モバイルノートPCの仕様は「トレードオフの産物」といいます。あちらを立てればこちらが立たず、という関係が多くの項目で成り立ってしまい、そのバランス調整にとても苦労するのがモバイルノートPCの設計です。

ディスプレイサイズと本体サイズ、本体重量も「ディスプレイを大きくすると本体が大きくなってそれにつれて本体も重くなる」というトレードオフの関係にあります。しかし、17Z990は「あちらを立ててこちらも立てる」と両立してしまいました。

同様に、バッテリー駆動時間と本体重量にも「バッテリー駆動時間が長くなると(バッテリーサイズが大きくなって)本体が重くなる」とトレードオフ関係があります。

LG gramのラインアップでは搭載するリチウムイオンバッテリーで導電助剤にカーボンナノチューブを導入して高容量化を実現しています。バッテリー容量は72Whで、メーカー公称値でバッテリー駆動時間は最大約22時間としています(JEITA 2.0)。

今回の評価作業でも、BBench 1.0.1と用いてバッテリー駆動時間を測定してみました。測定条件として、電源プランをパフォーマンス優先のバランスとし、ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル目に合わせた場合、BBench 1.0.1のスコアは15時間7分50秒でした。

これは、以前レビュー記事を掲載したdynabook Gシリーズの11時間55分44秒、VAIO SX14の4時間30分17秒と比べてとんでもない長さといえるでしょう、いや実際、BBench 1.0.1の測定には大分苦労させられました。なお、30分充電で24%まで回復できました。

本体の重さがそれぞれ800g台に1kgちょっとと差があるのは確かですが、その分、17Z990は解像度が2,560×1,600ドットの17型ディスプレイという電力食いを載せているので電力消費の条件としてはイーブンといえるでしょう。それでいて、15時間以上バッテリーで駆動するのですからとんでもない話です。

なお、17Z990のディスプレイ輝度は明るめに設定されているらしく、最低輝度に設定しても視認性は悪くありません。それゆえ、最低輝度で使用してバッテリー駆動時間をさらに伸ばすことも可能です。ただし、ディスプレイは光沢パネル仕様なので、輝度を落とすことで周りの“景色”が写り込むことには注意が必要です。

  • 本体搭載インタフェースとしては右側面にType-A USB 3.0、HDMI出力、USB 3.1 Type-Cを備える

  • 左側面にはmicroSDスロットにヘッドフォン端子、2基のType-A USB 3.0を搭載する

  • ディスプレイの最大開度は実測で約128度

持ち運びにはちょっと注意

LG gramシリーズの17Z990ということで、先ほども述べたようにボディは17.5㎜と薄くなっています。通常よりもコンパクトとはいえ、フットプリントは380.6×265.7㎜あるのですから、どうしてもボディの堅牢性が気になるところです。

LGではLG gramの訴求ポイントとして「MIL-STD 810G準拠の試験項目をクリア」した堅牢性も挙げています。米国防総省の調達基準として知る人が多いMIL-STD 810Gですが、PCメーカーがその準拠を訴求するとき、多くの場合で「MIL-STD 810Gで規定しているテスト項目の一部」の試験をクリアしていることに注意が必要です。

LGではMIL-STD 810Gの中でLGgramシリーズがクリアした試験項目を公開しています(そういう意味では良心的)。その中には高温低温ショックテストや防じんテスト、そして、塩水噴霧テストという他のノートPCではあまりやらない項目も含まれています。

ただ、モバイルノートPCの使い勝手に影響する落下テストでは箱詰めした梱包時落下テストを実施しているのみで、堅牢性を訴求する他のノートPCが実施している「高さ76センチからの26方向動作時落下テスト」は実施していません。 また、「薄く広い」ボディで気になる天板、または、底面からの荷重テストも実施していません。

ボディパネルに高耐久を持たせたAZ91Dグレードのアルミマグネシウム合金を使用していますが、視覚的に不安になる「薄い板のようなボディの一部に強い力がかかった状態」における堅牢性は数値としては情報がないため、実際の扱いでは注意をする必要があるでしょう。実際、評価作業中では「17Z990を入れたかばんを膝に置いた状態で頬杖をつかない」ように気をつけました。

いま触れた「17Z990を入れるかばん」ではサイズ面で苦労します。PC用かばんとして販売している製品は、多くの場合、15.6型ノートPCを想定しています。LGは17Z990も「弊社15.6型ノートPCとほぼ同じサイズ」といいますが、実際、15.6型ノートPC用かばんには収まりませんでした。

そのため、ノートPCの持ち運びを想定していない、大きめなリュックやバックに入れることになりますが、緩衝材がなかったり、あっても緩衝材で覆った仕切りの中には入らなかったりと、衝撃から17Z990を守るという観点からすると不安がある状態です。

また、街歩きの途中で休憩するカフェでも一部コンパクトな丸テーブル席では17Z990とコーヒーカップの共存は厳しい場合もあったことを言い添えておきましょう。

  • 著名カフェのテーブルに置いてみる。さすがにカップとの共存が難しい場合もあった