今や月間100万PVを突破しているアマノ食堂だが、開設から約2年間は数字が伸び悩んだ。中村氏は3つの要因があったと振り返る。

1つめは、集客目的の広告出稿を行っておらず、検索やSNSからの流入がない限り、記事が世に知られることがなかったため。

2つめは、競合他社に勝ち目のない記事を作っていたこと。「食品メーカーだから」という理由で、凝ったレシピを掲載していたものの、それが跳ねなかったのだ。良いと思って続けてきたが、結果に結びつかない時期が続く中、中村氏は冷静に考えた。

「当時、おしゃれなレシピを掲載していたんです。料理も見た目に素敵な、コンテンツを作っていました。でも、既に影響力のある巨大レシピサイトがひしめく中、誰がこのレシピを検索してやってくるんだろう? と」(中村氏)

世の中が素敵生活礼賛とは逆行しているときに、おしゃれなレシピを出しても見てもらえないと判断。料理スキルがほぼない人でも、簡単・時短で作れるレシピを出そう、と方向性を変えました。今アマノ食堂で出しているレシピは社会人1年目で、ひとり暮らしを始めたばかり、といった人を想定したものです」(中村氏)

3つめは単純に記事本数が少なかったこと。開設当初から1カ月の記事制作本数は10~15本を保っている。1年で200本の記事が溜まり、記事数が400本ほどになったのが2017年で、並行して行っていたSEO対策が実を結んだのが2018年だったというわけだ。

リアルとWeb、顧客をつなぐハブを目指すメディアに

今後、アマノ食堂が目指すのは、アマノフーズのリアルとWeb、顧客とをつなぐハブ的な存在になることだという。アマノフーズにはアンテナショップ「アマノ フリーズドライステーション」をはじめ、商品が置かれたスーパーなどのリアル店舗に公式通販サイトもある。

昨年11月、アマノ食堂公式ツイッターで実施したキャンペーンは、まさにリアルとWeb、顧客をつなぐ取り組みだった。

内容は、「アマノ食堂内の企画から生まれた新商品「とんかつカレー」発売前日に、アマノ フリーズドライステーション東京店で、投稿をリツイートしたスマホ画面を見せた先着50名に商品をプレゼントするというもの」

これには約230件ものリツイートがあり、商品はもちろん、アンテナショップの存在も広く知ってもらえた、と中村氏。オウンドメディアとしてひとつの素晴らしい形を作ったアマノ食堂が、今度どんな新しい仕掛けで魅せてくれるのか楽しみだ。