲーミングハウスを使っているほかのチームは、家賃や光熱費、通信費を選手負担にしているケースが多いのではないでしょうか。おそらく、ゲーミングハウスの家賃などをチームで負担しているのは、日本では野良連合くらいだと思います。

――選手の方々はいかがですか。たとえば、共有スペースの片付けや掃除についてなど。

Papilia:掃除は最初業者が入っていたのですが、コストがかかるので、今は止めています。業者が来なくなってからは、自分たちで気がついたときに掃除をしている程度ですね。

特に当番などは決めてません。使用した人が片付けることも多く、自発的に行っています。メンバーのなかにはシェアハウスを経験した人もいますので、結構うまくいってますね。

貴族:めちゃくちゃ汚く使う人もいて、すごく汚かった時期もあったんですけどね。

Papilia:このゲーミングハウスでは、共有スペースのほかに、個室も割り当てられています。寝室とゲーム部屋の2つ。個室に関しては不干渉なので、シェアハウスといってもかなり自由があります。何時に起きて、何時に寝るというのも個人の裁量。ルールとしては、毎晩21時からスクリム(練習試合)を行うので、そこまでに揃っていれば問題ありません。そこだけは厳守ですね。だいたい夜中の1時くらいまで練習して、反省会をします。そのあと個人練習をするのか、寝るのか、何かほかのことをするのかも、選手それぞれですね。

あと、ゲーミングハウスのメリットとして、メンバーが寝坊しても、誰かが起こしてくれることが挙げられます。寝過ごして大会に遅れてしまうといった失敗がないのがいいですね。

貴族:電話で起こそうにも、電話くらいじゃ起きない人も多いので、直接起こせるのはいいことです。