Appleは米国時間の3月25日に開催されたスペシャルイベントにおいて、今夏より米国で、クレジット決済サービス「Apple Card」を提供することを発表した。
Apple CardはiOSの「Wallet」アプリに組み込まれる形で提供される。利用可能な店舗はApple Payが使える世界中の店舗やウェブサービスで、iPhone上から申し込めば即日利用可能になる。
カード番号などはiPhone上のセキュリティチップに暗号化して保存され、Touch IDやFace IDを利用しないと読み出せない。また、物理カードにはカード番号や利用期限、署名などが記載されていないため、第三者から情報を盗まれる恐れがないなど、Apple Payと同様の高度なセキュリティが導入されている。
利用履歴はApple Map上に利用した店舗がプロットされ、自動的にカテゴリー分けされる。利用額は週毎、月毎にグラフとして表示できる。サポートもiMessageを通じて受けられるなど、iOS上の機能やアプリと密接に連携している。
カードの利用額に対する還元制度としては「Daily Cash」を用意。これは通常の利用であれば利用額の2%、Apple直営店やApple Store、iTunes Storeの場合は3%、物理カードの場合は1%がキャッシュバックとして提供される。換金率が見えにくいポイントなどを介さず、シンプルに直接現金で返還される点はわかりやすい。またApple MusicやiCloudといったAppleのサブスクリプションサービスでも3%の還元が発生するため、これらの利用者にとっては実質的な値下げとも言える。
また、日本ではあまり一般的ではないが、米国ではクレジットカードの海外利用や一時的な上限額アップなど、さまざまな機会で手数料がかかる。Apple Cardは業界一の低金利を目標としており、こうした手数料がキャッシングや決済遅延時を除いて発生しない。
これらApple Cardに盛り込まれた数々の新しい機能を実現するため、Appleは発行金融機関としてゴールドマン・サックスと提携したという。またプライバシーの面では、AppleおよびMastercard、ゴールドマン・サックスは利用店舗や利用額といった情報を取得できない契約になっているという。
キャッシュレス時代の決済サービスの標準を巡っては、各社から様々なサービスが登場しているが、Apple CardとApple Payは使い勝手やわかりやすさの面で、既存のクレジットカードや競合のペイメントサービスを上回る水準を実現している。提携金融機関や信用情報の問題もあり、米国以外で利用できるようになるのはしばらく先になりそうだが、Appleらしいスマートな使い勝手は大きな武器となるだろう。