2015年10月にダイソン初のロボット掃除機として発売された「Dyson 360 Eye」。それからおよそ3年半のときを経て、2019年春、後継モデルが登場しました。その名は「Dyson 360 Heurist」。進化と実力を、自宅でチェックしました。

  • Dyson 360 Heurist

    ダイソン2代目のロボット掃除機として、3月19日に発売された「Dyson 360 Eye」。直販価格は118,800円(税込)

吸引力は最強!

ダイソンの掃除機といえば、"吸引力"。Dyson 360 Heuristにおいても、毎分7万8,000回転する高速モーター「デジタルモーター V2」により、強力にゴミを吸い取る能力を備えています。ダイソンによると、吸引力は一般的なロボット掃除機のおよそ4倍(数値上)とのこと。

吸引力の高さは、前モデルDyson 360 Eyeでも十分に証明されており、ほかのロボット掃除機では吸い残してしまうような床の溝に溜まったゴミや、カーペットの隙間のゴミまでしっかり吸い取っていました。ダイソンのロボット掃除機の吸引力については、今さら言及する必要はなし。ほかのメディアでも検証されていることなので、今回のレビューではあえて取り上げません。

自走能力をチェック

ユーザーとして、むしろ気になるのは"自走能力"です。ロボット掃除機において、自走能力は吸引力よりも重要な要素。いくら吸引力が高くても、ゴミのある場所にたどり着くことができなければ、吸引力は宝の持ち腐れになってしまいます。

とはいえ、ロボット掃除機が部屋をくまなく掃除できるかどうかは、部屋の間取りや環境そのものに大きく左右されます。筆者はこれまで、いろんなロボット掃除機を試してきましたが、それぞれに得手不得手はあり、一概に善し悪しを判断することはできません。ロボット掃除機において、大切なのは環境との相性。あくまで筆者の自宅環境において試した考察にすぎませんが、Dyson 360 Heuristを使って気付いたポイントを挙げていきます。

白状すると、前モデルDyson 360 Eyeは、筆者宅との相性が今ひとつでした(発売当初の2015年の話。Dyson 360 EyeはWi-Fiに対応するので、ファームウェアアップデートによって解消されている可能性はあります)。

前モデルDyson 360 Eyeが特に苦手としていたのは、袋小路になったキッチンのお掃除。筆者宅はいわゆるLDKタイプで、リビングとダイニングがひと続きになった間取りですが、置いてある家具に遮られ、キッチンの床面には窓の光が届きません。日中の明るい時間帯であっても、キッチンの電気が点灯している状態でないと、Dyson 360 Eyeは空間を認識できていない様子で、キッチンには足を踏み入れてくれませんでした。キッチンの照明をつければ済むのですが、留守中まで明かりをつけっぱなしにしておくというのは、電力の浪費な気がして本意ではありませんでした。

新モデルのDyson 360 Heuristは、本体天面にあるカメラレンズの周りに8個のLEDライトを装備しています。照度が足りないエリアでは、LEDライトを必要なぶんだけ点灯するのです。実際に動作させてみたところ、前モデルでは絶対に入り込んでいかなかったキッチンでもライトを点灯し、自ら周囲を照らしながら動き回る賢さに感心しました。廊下など暗い場所ではライトを発光させて走行し、前モデルの弱点が見事に克服されていました。

  • Dyson 360 Heurist

    真ん中オレンジ色の丸い部分が「パノラマレンズ」。パノラマレンズの周囲に8個のLEDライトを備えています

  • Dyson 360 Heurist

    前モデルDyson 360 Eyeのときは、電気がついていないと進入しなかった筆者宅のキッチン。Dyson 360 Heuristは、カメラ周りのLEDが点灯し、周囲を照らしながら走行します

ダイソンのロボット掃除機は、位置情報を認識・把握するためのシステム「SLAM」を搭載しています。360度全方位を捉える天面のパノラマレンズにより周囲を視認し、その情報をSLAMで処理する仕組みは、新モデルDyson 360 Heuristでも引き継がれています。パノラマレンズは、より多くの光を取り込めるような形状となりました。

障害物のギリギリまで接近する

本体前方の両サイドには、「長距離センサー」「障害物センサー」「壁面接近センサー」「段差センサー」という4つの赤外線センサーを搭載。走行中は、これらのセンサーによって0.02秒ごとに距離測定を行うことで、位置情報の精度を高め、家具などへの衝突も回避するとのこと。Dyson 360 Heuristを我が家ではじめて作動させてみたとき、「すごく賢くなってる!」と感心しました。暗所に立ち入れない問題を解消しただけでなく、壁や家具などの障害物に対して、前モデルよりも近くまで接近できるようになっていました。

  • Dyson 360 Heurist

    ゴミを溜めるクリアビンの両側にある黒い部分に、4つのセンサーが搭載されています

前モデルDyson 360 Eyeは、障害物のギリギリまで寄らず、少し手前で折り返す印象がありました。衝突が少ない点は大いにメリットと思っていましたが、隅々までゴミを取り切れていない物足りなさがあり、きめ細やかな掃除を望むユーザーには不満に思える弱点でした。しかしDyson 360 Heuristでは、いい意味での"きわどさ"が向上しています。

アプリで部屋ごとに掃除モードを切り替え

ダイソンによると、Dyson 360 Heuristは、ロボット掃除機の頭脳を左右するメモリ容量も前モデルの32倍になっているとのこと。掃除しながら作成した部屋のマップで、より高度な機能を使えるようになりました。具体的には、スマホアプリ上でマップのエリアを区切り、それぞれ運転モードを個別に割り当てることが可能です。

  • Dyson 360 Heurist

    スマホアプリ「Dyson Link」の登録画面。アプリはダイソンのロボット掃除機と空気清浄ファンで共通です

  • Dyson 360 Heurist

    マップを作成するためには、事前にマップ作成モードでの走行運転が必要

  • Dyson 360 Heurist

    作成されたマップで、エリアを区切る設定画面

  • Dyson 360 Heurist

    区切りたい位置を画面上でタップしていきます

  • Dyson 360 Heurist

    区切ったエリアにそれぞれ名前をつけていきます

実はDyson 360 Heuristをはじめて動かしたとき、思わず「うるさっ!」と声を上げてしまいました。吸引力が強ければ、そのぶんモーター・動作音が大きくなってしまうのは仕方のないこと。Dyson 360 Heuristも例外ではありません。この音に慣れていない人は、驚いて思わず振り返ってしまうレベルだと思います。前モデルDyson 360 Eyeでは、動作音を解消するために、ファームウェアアップデートでモーターの回転数を抑えて動作音を控えめに運転できる「静音モード」を用意し、アプリ上で設定できるようになっていました。

Dyson 360 Heuristでは、ハードウェア面の強化によって、エリアごとに区切って「通常」「静音」「強」の3モードから、運転モードを個別に設定できるように進化したのです。

この進化は、場所に応じて運転音を抑えるためのほか、Dyson 360 Heuristでもう1つの弱点をカバーするためでも。これは使い続けて気がつきました。

  • Dyson 360 Heurist

    エリアごとの運転モード設定画面。掃除にかかるおよその時間と、必要な充電回数も表示されます

もう1つの弱点とは、稼働時間です。Dyson 360 Heuristの連続運転時間は、静音モードで最大約75分、強モードで20分~30分。メリットである吸引力を生かせる強モードで最初から最後まで運転した場合、どうしても運転時間が少し短くなってしまいます。筆者宅でも、10畳以上の部屋や、複数の部屋をまたがって掃除させたいとき、標準・強モードで運転すると、1回の充電ではだいたい終わりませんでした。

掃除途中でバッテリーが切れると、充電ドックに戻って充電したあと、中断した場所から掃除を再開する「自動充電」機能を備えているので、致命的な問題ではありませんが、バッテリー残量ゼロから満充電までには約2時間45分かかるため、掃除を終えるのに時間がかかってしまうのも事実です。そこで、場所によっては吸引力を抑えて運転し、無駄なバッテリー消費を防ぐ意味でも、エリアごとに運転モードを設定できる機能は、非常に有効かつ有用と感じました。